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ハッピーエンドを求めて  作者: 蓮翔
第二章 真相編
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第2-1話 経験者

この作品は全三章で構成するつもりです。

第七次幸奪戦争が終わり、一週間が経った。

消え損なった失格者たちは、また地獄の労働を強制された。武装した監視員の怒号が飛び交い、青空など拝めず、荒廃したいるだけで気が滅入る場所での過酷な労働。8日ぶりの光景に、才原祐一の姿はなかった。

榎宮愷「確かにここにいたはずだよな。」

地獄での仕事を終え、近くにあるベンチに腰を下ろしながら、その男の存在を思い浮かべる。

榎宮愷(才原祐一とここで地獄での俺たちの扱いについて語った記憶はある。俺に対して敬語を使って、俺より幼い状態で冥界に来たから、後輩だと思ってたけど本当はあいつの方が先輩なのかな。)

ロストイーブンの種性によって所々記憶が抜け落ちていた。

榎宮愷「覚えてないのは俺だけで、皆は覚えていたらいいのに。」

その場合、あいつらの存在はまだ残っているから。



~一週間のこと~

桐生亜衣「樹くん、それ本当?」

坂縞樹「お前らの記憶がその証明だ。この幸奪戦争で脱落したものは、その存在が抹消される。」

榎宮愷「なら、今記憶にない人は…?」

坂縞樹「もう、存在していないことになる。」

突如突きつけられたその事実に言葉が出なかった。確かに、死後の世界でデスゲームを行うなどおかしな話ではあった。何を代償に自分達は参加しているのか考えなかったわけじゃない。だが、すぐに考えるのをやめたのだろう。考えてもわからないことと考えたくないものをそう言い訳して投げ捨てたのだから。

榎宮愷「…そうか、、ありがとう。」

無理やり作った苦笑を浮かべ、立ち上がる。そしてゆっくりと歩き出す。

桐生亜衣「愷くん!どこ行くつもり?」

榎宮愷「我殺に会いにいくんだよ。もう一回い改めて謝罪しないと。」

坂縞樹「我殺はお前に会いたくないと思うぞ。」

その言葉に一度足を止めた。

榎宮愷「もしかして、もう知ってる?」

坂縞樹「お前が我殺の仲間を消したことはな。」

榎宮愷「…そっか。」

坂縞樹「俺なら、全力でお前に襲いかかる。クラインドもロストイーブンの種性も全て使ってでもな。」

榎宮愷「それでも行かなきゃダメだ。例え、あいつに何を思われても、怒りを買ったとしても、俺にできる贖罪はしないとダメだ。」

そう言い残し、足を進めようとしたその瞬間

神楽士郎「あーあ、失格者の皆さん。聞こえますか?」

大音量の放送がこの部屋を包んだ。

神楽士郎「先ほど、第七次幸奪戦争が終了致しました。勝者は2名。存在者は勝者含めて9名という結果となりました。皆様、ご存在おめでとうございます。」

初めて聞く祝福の言葉と、たった9人しか残れなかった事実に皆、戸惑いを隠せなかった。

神楽士郎「勝てずに終わった皆様には、次の幸奪戦争にも参加してもらいます。」

榎宮愷「…は?」

神楽士郎「次の幸奪戦争が始まるときにまたこちらから迎えをよこしますので、それまでは地獄での生活にお戻りください。」

榎宮愷「どういうことだよ!!次も参加しないといけないって!!」

神楽士郎「それでは、、失礼いたします。」

いい逃げし、それから放送が鳴ることはなかった。抗議など通用しないと気づいたときにはもう、誰も口を開かなかった。残されたものたちは、係員に誘導されるがまま車に乗せられ、気づいたら自分の住んでいたアパートの前だった。そのあとは、8日前のいつもの日常に逆戻りするだけだった。かれこれ、一週間何も連絡は来ずに今に至る。我殺にも桐生にも、坂縞にも会えていない。才原祐一のことも、幸奪戦争のことも、何も分からないまま。せめて、ロストイーブンで失われた記憶を取り戻すことができたら少しは真相に近づくかもしれないが。



