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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第二章 真相編
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第2-2話 信用

この作品は全三章で構成するつもりです。

幸奪戦争がなぜ行われているのか、そのたった一つの大きな謎を解き明かすことが木崎印にとっての存在する理由となった。失われた仲間に報いるため、ギリギリで命拾いならぬ存在拾いした自分が何をするべきか。それを考えた結果、この目標に行き着いた。

では、その目標を完遂するためにはどうするべきか?今の自分には情報がない。だが、調べる、解析する力は持っている。そのため、木崎印にとって必要なのは有識な協力者だ。そのなかで木崎印が知り得る最上の有識者は伍代翔地という人物に至った。

伍代翔地「この戦争の謎を調べるのに、有識者が必要なのはわかります。僕もそう考えて行動していましたから。ですが、その選択は間違いでした。僕に協力してくれた有識者はいなくなりました。他の参加者に裏切られたからです。その裏切り者は有識者の持つ情報を抜き取り、監視者に引き抜かれたんです。」

木崎印「抜き取った……?」

情報を抜き取ったという言葉に木崎にはわずかな寒気とその裏切り者の行動が察させられた。それでもなお、自身の予想が外れてほしいと願い問う。しかし、返ってきた問いの答えは木崎が考えたものだった。

伍代翔地「その裏切り者の種性核はスレイブリー。裏切り者は有識者を奴隷にすることに成功し、記憶を献上するように命令しました。その結果、その有識者が掴んだ情報は全て監視者側に送られ、当の本人は完全な記憶喪失となり、そのまま無残に…」

木崎印「同じ轍は踏みたくないと?」

伍代翔地「それもそうですが、これ以上裏切られると僕の計画の最後の砦すら壊されるんです。あなたが信じるに足る人物であると証明してみてくださいよ。」

意図を解析しなくてもわかる。伍代に協力の意思は皆無であることを。自分とは手を組まないと遠回しに告げられていることを。信用を証明するなど、不可能だ。自分は裏切らないですなど、ただの口約束。何の意味ももたない。誰かに自分のことを称えさせても、力ずくで協力させようとしても、伍代から木崎に対する信用は生まれない。いや、生まれさせる気など毛頭ないのだ。それでも味方につけないといけない。自分一人では運営には勝てない。情報も、人手も、力も、何もかもが不足しているのだ。木崎は覚悟を決め、ある行動に出た。

木崎印「…わかった。証明してやる。」

木崎印(一か八か、ここで消されたら笑えねぇな。)

一つの覚悟と恐怖を胸に、言葉を続ける。

木崎印「だが、俺が証明するのは自身の信憑性じゃない。俺の執念だ。」

伍代翔地「…は?」

木崎印「確かに、いくら俺が自分は裏切らないと主張したところで何の保証にもならないだろう。だから、逆の保証をしてやる。

お前が俺に協力しなかったら、俺は確実にお前の敵になる。」

瞬間、木崎の前に立ちはだかった扉が開いた。扉の先には薄汚れた作業服に黒いメガネをかけた男がこちらを睨んだ姿が確認された。扉が開いたや否や、伍代は木崎の胸ぐらを右手で掴み、右腕を横に回し下ろす。木崎の身体はあまりの速さと力の大きさになすすべもなく、そのまま伍代の自宅の玄関へ強制的に移動される。そして、倒れこんでいる木崎の上に伍代がまたがった。

伍代翔地「てめぇ、何つった?」

さっきまでの丁寧語は失くなり、威圧と憤怒に近い感情の声をぶつけられる。

伍代翔地「いい度胸してますねー。消されたいんですか?」

丁寧語には戻り、笑顔で話しているが、心は笑っていない。作り笑いどころの騒ぎじゃなかった。

木崎印「いい、のか?俺がお前に触れたら、情報が筒抜けになるぞ。」

伍代翔地「…アナリストか。」

このまま木崎に触れれば、自分の掴んだ情報が流れると気づき、仕方なく距離をとる。離れられた木崎は立ち上がり、口を開いた。

木崎印「悪いな。俺もあとがない。消えていったあそこにいたはずの誰かたちのために、俺は真相を突き止めたいんだ。」

伍代翔地「…その誰かはもう存在しないんですよ。誰も覚えていない。名前、容姿、性格、どんな行動をしていたのかさえ、いずれ完璧に忘れる。」

木崎印「それでもだ。あいつらがあのとき、そこにいたという事実は変わらない。変えちゃいけない。今の俺の気持ちがその証明だからだ。」

伍代翔地「……」

木崎の言葉に伍代は十秒ほど黙りこんだ。そのときに何を考えていたのかは分からない。第五次のときの仲間のことなのか、監視者のことなのか、はたまた運営や裏切り者のことなのか。そんな妄想をしているうちに、伍代が再び喋り出した。

