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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第二章 真相編
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第2-20話 契約

中嶋芽依(オーナー)「楽しませろよ?」

邪悪の笑みと期待を膨らませ、攻勢に出た。

相も変わらず攻撃速度は一瞬の短さでカイリの視覚を共有している榎宮愷、パートでは目で追うことすら至難の業だった。しかし、カイリは違った。一瞬にして殴りかかってくるオーナーの拳の動きを読み切り、即座にかわす。そしてかわすざまに右手に持っていた剣をオーナーの右腕に浅く斬り、オーナーの右腕からは少量の出血がされる。

中嶋芽依(オーナー)「ほぅ、じゃあ少しギアを上げるぞ。」

これがまだ三分の一にも満たない速度と力であるとカイリは本能的に理解した。そして半分ほどまで自身の力を引き出したオーナーの攻撃に全神経を研ぎ澄まし、改めて繰り出されるオーナーの右拳、それに連続するような形で出される左拳、さらにまた繰り出される右拳と左右交互に合計3セットのランダムなところに当てられる攻撃を全て回避しきる。

中嶋芽依(オーナー)「まぁ、及第点か。」カウンターをぶつけられなかったことに少し残念気味な様子ではあったが、素直に自身のすべての攻撃をかわしきったことに評価する。

中嶋芽依(オーナー)「じゃあ、もういいよ。」

この言葉と同時にこの部屋の時空が歪んだように錯覚させられるほどの何かの圧があった。そこに存在するだけで恐怖を抱くほどのオーラとでも呼ぶのだろうか、殺気とはまた違う、何かの気、この気にカイリも花城如音もましてやカイリのなかにいる二人の人格も異変を感じ取った。その異変を一瞬だけ感じたのち、気がつくとこの部屋にはある出来事が起こった後の状態だった。中嶋芽依は気絶した状態で倒れ、中嶋芽依の身体の乗っ取りを辞めたオーナーは少し興味と感心を帯びた目であるものを見下していた。

そのものは花城如音だった。カイリの正面に花城如音がたっていたらしく、なぜか片膝をつき吐血している。

オーナー「俺が20の数値を使って与えた攻撃、これは目無しのやつらのソイーブル、エスケープの種核醒を優に越える力だ。それを受けても尚、消滅もせず意識を保っているとは、さすがここに存在しているだけある。」

この場でオーナーが何をしたのか?それはオーナーは20の武召喚数値をグローブの強化に割り当て、その強化されたグローブを空殴りする。カイリに向かって放たれたその空気を殴った一撃はグローブに込められている数値の力の一端が漏れ出て、本来誰にも届くことのないダメージが致命傷となり得る一撃と成り果てる。漏れ出た数値の一端はカイリに向かって飛んでいく。これは本の一瞬の間に行われた瞬きする時間にも満たない僅かな間。オーナーの半分のやる気で回避するのに精一杯だったカイリはその攻撃の認知すら不可能。オーナーの一撃を浴びて消滅するはずだった。だがしかし、そのオーナーの攻撃を認知できるものはもう一人いた。それが花城如音であり、彼がどんな行動をとったのかは結果を見れば明らか。カイリを庇って浴びたその一撃は本来の20の数値には及ばなくてもその半分の力はある。それを浴びて彼も無事では済まない。血を吐き出し、片膝をつき、左手さえ地面につくその姿は死ぬかけ以外のなにものでもない。

カイリ「な、何で、かばったんだよ!」

花城如音「俺が、お前を、避けさせることは無理だったからな、、妥協案でこれになった、」

オーナー「素晴らしい。心から言わせてくれ。俺の本気の攻撃を耐えきるものは初めてだ。管理者のトップでいただけある。」

賞賛の拍手を送りながらゆっくりと花城如音の方へ歩みより、花城如音のもとに跪き、自身の右手を花城如音の傷口に当てた。

オーナー「ヒール」

彼がそう唱えた瞬間、オーナーが触れている花城如音の傷口の出血は止まり、ゆっくりと傷口が塞がっていく。花城如音の表情もまた痛みや苦悶に耐えるものからオーナーの行動に困惑する余裕が生まれるほどのものへと変わり始める。

