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どんな時でもお金には困りません! ~聖魔巡行編~  作者: 遠野月
聖魔のはじまり

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3/6

工房


雪道を馬車で駆けて行く。

魔女と呼ばれるライラの馬車を遮るものは、いない。

皆一様に、畏怖を瞳に宿し、こちらを見ている。

疎まれていないだけ、良しとするべきだが。



「俺は慣れたがよ。小心者のお前は、まだ慣れねえらしいな」


「変なものを見るような目をされたら、誰だって嫌でしょう?」


「もっと図太く生きりゃあいいと思うがな」


「私、ブラムみたいに単純じゃないんです」


「るせえ……っと、お、着いたみたいだぜ」



ブラムが馬車の窓から外を指差す。

そこには、大きな工房があった。

とはいえ、活気があるようではない。

工房周辺に積もった雪は除けられておらず、いくつかの足跡だけが寂しく残っている。



「……本当に、ここ?」


「らしいな。ふたりでやってるらしいぜ」


「こんな大きな工房なのに??」


「そんな細けえこたあ知らねえよ。景気が悪いんだろ」



ブラムが首を横に振る。

ライラは怪訝な表情のまま、馬車を下りた。


訪ねた工房内は、外と同様に、寂れた空気を漂わせていた。

違いがあるとすれば、外気よりやや暖かいことくらいか。

「お邪魔します」と声をかけても、返事はない。

いよいよ不景気で潰れてしまったのではないかと、ライラはブラムを見る。



「いや、奥に誰かいるな」



ブラムの指が向く先。

人の気配が、たしかに揺れ動いた。

足を進めると、徐々に室温が高くなっていく。

やがて、上着をすべて脱ぎたくなるほどの熱気が、ライラたちを包んだ。



「あ、暑い……なにこれ」


「さあな。作ってる暖炉を片っ端から試してるんじゃねえか?」



辿り着いた奥の部屋で、ブラムが汗を拭いながら言う。

その声に、工房にいたひとりの男が気付いた。

ブラムの顔を見るや、ぱっと表情を明るくさせる。



「やあ、魔女さまのとこの旦那じゃないか」



工房の男が手を振りながら言う。

ブラムが眉根を寄せ、工房の男の額を小突いた。

どうやらふたりは、知り合い以上の関係らしい。



「紛らわしい言い方するんじゃねえ、ベッダ」


「はは、まあ、いいじゃないか。こんな可愛らしい魔女さまなんだ。悪い気はしないだろ?」


「こいつあ、外見だけだ。中身はバ――」


「――余計なこと言ったら、抉りますよ」



ライラはブラムのわき腹を抓り、捻った。

もだえ苦しむブラムが悲鳴をあげる。

その様子を見て、ベッダと呼ばれた工房の男が愉快そうに笑った。



工房には、ベッダの他にもうひとり、リザリオという小太りの男がいた。

ブラムが言うには、陶器の暖炉はリザリオが考案したのだという。

その試作品が、工房内に溢れかえっていた。

そのうちの五つに火が入っていて、工房内を熱していた。

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