第2-28話 追い討ち
~極楽にて~
坂縞雷火「才原清一、花城如音はどうした?」
才原清一、桝田結城、伊敷季毎伽の三名はかつての幸奪戦争の勝利者、坂縞雷火のもとを尋ねた。坂縞雷火は以前才原清一に対して助言した「花城如音に会いに行け。」これを実行できたのかを尋ねた。その質問を才原は質問で返す。
才原清一「花城如音に会わせてあんたは何がしたかった?」
坂縞雷火はベッドに横たわりながら細い声で淡々と答えた。
坂縞雷火「彼にしか、止められないからだ。」
伊敷季毎伽「どういうことですか?」
伊敷季が特段坂縞の言葉に対して反応を示しており、彼女に対して少なからずの敬意をなぜか抱いていた。
坂縞雷火「伊敷季くんか、、久しいね…」
伊敷季毎伽「坂縞さん、今のはどういう…」
坂縞雷火「この極楽には、悪魔が潜んでいるみたいだね。」
なけなしの力を振り絞って必死に話していることが伝わる。伊敷季は坂縞の言葉を邪魔しない程度に小さく頷き彼女の言葉の続きを求める。
坂縞雷火「そして花城如音が脱走した。それも間違いないね?」
これを小さく頷く。
伊敷季毎伽(いや、まてよ…?)
その直後に伊敷季は現状に対する異変に気づく。そしてそれは坂縞が伊敷季に最も訴えたかったことだった。
伊敷季毎伽「そういえば、、何でこのことが問題になっていないんだ?」
桝田結城「問題になっていない?」
伊敷季は慌てて他の管理者と連絡を取ろうとする。しかし、誰一人として繋がらない。その事実を確認したのちに伊敷季は桝田や才原にもわかるように説明し始めた。
伊敷季毎伽「結論から言う。まず、俺たち以外の管理者は全員行方不明となり、極楽の秩序はほぼ完全に乱れ始めている。」
その言葉に才原も桝田も固まり、困惑と焦りが生じる。
才原清一「どうしてそう思う?」
無理やり言葉を引っ張り出して尋ねた。信じたくなかったからだ。二人も薄々感じていて心当たりがあったのだ。三人がこの坂縞雷火のもとへ向か際に誰一人として管理者に遭遇しなかった。桝田小春という極楽の重要決定者を失格にさせたのにも関わらず。この奇妙な現象を伊敷季の言葉に二人は思いだしながらも何かこれからの伊敷季の説明に穴があればとわずかな期待を抱かずにはいられなかった。
伊敷季毎伽「お前らも気づいているだろ。ここに来る際、誰一人として管理者に会わなかったこと。桝田小春を地獄送りにしておいて、俺たちを自由に歩き回らせることを管理者が許すわけがない。事実、俺もそれを覚悟して花城を脱走させた。」
桝田結城「でしたら、彼らは一体どこに?」その質問には坂縞がか細い声で答えた。
坂縞雷火「オーナーという男を知らないか?」
才原清一「オーナー?」
伊敷季毎伽「俺が全く歯が立たなかった相手と思っておけばいい。そいつは極楽から地獄に追放された男で二人の仲間がいる。花城でさえやつを倒し損ねて行方不明となったものたちだ。くっそ、、そいつらか。」
伊敷季の愚痴を交えたオーナーという男の説明に才原はある程度の理解を得る。
才原清一「要するに、そのオーナーたちが今極楽や地獄で暴れているってことか?」
伊敷季毎伽「あぁ、そして多分他の管理者はその対応に追われているか、地獄にいる桝田小春の救助に向かっているんだと思う。」
桝田結城「なら、今の極楽は…」
桝田の気づきに補足するように伊敷季がその続きを答える。
伊敷季毎伽「管理するものがいない。もし、他の管理者がオーナーたちの対応でいっぱいなときに桝田小春が潜ませている悪魔を放りさったらそれを対処できるのは俺たちしかいない。」
その伊敷季の言葉に才原は坂縞雷火の先ほどの発言を思い出しながら彼女に尋ねた。