花城如音「何の真似だ?」

オーナーの治癒を受けながら困惑している花城をよそにオーナーは当たり前かのように自信満々に答える。

オーナー「お前とは本気で、対等でやり合うべき存在だ。こんなとこで消すには惜しいどころか私の永遠の不覚となる。」

十数秒して花城如音のすべての傷は癒され、一撃を受ける前の状態と全く同じになる。

満足げにオーナーは立ち上がり、カイリの方へ目を向ける。

オーナー「今のお前はまぁ悪くない。今まで戦ってきたやつの中でいうなら伊敷季の次くらいにはマシだった。」

カイリ「…何がいいたいの?」

オーナー「褒美に追加でヒントをやるよ。」

ペットにおやつをあげるかのような完全にしたに見ている態度で嬉々として自身の手の内を晒そうとし始めた。



「榎宮愷(おい!パート!!)

一方その頃、榎宮愷は精神世界でボコボコに倒されたパートに話しかけていた。

パート(うっ、う、ぅぅ)

うめき声で返事をし、かすかな声量で何だ?と訪ねた。

榎宮愷(カイリって少年の姿をした人格のことだよな。)

パート(だから何だ?)

榎宮愷(推察するにカイリの子が保有している記憶って俺の幼少期の記憶が多いと考えている。もし、それが本当ならカイリの人格のときの力は俺の少年時代由来の力しかないんじゃないの?)

ここにいる三人の人格はその人格が保有している記憶によって身体能力が由来される。例えばパートはロストイーブンの種性で生まれ、地獄に来たときの記憶や現界での記憶など様々な時代からランダムに記憶を保有している。カイリは榎宮愷自身の意思で失った記憶の象徴らしく、その失った記憶は榎宮愷の少年時代のもの。その少年時代の記憶の象徴であるならば、身体能力や精神的な強さも子供並み。そのはずなのに三人の人格の中で少年のカイリが一番強かった。この事実に疑問を覚え、パートに問いただす。

パート(んなもん、俺が知るかよ。ただカイリは何度か身体の所有権を自分のものにしたことがある。そしてそのときのあいつは精神状態が不安定だ。)

パートが知らないのも無理はない。もともと彼はランダムな記憶の形成でしかなく、彼の性格や強さもまたそのランダムな記憶由来のもの。いわば、榎宮愷のほんの一部の存在。自らの意思で記憶を失った象徴のカイリとはまた別のものだからだ。榎宮愷もパートもカイリという存在について触れることはできない。この結論に至り、二人もオーナーが与えるヒントについて耳を傾けることにした。


オーナー「俺と手を組むことを持ちかけたのはあいつだ。神楽士郎の目的は俺も知らない。ただ参加者をできるだけ残しておきたい様子はみてとれた。」

花城如音「それおかしくないか?」

オーナー「うん?どこがだ?」

わざとらしくあえて尋ねる。挑発じみたその質問にわずかにイラついたが、花城はその質問に応じた。

花城如音「お前はこの八次に出た失格者のほぼ全てを抹消したと言っていた。神楽士郎の目的が参加者の存在に関係しているならお前のような殺人鬼と手を組むことに何のメリットもない。」

趣味が殺戮といわんばかりのオーナーが参加者の存在を目的としている神楽に何かしらのメリットを施せるとは思えない。故になぜ神楽がオーナーに協力を要請したのか不可解だった。そしてオーナーは答える。

オーナー「神楽が俺に依頼した内容は【邪魔者の始末だ。】」

カイリ「…どういうこと?」

オーナー「例えば花城如音。こいつの強さは桁外れの強さだ。こいつとまともに戦えるやつなんか片手で数える程度だろう。そんな強敵を好きに暴れさせるわけにはいかない。そう考えて俺に協力を仰いだんだ。」

参加者は残しておきたい。だが、目的の邪魔をするやつらは抹消しておきたい。そしてその邪魔者を倒せるのはオーナーくらいしかいない。だから仕方なく邪魔者の抹消を優先し、オーナーを自由に暴れさせている。理にかなってはいるので、花城如音もカイリもそれが嘘だとは疑わなかった。しかし必然的にある疑問が浮かび上がる。それを代弁してカイリがつぶやいた。

