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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第二章 真相編
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第2-10話 第二次

花城如音「なぁ伊敷季。悪魔の正体が七次の参加者なのは俺も同じ意見だ。bの待機している場所が悪魔の工場へとなり果ててる可能性があるのも分かる。だが、なぜ勝利者を連れていく?」

伊敷季から聞いた話によると、八次の幸奪戦争は既に始まっており、失格者6人はaとbに分かれている。aはメインである幸奪戦争に向かい、bは基本的に四日後に行われる脱落者決定戦が始まるまでは、待機となる。aとbに分かれることはこれまでも恒例のごとく、されている。bが待機している場所が悪魔の工場となる可能性があるというのも頷ける。前々回まで失格者の受け入れ先として使われていた場所が悪魔の工場となっていた。今失格者の受け入れ先となっているその場所が新たな工場の工場となる、なっている可能性があると考えるのは当然だろう。

問題はそこじゃない。

花城如音「監視者である神楽士郎は悪魔を利用したある提案をした。そしてお偉いさんはそれに賛成した。お前はそれを密かに止めたい。そう、密かにだ。だから、なぜわざわざお前らが嫌う獄人に、付き添いの管理者もいるなかで、手伝わせようとしているのかが俺には分からない。」

花城にとって、伊敷季の行動はその目的とは矛盾しているようにみえた。幸奪戦争の勝利者は管理者の付き添いのもと、極楽での生活が許される。その付き添いの担当を決める際、全管理者が必死になってその役目を免れようとするほどに管理者は獄人を嫌っている。これは逆もしかりだ。そんな中、伊敷季は密かに悪魔の生成を止めたいというのに、情報を垂れ流す、裏切る可能性のある佐藤要、それの付き添いの牟婁星藍という新人の管理者に手伝いを要請した。花城の疑問ももっともだろう。その投げ掛けられた疑問に対し、伊敷季は少し上機嫌にその答えを返した。

伊敷季毎伽「相変わらず、お前は悪くない目のつけ方をしている。」

そうでなくちゃなと言わんばかりの口調に花城も少々ドン引きしていた。

伊敷季毎伽「教えといてやる。俺が勝利者に協力を要請したのは、はっきり言えば消去法だ。」

何をはっきり言ったのか、まだ説明されきっていないその言葉に花城は続きを求める。

伊敷季毎伽「俺は榎宮優のことは最初から好いていない。それに信用もしていない。ただ、あいつが優秀だということは認める。」

悔しそうに、だが尊敬の意は確かに込められたその声に花城は黙って真摯に受け止める。

伊敷季毎伽「神楽士郎の提案を榎宮優が後押しした。俺が悪魔の生成を止めたいのと同じように、榎宮優も本気で悪魔を生成させるつもりでいる。ここまで言えば分かるだろ。」

花城如音「なるほど、だから楽人にそのことは伝えられないのか。」

伊敷季の説明に花城は全て理解した。

花城如音「榎宮優は今は管理者のトップ。極楽の平和を誰よりも守ることができ、誰よりも信頼されている。お前は榎宮優が楽人を洗脳していると考えんだ。」

伊敷季毎伽「あぁ、俺が悪魔の生成に反対しているとバレることは榎宮優を完全に敵に回すことになる。それは、全楽人を敵に回すことにと同義だ。」

伊敷季は裏でこっそり、悪魔を止めるよう暗躍している。だが、伊敷季はこう思った。

【自分が思い至れる程度のこと、榎宮優も思い至れる。】と。そのため、榎宮優も裏で暗躍していると考え、楽人は既に榎宮優の手中にあると踏んだ。楽人はもともと【あの逸話】もあってか、榎宮優を崇拝するものが多い。そいつらを手中に収めることなど造作もないだろう。それでも、葛西水引という信頼できる人間の他にも人手がほしい。その結果、榎宮優に靡かれていないであろう、勝利者を選んでのだ。