才原清一「お前は気づいていたのか?」
坂縞雷火と才原清一が初めて合った際に彼女は花城如音に会いに行けといった。今の伊敷季の説明や彼女の様子からするに坂縞雷火はそのときには既にこうなることを予想していたのではないかという疑問が生まれる。坂縞雷火は顔を才原の方へ向け、答える。
坂縞雷火「榎宮優に、、教えられたんだ。」
伊敷季毎伽「彼がここに…?」
坂縞雷火「花城と君にしか、止められないと言っていた。」
山禰一美「雷火さん、少しおしゃべりが過ぎるんじゃなぁい?」
ずっと部屋の隅で監視していた管理者の山禰が口を挟む。
伊敷季毎伽「教えられるとそんなに困るものなのか?」
山禰一美「私は別にどっちが勝ってもいいんだよぉ。でもね、、どうせなら派手なことしてくれる方を応援したいのぉ。」
坂縞雷火「どうやらこれ以上は話せないらしいね。」
そういってこの会議は切り上げられる。これ以上の情報は得られないと判断した三人はアパートをあとにし、オーナーやその仲間、他の管理者がいる場所を考え始めた。
伊敷季毎伽「葛西ですら連絡がつかない。管理者センターに誰か一人くらいはいるか?」
独り言の願望に近いその言葉に二人は無言で従い、行き先を管理者の職場である管理者センターへとする。伊敷季が目的地を管理者センターにしたのは誰が敵であるのか調べる必要があるからだ。管理者センターにはもちろん、管理者の生体認証がなければ作動しない。もし仮に他の管理者がオーナーたちの対応に追われているなら、管理者センターには誰もいないはず。しかし、もし一人でも管理者がいれば?そこにオーナーたちがいれば?管理者の誰かがセンターへ入れるようにしたということになる。そんなことが起きていない、誰も裏切っていないことを確かめるためにも伊敷季は管理者センターへどうしても行きたかったのだ。
やがて管理者センターへ到着し、伊敷季は扉の生体認証、10桁にもわたる暗証番号、迷路のように無数に分かれている通り道の三つのセキリィティをいつものようにクリアし、管理者センターの本拠地へ到着する。そこには資料室や会議室、修練室やなどの部屋やカフェテリア、管理者各個人の部屋も用意されており、そこで寝泊まりすることも可能となっている。伊敷季は他の管理者個人の部屋を捜索し始める。
伊敷季毎伽「お前ら二人は他の部屋を探してみてくれ。ただし、二人が分かれて行動することは許さない。」
才原清一を自由に動かせないよう桝田に釘を刺してから伊敷季は部屋の捜索を行った。
才原清一「資料室とかでもいってみるか?」
桝田結城「まぁ、どこからやっても一緒だろうしな。いいだろう。」
二人は資料室へ入室する。そこは極楽で行われた事件や幸奪戦争に関わる情報が無数に記された情報の山の部屋だ。
桝田結城「俺の視界から離れたとこには絶対行くな。そのときは伊敷季さんを呼んで消してもらう。」
才原清一「好きにしろ。」
そうして才原は仕方なく桝田の近くにおり、部屋の辺りを捜索する。この部屋はさほど広くはなく、精々学校の教室二つ分といったところ。資料の棚で誰かを捉えるのは少し難しいが人の気配や影は容易に感じ取れる。資料室をまわりきって誰もいないことを確認し、戻ろうとしたときだった。車イスに座っている才原がある棚にある一つの資料に目をやる。
才原清一「第二次幸奪戦争…」
それについて記されている資料を見つけ才原はすぐさま手に取った。ページをめくり、参加者リストとかかれたページを開く。五十音順で並べられたおり、さ行の欄にはやはり、坂縞雷火の名前があった。そしてその一つ上、そこにも才原清一の知っている名前が記載されていた。
