第15話「魔法の訓練」
「次は、あちらの的に向かって魔法を撃ってみましょう」
ガーネットが指さした先には、木製の的が並んでいた。
「的に当てるの?」
「はい。魔法を制御するには、狙った場所へ正確に撃ち出す練習も必要です」
なるほど。ただ魔法を出すだけじゃなくて、狙ったところに当てることも大事なんだね。
私は的に向き直り、杖を構えた。
「えっと……」
魔力を集めて、火の玉を作る。
今度はさっきの失敗を思い出し、余分な魔力を集めないように気をつけた。
小さな火の玉が、杖の先に生まれる。
「よし……!」
私は的を見つめ、火の玉を撃ち出した。
ヒュンッ!
火の玉はまっすぐ飛んでいき……。
的の横を通り過ぎた。
「あっ!」
火の玉はそのまま地面にぶつかり、小さな爆発を起こした。
「……惜しかったですね」
「うぅ……。当たらなかった……」
思わずうなだれる。
「マナ様、魔法を撃ち出す際、的から目を離しておりませんでしたか?」
「え?」
「魔法を撃つ直前、杖の先をご覧になっていたように見えました」
そう言われて、私はさっきのことを思い返した。
たしかに、火の玉がちゃんとできているか気になって、杖の先を見ていた気がする。
「魔法を撃ち出すまでは、的をしっかりと見てください。狙いを定め、魔力の流れを整え、そのまま撃ち出すのです」
「わかった!」
私はもう一度、的に向き直った。
今度は、的から目を離さない。
魔力を集め、小さな火の玉を作る。
そして、狙いを定めて……。
「フレイムボール!」
火の玉が飛んでいった。
パシッ!
火の玉は的の端に当たり、小さな焦げ跡を残した。
「当たった!」
「おお〜!」
ノゾムが嬉しそうに手を叩いた。
「おめでとうございます、マナ様」
ガーネットも静かに拍手してくれた。
やったぁ!
初めて、狙った場所に当たった!
……端っこだけど。
「でも、まだまだだね」
「はい。ですが、最初から完璧にできる方はそうおりません。繰り返し練習すれば、精度も上がっていくでしょう」
「うん!」
私は再び杖を構えた。
今度は、もっと真ん中を狙ってみよう。
そう思って魔力を集めた、そのときだった。
「……あれ?」
杖の先に集まっていた魔力が、急に大きくなり始めた。
小さな火の玉が、見る見るうちに膨らんでいく。
「マナ様、魔力を抑えてください!」
「えっ!? えっと、どうやって!?」
「集めるのを止め、魔力の流れを整えるのです!」
私は慌てて魔力を抑えようとした。
けれど、思うようにいかない。
火の玉はさらに膨らみ、周囲の空気まで熱くなっていく。
「わわわっ! 大きくなりすぎだよ!」
「マナ様、落ち着いてください!」
ガーネットが私の横に立ち、杖の先に手をかざした。
すると、膨らんでいた火の玉が少しずつ小さくなっていった。
やがて、火の玉は消え、周囲に静けさが戻った。
「……ふぅ」
私はその場にへたり込みそうになった。
危なかった……。
「ごめんなさい、ガーネット……」
「いえ、問題ございません。ですが、マナ様の魔力量は想像以上に大きいようですね」
「そうなの?」
「はい。少し魔力を集めただけでも、通常の魔族より大きな魔法になりかけておりました」
へぇ……。
つまり、私は魔力が多すぎるってこと?
そういえば世界樹さんが、尽きることのない魔力をくれるって言ってたっけ。
強い魔法を使えるのは嬉しいけど、制御できなかったら危ないよね。
「私、ちゃんと使えるようになるかな……」
思わず不安を口にすると、ガーネットは私の目を見て答えた。
「もちろんでございます。魔力が多いことは、決して悪いことではありません。必要なのは、それを扱う技術です」
「技術……」
「はい。マナ様はすでに魔法を使うことができます。あとは、ご自身の魔力を知り、制御する方法を身につければよいのです」
ガーネットの言葉に、私は少しだけ安心した。
そっか。最初からうまくできなくても、練習すればいいんだ。
「ありがとう、ガーネット!」
「もったいないお言葉です」
私は立ち上がり、再び的に向き直った。
まだまだ練習しなきゃいけないことはたくさんある。
でも、少しずつできることが増えていくのは楽しい。
いつか、自分の魔法を自由に扱えるようになりたい。
そして、魔族のみんなを守れるようになりたい。
「よし! もう一回!」
私は杖を構えた。
魔王になるための道は、まだ始まったばかりだ。




