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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第二章 真相編
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第2-14話 切り札

桐生亜衣「え、何?1000人集めるって?」

言葉の意味自体は分かるが、意図は分からず、なんなら分かりたくもないが、思わず質問してしまった。

我殺狂助「まずこの幸奪戦争に紛れ込んでいる監視者がここにいる人数を使って何かをしようとするのは確実。エスケープが残されていることを考えると、重きをおいているのは人数だろう。ただこの幸奪戦争、始めに何人か消されていたよな。」

今回の幸奪戦争、減り具合は前回、前々回より明らかに少なかったが、それでも【ゼロ】ではなかった。参加者の消滅が滞ったのは参加者が180人ほど減ったあとのことである。

荘重飯嶌「でもそれは、アンティワームの人たちがやったことなんじゃ?】

我殺狂助「アンティワームはお前含めて50人いる。開始当初のアンティワームはかなり強い。そいつらの犯行なら被害はあと10倍はあはずだ。」

桐生亜衣「え?じゃあ誰が?」

我殺狂助「その180人は恐らく【強者】だ。」

桐生亜衣「…は?」

もう何を言っているかすらわからなくなった桐生は布団を敷いて寝ようかと考えるにまで至った。我殺狂助には何か考えがあるという信頼と睡魔との戦いの末、ギリギリ前者が勝ったので我殺の言葉の続きを求めた。

我殺狂助「桐生の質問に答えるなら、その180人つまり、強者を消したのは監視者だ。」

桐生亜衣「強者が残ってると不都合ってこと?」

我殺狂助「というよりかは、やりづらいんだろ。監視者の種性核がアナリストだろうがスレイブリーだろうが、強者に対しての接触を図らないといけない。明らかな胡散臭さを相手に与えることは避けられないのにな。」

強者を種核核の力で支配することは難しい、だからこそ先に始末した。強者の定義が曖昧だが、アンティワーム以外の参加者はいかなる潜在的能力を秘めていても既知の者にはほとんど敵わない。支配ではなく始末、それを行うのもまぁ納得できよう。

荘重飯嶌「で、本題の1000人集めるってのは?」

一番大事なところへついに踏み込む。失格となった180人の話をして、結局何が言いたかったのか。二人とも同じ目をしていた。

我殺狂助「言葉通りの意味だ。監視者側が人数を欲しているなら、その人数を奪えばいい。」

荘重飯嶌「それって、、ようは失格にするってことですか…?」

我殺狂助「いざというときはな。相手側に忠誠を誓っているものや俺たちのことを信用できないというものも現れるはずだ。」

荘重飯嶌「…わかりました。」

できない、したくないという言葉は自分に吐く資格はないと思ったのか参加者の減反を受け入れた。

桐生亜衣「でも、そんなことできるの?ここまで参加者の減りがないということはその支配がほとんど完了しているってことでしょ?私たちに勝てる…? あ!」

言い出してる途中で気づいたのか、思わず理解の声が漏れでた。

我殺狂助「あぁ、数の暴力は確かに脅威ではある。俺の作戦もどこまで上手くいくかはわからない。ただこれだけはいえる。【監視者の手下の一人一人の戦力は圧倒的に俺らより弱い。】」

荘重飯嶌「あ、そっか!」

その根拠はただ一つ。【向こうが勝手に強者を排除してくれているから。】

我殺狂助「とはいっても、仮定に仮定の話を結びつけているだけなんだがな。可能性は高いが、絶対ではない。」

自身の考えの粗を自ら指摘しながらも、言葉は続けられる。

我殺狂助「俺はお前らを守ってやれる保証どころか、いずれは【足手まとい】に陥る可能性もある。それでも俺の作戦は呑むか?」

足手まといという単語に桐生は妙に引っかかった。だがその単語について触れるのはやめ、我殺の質問に答える。

桐生亜衣「いいよ、というか私は作戦の頼りは我殺くんしかなかったから。文句いう気は更々なかった。荘重くんはどうする?」

荘重飯嶌「え、えっと、俺は…」

言葉に詰まるのも無理はないだろう。荘重に人を傷つける残虐性は備わっている。しかし、傷つけられる技術や傷つけられる覚悟を持ち合わせているかはまた別の話だ。一人一人が弱いといっても向こうは数の暴力の襲撃で迎撃してくるはず。おまけに、桐生や我殺と違って荘重は初参加。それも任意ではなく強制。精神の調整はまだ済んでないのだ。

だが、それでも彼は口を開いた。

荘重飯嶌「やります!俺も、こんなとこにつれてきたやつらを炙り出してぶっ倒してやります!!」

我殺狂助「わかった、ならば俺と桐生が全力でお前を守ろう。」

桐生亜衣「先輩としての役目だしね。」

いたずら気に舌を出しながら快く自身の援護を引き受けてくれるその姿に荘重も少しは感じるものがあった。



一方その頃極楽の地下牢にて

伊敷季毎伽「消せというのは、どういうことでしょうか?」

声は低く、目は狭まり、敬意の込めを無くしたうえで、そう質問してみた。

桝田小春「言葉通りの意味ですよ。彼は危険です。黒田さんはお怒りになるでしょうが、彼を残すことが最善であると私は到底思えないのです。」

伊敷季毎伽「しかし、こいつの処遇は俺の監視下におくことでひとまずまとまったのでは?実際、榎宮さんに監視の指示は言い渡されましたが、抹消の指示は聞かされておりません。」

まとまったのでは?と疑問形にするまでもなく、まとまっている。しかし、言い切ってしまえば、桝田に不審感を与えかねない。誰か内通者がいるという思考に陥られたら、葛西がどんな危険に逢わされるかわかったものじゃない。あくまで、自身の状態から考えられることしか話さない。