才原清一「うそ、、だ…」
才原祐一と記された資料を才原は絶句しながら見続けることしかできなかった。
才原清一「何で兄ちゃんが…」
その瞬間、車イスに座られていた才原清一の首が斬られた。
才原清一 失格
桝田結城(???)「悪いな。」
才原清一を消したのは他でもない。桝田結城という男だった。ただ違うのは消したものの意思が誰であったかということのみ。桝田結城の身体は資料室を出た。
伊敷季毎伽「何かが起きた痕跡もない。ひとまずは安心ってとこか?」
誰かが裏切ったという線は消え始め、わずかな安堵と安心を胸に抱いた伊敷季のもとに一人の男が入室してきた。
桝田結城(???)「どうですか?見つかりました?」
伊敷季毎伽「結城、才原清一はどうした?」
彼に答えはない。ただ無言で、沈黙を貫き、桝田は伊敷季毎伽を見続ける。それから数秒後、桝田は倒れた。
伊敷季毎伽「は?お、おい結城…」
倒れた桝田結城に駆け寄ろうとした瞬間、
榎宮優「ファースト」
背後からある男の声が響く。伊敷季はその声に気づき、自身の後ろから迫ってくる剣を回転蹴りで弾き飛ばし、その男に一喝する。
伊敷季毎伽「なんのつもりだ、榎宮優!!」
管理者ナンバー1の男であるものが裏切り者ものだったのだ。伊敷季は大声で叫び散らかしたのち、両手にサーベル型の剣を投影し、榎宮優との戦闘を開始した。
~地獄のある場所にて~
才原清一「なんで、なんでだよ…」
失格にされたことにすらどうでもいいと思えるほどのショックを与えられた才原はボソボソと答えがでない疑問を口にしながら辺りをさまよっていた。才原が絶望したのは自身の兄が幸奪戦争に参加しているという事実ではない。その背景にあるもの、そのあとに行われたもの、彼の行動に弟は絶望したのだ。
才原清一「俺は、、なんのためにここへ来たんだよ…」
自身が兄の敵討ちをとったがために地獄行きにされ兄の行方を追うために幸奪戦争へ参加し、極楽まで行ったというのに兄には未だ会えてない。それどころか判明したのは弟である自身が今までに気づかなかったある事実。才原清一が兄のために尽くした行動は全部無駄だったのだ。それに気がついた清一は何を血迷ったか、暴走し出した。
才原清一「うぁぁぁぁ!!!!」
壁を殴り、柱を折り、目に映るものすべてを傷つけるがごとく暴れ散らかした。辺りはなかなかの荒れようとなるが、その暴走の音を聞き付けたのか、大量の悪魔がいつの間にか才原清一を囲んでいた。極楽に来てからほとんど戦ってはおらず、武召喚数値は極楽で暴れないために1しか持ち合わせていない。更に絶望の追い討ちをかけられた才原清一は思わず一笑いし、その場から一歩も動かなかった。悪魔たちは才原のもとへ獣のごとく近づいて行く。肉を喰らい、身体を傷つけさせ、骨までへし折ろうとする。それを止めるものは誰もおらず、才原清一は自身の在り方に疑問と後悔を彷彿させながら、やがて誰の記憶にも残らないものとなった。
脱落
???「才原清一が地獄へ舞い降りるとは、極楽もかなり深刻な状態みたいですね。」
才原清一が悪魔に喰らい尽くされているところを離れたところで見物していた名もなき者はあるものに語りかけるように話していた。
???「ここを突き止めたことはさすがといっておきますが、一人で来るのはあまりにも愚かですよ。葛西水引さん。」
葛西水引「くっ、、」
葛西は鎖で身体を縛られており、身体の自由が全くない状態だった。それもこの悪魔たちを止めようとしたがゆえに。
葛西水引「なぜだ、、なぜ自我を持つ悪魔が存在している?」
葛西が対峙しているのは正真正銘悪魔だった。