花城如音「そこで懸念されるのは、勝利者が裏切る線だが、上手いことに、その心配は杞憂となった。成長したな?」

そう言いながら、椅子にくくりつけられている足を可動域の限り動かし、不恰好な足拍手で称賛した。

伊敷季毎伽「その褒め方、腹立つな。だけどお前のいう通り、裏切る可能性は0ではないが、低い。管理者という付き添いがいるからな。」

勝利者には付き添いの管理者が必ずいる。佐藤要には新人とはいえ、管理者ナンバー4の実績を持つもの。勝利者が不審な動きをすれば、その管理者が対応してくれる。

伊敷季毎伽「牟婁星藍というものだが、彼女はうかつな行動はしない。こちら側につくか、榎宮優につくか、自分の考えを持ちながら彼女は判断することができる。」

花城如音「随分買ってるんだな。」

伊敷季が人を褒めること自体珍しく、意外な表情を出さずにはいられなかった。

花城如音「それで、才原清一の方は何で置いてきたんだ?極楽に残しても、得はないだろ。」

佐藤要と同じ勝利者である才原清一はなぜか連れていかず、極楽に置いたままだった。

それにも何か意味があるのかと、続けて質問する。

伊敷季毎伽「質問が多いな。まぁもっともな疑問ではあるが。理由は二つ。一つは才原清一はまともに戦える状態にないんだ。」

花城如音「ん?精神が崩壊したとか、そういうことか?」

伊敷季毎伽「違う、からだの機能的に厳しいんだ。」

花城如音「…は?」

幸奪戦争は終了した際に、戦争中に負った傷は完全に癒えるようになるはず。からだの機能が損傷していることはあり得ないはず。

伊敷季毎伽「才原清一の右足、幸奪戦争が終わっても修復されていないんだよ。クラインドを使われてから。」

花城如音「種性核の攻撃か。」

伊敷季の説明に花城は納得したようだ。



極楽には地獄よりも遥かに文明が進んでいる。現界社会を越えるような技術の発展、人々の娯楽を満たすものの質。争いや環境問題などの政治事でさえ、気味の悪いほどに都合よく進行している。人々が笑顔を絶やさず、思いやりや助け合いという他者を慮る精神を持ったものに溢れている。そんな文字通りの楽園の光景に地獄からやってきたものは驚きを隠せなかった。


あまりに気味が悪い。

そう感じた男、才原清一は右足を失い、車椅子の生活を余儀なくされた。車椅子のハンドグリップを握っている男は、管理者ナンバー9の桝田結城(ますだゆうき)という。管理者は全部で9人しかいないため、彼は管理者の中で最も低い地位にある。

桝田結城「おい獄人。何度も言うが、基本的には自分で動いてもらうからな。勝利した以上、何するのも構わんが俺の手は煩わせるな。」

才原清一「なら置いていけばいいだろ。俺に構わず、管理者の仕事をすればいい。」

桝田結城「その管理者の仕事がこれなんだよ。俺は管理者の中では落ちこぼれ扱いだしな。」

管理者は暇なのかという疑問を持ちながらも、才原清一はあることについて悩んでいた。

才原清一(何で、兄ちゃんがいないんだ…?)

才原清一が極楽に来て数ヶ月、ありとあらゆるところを転々とし、聞き込みを行ったが結果は得られず。地獄にもいなく、極楽にもいない。現界でいう、国籍のようなものを調べようとしたが、それも叶わず。結果として、ただこの数ヶ月、なんの情報も得られずに車椅子で生活しているだけだった。

才原清一「なぁ、一つ聞いてもいいか?」

桝田結城「何だよ言ってみろ。」

才原清一「お前ら管理者は一体何が目的なんだ?」

桝田結城「…は?」

意味の分からない質問をされたからか、獄人が生意気に管理者の理想を問うたからか、はたまたその両方によるものなのか、彼の口調には棘があった。そんなことを気にもせず、才原清一は続ける。

才原清一「正直、お前らが素直に俺たちを極楽に連れていくとは思わなかった。罪を犯したものが、存在を奪い合う戦いに勝利したから、極楽に行ける。普通に考えておかしいだろ。」

罪を犯したものがその罪を何らかのかたちで償い、極楽に貢献したものが赦されるのは分かる。だが、反省の機会もその必要性も与えず、罪を犯したものがさらに罪を犯すことで赦されるこの幸奪戦争のシステムはシンプルに疑問で、不可解なものだ。