伍代翔地「いいでしょう。協力者としては認めます。ただし、あなたが使えない、裏切ると判断した場合は容赦しません。」

木崎印「あぁ、それで構わない。」

伍代翔地「それと、僕が許可するまで触れないで下さい。情報を垂れ流すわけにはいかないので。」

そういいながら、家の廊下を木崎を横切り歩き出す。リビングへ向かう途中で足を止めた。

伍代翔地「上がっていって下さい。お伝えしておくことがあるので。」

木崎印「了解した。」

そうして、二人は歩を進め、情報共有へと向かい出した。



それから二ヶ月が経過した。運営からは何の連絡もなく、失格者の面々はただただずっと地獄の労働に励むばかりであった。

桐生亜衣「さすがにおかしくない?」

終業後、一緒の現場に配属されていた桐生と坂縞は地獄にある居酒屋のようなものへ足を運び、そこでビールと枝豆を口にする。半ば酔っぱらいの症状を醸し出している桐生の声量はコントロール不能な状態と化していた。

坂縞樹「お前の頭がか?」

桐生亜衣「違うよ!!あいつらからの連絡が遅すぎるって話!!先週、我殺くんと会ってちょっと話したけれど、前回はここまで遅くなかったって言ってたよ!」

坂縞樹「お前と我殺って、そんな親密な仲だったか?」

桐生亜衣「いや別に。愷くんのこともあるし、親しくはないと思う。でも、たまたま会って我殺くんからお話持ちかけてきたんだよね。私のことも恨んでいるはずなのに。」

坂縞樹「榎宮の味方をしているからか?」

桐生亜衣「…うん。愷くんのしてきたことが本当なら、愷くんを庇う私のことも恨むべきだよ。樹くんはどうなの?」

坂縞樹「…何のことだ?」

桐生亜衣「隠さなくていいよ。愷くんのこと、もう信用していないでしょ。」

坂縞樹「フッ、何でもお見通しか。」

今まで通りを偽っていたはずが、簡単にそれを見抜かれ思わず苦笑する。

坂縞樹「あぁ、俺は榎宮のことはもう信用していない。正直、あいつの存在は監視者や他の参加者より危険だと思う。」

桐生亜衣「その考えは否定しない。愷くんは急に暴走することもあるし、その被害に遭った人がいたことも分かってる。そうなると、樹くんとは協力関係を結ぶのは難しいのかな?」

酔いが覚めたかのように、はじめから酔っていなかったかのように、口調は厳粛さを帯び、かしこまった雰囲気を醸し出していた。

坂縞樹「それは俺も考えた。お前と桐生とどう向き合うべきか。」

桐生亜衣「答えは出た?」

坂縞樹「俺は正しいことができる人間になりたいんだ。俺は榎宮の味方になることが、正しいことだとは到底思えない。」

桐生亜衣「…そっか。」

坂縞からの敵対宣言を感じ、無力感や喪失感を隠しながら相づちを返した。しかし

坂縞樹「だが、敵対することも正しいとは思わない。」

坂縞の言葉から感じ取れてしまった敵対宣言は桐生の早とちりだった。

坂縞樹「俺はあいつを信じない。その代わり、榎宮を信じたお前を信じることにする。」

桐生亜衣「……」

坂縞樹「え?」

ふと桐生の顔を見ていたら、彼女の目から涙が溢れていた。真顔でそれを垂らしていた彼女を見て、坂縞も少しの間困惑した。

桐生亜衣「え?あ、あれ?何で私泣いているんだ?」

その坂縞の様子を見て、ようやく何が今の状況の理由となったのか理解する。慌てて顔を手で隠そうとするも、なぜかその高ぶった感情は止まらず、水が込み上げてくるばかりであった。

坂縞樹「フッ、、」

さっきの苦笑とはまた違う。桐生という人物に思わず心からの笑みが溢れてしまった。

坂縞樹「すみません、生ビール二つ。」

近くを通りがかった定員を呼び掛け、注文をし、机に置かれている自身の酒グラスを飲み干した。

坂縞樹「しょうがないから、今日は奢ってやる。」

桐生亜衣「ありがとう、、じゃあ私お刺身食べたい。」

坂縞樹「調子乗んな。」

涙ぐんだ声から図々しさが発せられ、即答で咎めつつ、注文した。

坂縞樹(こいつだけは信じてみるか。)

それが自分の正しさになると信じて。


それから二時間後、居酒屋を出てそれぞれの自宅へ向かう途中のことだった。

桐生亜衣「うへぇー、うー、いっはーいにょんだ~。」

坂縞樹「ちゃんと歩け酔っぱらい。」

ふらついた足取りの桐生の腕を坂縞の肩が支えながら桐生の体重に耐えつつ歩いていた。

桐生亜衣「ごめぇんねー。わーし、おしゃけよわぁーいんだ。」

坂縞樹「じゃあ居酒屋誘うな。」

IQが5くらいまで低下した女とそれに対する小言をブツブツ言いながら歩く男の姿に一人の男がその存在を認識した。

榎宮愷「坂縞くん?」

正面にはかつて共に幸奪戦争というデスゲームを戦った戦友の姿があった。

坂縞樹「榎宮…」

榎宮と坂縞の間に、静寂と緊張が流れる。一秒、また一秒と見つめ合うほどにその流れは激流となり、周囲の音量が次第に増幅されていく。どんどん言葉が行き詰まっていたところをある存在がぶち壊した。

桐生亜衣「あ、やばい。吐きそう。」

坂縞樹「榎宮、助けてくれ。」

榎宮愷「了解。」

最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。

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