カイリ「それがヒント…?」

オーナー「もちろん違う。今のは前置きと言ったところか。ヒントはこれからだ。その前に…」

突如部屋の外の方へ目をやり、近くにあった壁に素手でヒビをいれた。ひび割れた壁からそのもともと壁だったものの一欠片を取り出し、部屋の外にぶつける。爆音が鳴り響く。欠片が衝突した場所にはオーナーが破壊した壁よりも大きなヒビが入る。

オーナー「そこで隠れているやつ出てこい。お前にも聞かせてやる。」

部屋の外に誰かが隠れて盗み聞きしていることに勘づき、隠れている男もオーナーという存在に恐怖し、従うことにした。少しして部屋の扉から一人の男が入室してきた。

花城如音「伍代…」

伍代翔地「お久しぶりですね、花城さん。お話を邪魔するつもりはなかったんですが。」

恐らくオーナーの話の途中に入ってきたのだらう。オーナーらしき人物がここにいる理由を自身の口で説明している様子をきいて困惑しながらも盗み聞きしていた。聞いていただけでなにもしていない、そう言いたげな顔で訴えたがオーナーは気に留めず、話を聞くよう促した。伍代とオーナーは腰を下ろし、オーナーが話を続ける。

オーナー「今から教えるのは俺の目的、神楽士郎との契約内容、そして今の状況だ。」

そうして人差し指を突きだし、1の形にしてから話を続ける。

オーナー「まずひとつめ、俺の目的だがこれは単純だ。【この冥界にいる間に】強いやつと戦いたい。そしてこの幸奪戦争をめちゃくちゃにしたい。」

冥界にいる間にという謎の単語に三人ともいささか疑問を覚えたが、尋ねる間も与えずすぐに二つ目へと話が移行された。

オーナー「次に二つ目、俺と神楽士郎との契約内容、これは種性核を利用した契りだからお互いに破ることのできない絶対順守のものだ。俺は暴れたい。でも俺が暴れると神楽士郎の計画に支障をきたす。だからそこで俺の行動に制限をかけたってわけだ。」

伍代翔地「制限…ですか?」

とても制限をかけられているようには見えず、思わず疑問が口に出た。その伍代の疑問に答えるようにオーナーは続ける。

オーナー「正確にいうと時間制限だな。俺が自由に行動できるのは八次の幸奪戦争が始まってから二日経過するまで。だから残り32時間は俺たちの好きなようにできる。その代わりにお前ら邪魔者の始末を命じられた。」

伍代翔地「僕たちの記憶を取ったのはあなたですか?」

オーナー「その通りだ。お前とそこの榎宮愷、あと二人の獄人と二人の管理者。合計六人俺が記憶を奪った。記憶を消せばそれで始末が完了すると思ってたが、どうやら依頼主は抹消がお望みらしい。」

下ろされたオーナーの腰は上がり、ポケットに手をいれながらわずかに口調を重くした。

オーナー「最後のヒントだ。今の状況について。俺の目的は幸奪戦争をめちゃくちゃにすることだと言ったな。どうやら幸奪戦争にはaとbとかいう区別がされているみたいじゃねえか。」

不敵に笑うその表情で伍代、花城、カイリの三名は察した。そしてあることに思いだし、それとオーナーの存在を関連付けて考えた。その様子をみたオーナーは三人の言葉を代弁する。

オーナー「気づいたよな。なんで急にaの会場で500人も失格者が出たのか?なぜ開始直後はほとんど減らなかった参加者の数が今では減り続けているのか?」

三人は言葉が出なかった。特に伍代翔地は自身に対して悔やみと怒りを向けて歯を食いしばった表情でオーナーを見つめていた。

オーナー「極楽にも幸奪戦争の関係者はいるよな?管理者に勝利者、別に俺は興味ないが【俺の部下はどうだかな?】」

花城如音とカイリは恐れこのオーナーという人物の得たいの知れなさを五感を通して痛感していた。aとb、ましてや極楽にまでオーナーの手が行き届いている。全てはこの幸奪戦争、いや冥界をめちゃくちゃにするために。

オーナー「さぁ、残り32時間。誰が在り残るんだろうな?」

これまでで一番邪悪で深い笑みを浮かべ彼は巨剣を手に取った。


ゲーム開始から16時間

残り参加者4076人

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