桝田小春「えぇ、ですからその結論が気に入らないと言っているのです。彼を抹消しても、【故意による犯行ではない。】と言い訳できるのはあなただけ。要は今、この場で花城如音を消すことができるのはあなたしかいないのです。」

伊敷季毎伽(つまりなんだ?この女の言いたいことは、花城如音を抹消しろ。そのあとの言い訳は如音が反抗的な言動や行動を見せたからとか言ってしのげ。言い訳が通じる抹消の犯行。それができるのはお前しかいない。)

桝田の言いたいことは理解したが、それでも尚、二つ彼には気になるところがあった。

伊敷季毎伽「いくつか質問を。一つ、花城如音が危険だと感じている理由は?」

桝田小春「彼の圧倒的な強さ。そして今の極楽に対する反逆的な思想を少なからず持っているその事実。彼の危惧には十分でしょ?」

伊敷季毎伽(なるほど、一理ある。彼の思想が今の極楽の理念と反していることは事実。獄人と協力して極楽を潰そうと考える可能性があるとおもうのも理解はできる。その可能性と花城如音の圧倒的な強さとそれを行える力が早急の抹消の理由であるならば、俺も了承はせずとも彼女の意見も汲み取りたい。)

一つ目の疑問の答えに伊敷季は極楽のことを考えた上でのことであると、少しの安堵と評価をもたらし二つ目の問いを投げ掛けてみる。

伊敷季毎伽「では二つ目。弟さんを連れてきたのは何のためでしょうか?」

桝田小春「それは単純に、弟とそのパートナーがあなたと花城さんに用があったからです。説得を促すために呼ばれましたが、これは好機とみてこの話をもちかけるのに利用させてもらいました。」

伊敷季毎伽「……」

ここで一歩踏み込んでみるか、と伊敷季は数秒の熟考の末、そうすることにした。

伊敷季毎伽「【弟さん、随分と遅いように思うんですが?】」

この質問に桝田は笑みを溢した。その溢しを伊敷季は当然、見逃さなかった。

桝田小春「えぇ、帰ってくるかどうかは伊敷季さん次第です。」

このときに伊敷季は桝田小春に対する敬意を完全に0にした。

伊敷季毎伽「最後の質問です。もし、私が花城を消すことを拒否した場合、どうなりますか?」

ここでさらに桝田は笑みは深まった。伊敷季に徐々に近づき始め、上機嫌に話し始める。

桝田小春「伊敷季さん、【悪魔】ってご存知ですか?」

伊敷季毎伽「いいえ、初耳です。」

知らないふりをするしかない。知れば葛西にも被害が及ぶ可能性があるから。桝田のこのあとに話すであろう言葉がわかっていたとしても、わからないふりをするしかない。伊敷季はそうやって自身を律して桝田の言葉を黙って聞く他なかった。それを気づきもせず、桝田は変わらず続ける。

桝田小春「悪魔というのは、神楽士郎が考案し、作り出した意思のない【悪人の魔物。】七次の参加者の一部も既に悪魔に変えていますね。」

伊敷季毎伽「……」

桝田小春「私たちは、その悪魔を利用して【私たちの本来の目的】を遂行しようと考えているんですよ。」

伊敷季毎伽「その話が、私の質問とどう関係するんです?」

桝田小春「ふふっ、、悪魔に変えられているもののうち、15体ほど私が抱えているんですよ。」

伊敷季毎伽「……」

桝田は伊敷季の背後に寄り、両肩にそれぞれ手をおき耳元で答える。

桝田小春「15体の悪魔は楽人の人たちを何人食べられるんでしょうね。」

伊敷季毎伽「……」

伊敷季は彼女の言葉にもう、怒りを見せる気すら失せてしまった。それは、呆れなのか、失望なのか、憎悪なのか、はたまた超越した怒りなのかは本人にもわからない。ただ伊敷季には桝田小春という人物が神楽士郎と親密な関係にあり、彼女は極楽のことを考えているわけではないということを理解できた。一つ目の質問も詭弁だったのだ。本当は花城如音に悪魔の計画を止められることを恐れているだけだったのだ。

伊敷季毎伽「その15体の悪魔は極楽のあちこちにばらまかれているのですか?」

何とか言葉を絞りだし、正真正銘最後の質問をする。

桝田小春「はい!そのうち2体は私の弟のところにいます。」

伊敷季毎伽「…そうですか。」

ここでついに、伊敷季は覚悟を決めた。

伊敷季毎伽「ちっ、、あーー、ここで使う気はなかったんだけどな。」

舌打ちと愚痴をこぼし、伊敷季の目線はある人へと向けられた。

伊敷季毎伽「如音、【切り札】を使う。」

花城如音「いいのか?俺もお前も下手に動けなくなるぞ。」

伊敷季毎伽「これ以上は見逃せねぇ。楽人には誰一人傷付けさせない。」

花城如音「ふっ、了解した。」

瞬間、花城如音を縛る手錠、足枷はたまた首につけられていた鎖が外れ金属音を鳴らしながら床にその残骸が散る。

桝田小春「…え?は?」

桝田小春の理解が及ぶより先に、花城如音は檻に向かって一蹴り。当然かのように爆音が流れたのち、花城如音を閉じ込めていた檻は床に倒れる。そこから花城如音は一歩ずつゆっくりとこちらへ歩き出す。

桝田小春「…え?嘘でしょ、武召喚は使えないはず。」

花城如音「舐めるなよ。この程度の檻、俺はいつでも抜け出せたんだよ。」



ゲーム開始から十二時間

残り参加者4819人

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