桝田結城「もっともな疑問だが、お前が知る必要はない。お前らは極楽の生活を享受できる。それて充分なはずだ。」

才原清一(答える気はない。都合の悪いことなのだろ。)

才原清一は問うことを諦め、自分の新しく用意された家のリビングから寝室へ向かおうとする。そのとき、家のチャイムが鳴り響いた。

ピンポーンと。

才原清一「誰だ?」

ここへ来てはじめての来客の存在に不審感を抱きながら警戒しているて、桝田は才原を残して、玄関の扉へと向かう。扉は開けられ、才原の耳に僅かに漏れ出たその声は女性らしく、温和な様子が醸しだされていた。才原清一も自力で車椅子を動かし、その声のもとへと近づく。そこには、髪に金色の装飾品が施され、桝田と同じく純白の白衣を纏ったおっとりとした女性がいた。

山禰一美「えっとぉーー、あなたが才原清一くん?」

母のように問いかけるその口調に、才原清一は自分の家族の懐かしい記憶を思い出させられる。

桝田結城「何のようだ山禰(やまね)。」

山禰一美「あ、そうね。先に自己紹介よね。私の名前は山禰一美(やまねひふみ)といいますぅー。桝田くんと同じ管理者として働いていて、ナンバー6の地位を頂いてまーす。

仲良くしてね、才原くん。」

マイペースな口ぶりに桝田は苛立ちを見せていたが、知らないふりをして、山禰は続ける。

山禰一美「才原清一くん、あなたに会いたいと言うものがいるんだけどぉー、いいかしら?」

才原清一「俺に会いたい?」

山禰一美「詳しい話は直接会ってすると言ってるの。でも、あれは体が動かず寝たきりの状態だから代わりに私が足を運んだの。来る、来ないだけ、今この場で決めてくれる?」

代わりに出向いたことにやや不服なのか、さっさと済ませたいらしい。才原清一は数秒だけ考え、会うことを承諾した。

才原清一「分かった、案内してくれ。」

山禰一美「はーーい。じゃあお二人さん。こっちでーす。」

山禰に案内されるがまま辺りを歩き、約10分。そしてついに、アパートのようなところで山禰の足は立ち止まり、ある扉を右手で指して笑顔で着いたという。

山禰一美「ここだよー。ここにあなたに会いたいと言う人がいるから、入ってねー。」

山禰に促されるがまま、扉を開ける。車椅子が通るには少し狭く、桝田の手を借りなんとか奥まで進むことができた。廊下はゴミ袋が散らばっており、埃や黒ずみなども探さずとも目視できる。その光景に不気味さを感じつつも何とか部屋のリビングまでたどり着いた。そこには一つのベッドが置かれており、そこに一人の女性が横たわっている。

才原清一「あんたか、俺に会いたいと言ってきたやつは。」

その質問に女性は、「そう、私があなたを呼んだの。」と微かな声で返事をし、自身のことを明かす。

自身の名前が坂縞雷火(さかじまらいか)であり、第二次幸奪戦争の参加者であることを。

才原清一「第二次の参加者…?俺と同じようにあの戦争を戦ったのか?」

坂縞雷火「えぇ、あの戦争は本当に酷かった。あれほどに凄惨な光景を私は知らない。」

もうかなり時間が経つであろうそのことを昨日のように振り返り声を震わせるその姿、いや、もとより今の寝たきりの状態は才原にとって凄惨さを感じさせられた。

才原清一「それで、俺に何の用があって呼んだ?」

彼女が第二次幸奪戦争の参加者であり、初めての勝利者であることは理解した。だが、ここは極楽。自分達は幸奪戦争とは無関係な存在となったはず。それ故に、なぜ自分を呼んだのかそれを聞かずにはいられなかった。

坂縞雷火「あなたには、伝えておかないと思ってね。私が参加した第二次に彼がいたのよ。」

才原清一「…彼?」




坂縞雷火「あなたの兄、才原祐一が。」


ゲーム開始から六時間

残り参加者4820人

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