榎宮愷「アナリストがいたらな。」

木崎印「呼んだか?」

ボソッと一言ぼやいたその言葉が現実となった。視界の先には見知った男が缶ジュースを片手に立っている。

榎宮愷「木崎…」

木崎印「まさか、同じ現場に配属されていたとはな。」

そういいながら、榎宮の横に腰を下ろし、缶ジュースを一口飲み始める。

榎宮愷「君も終期に倒されたってこと?」

木崎印「あぁ、ふざけた野郎に毒を盛られた。戦争終了と同時に武召喚の効果は切れるみたいだけどな。」

榎宮愷「確かに。今の俺たち、武召喚はできないもんね。武器の生成も身体強化もできない。あ!そうなると、結局アナリストもダメか。」

木崎印「そういえば俺のことぼやいてたな。あれはなんだったんだ?」

榎宮愷「いや、俺の種性核がロストイーブンだからさ、戦うたびに記憶が失われていくんだよね。知り合い曰く、その失われた記憶はアナリストがいれば思い出せるらしいんだけど。」

木崎印「なら、多分役に立てるぞ。」

榎宮愷「え?」

木崎印「制限されているのは、あくまで武召喚なだけであって、種性は使えるんだよ。」

榎宮愷「つまり、俺の場合、記憶を代償として払えば武召喚ができて、君の場合は解析ができると?」

木崎印「そうなるな。」

榎宮愷(なんかやけに詳しいな。何があったんだろう?)

木崎印「で、俺はお前に触れて解析すればいいのか?」

榎宮愷「い、いいのか?」

あまりの抵抗の無さと、条件も何も交わさないことに思わず疑問の声を出す。

榎宮愷「言ったらあれだが、別に俺と君に信頼性や信用はないだろ?」

一時的に共闘関係にあったとはいえ、その関係はすぐに終了した。お互い終期に倒され、失格となったが、どうやって倒されたのか、何があったのかはまるで知らない。何を考えているのか、何を目的としているかも分からない相手に何も質問せず、協力をしようとするのは抵抗があるはずだ。

木崎印「別に解析するだけなら、何も問題はないだら。その情報をお前に与えるか否は俺の意思で決められるし。」

榎宮愷「まぁ、確かに。」

木崎印「そういうわけだ。触るぞ。」


榎宮愷の頭に木崎印の左手が触れられる。その瞬間、木崎印の脳内に何かが流れ込んでくる。触れる時間が長くなるほどにその何かは鮮明になっていく。人の記憶の一部からやがて全体へと映し出されていく。榎宮の記憶の中には幸奪戦争で経験したことや彼の種性核、その種性を使った回数やそれによって失われた記憶までさまざまな情報が木崎印の脳内に流れ込んでくる。

パート(よぉ、俺のことを知りに来たのか?)

木崎印の脳内に一つの存在が語りかける。

木崎印(お前誰だ?)

パート(一応榎宮愷だよ。ただちょっと特殊でな。俺はロストイーブンによって失われた記憶の象徴、具現化された存在なんだ。)

木崎印(俺がお前のことを解析した場合、お前はどうなる?)

パート(さぁな、俺は一応忘れられていた記憶としているんだ。だからお前が俺の記憶を掘り起こそうとすれば多分俺は消滅する。)

木崎印(お前が消滅すると、何か都合の悪いことはおこるか?)

パート(別にどうも。俺が消えること自体には何も影響はねぇよ。さっさと調べな。)

木崎印(じゃあ、、遠慮なく。)

ぶっきらぼうに、だるそうに、怪訝そうに語るその男が榎宮愷とは半ば信じられなかった。だが、そんな男、パートについて調べる。そこに映っていた記憶の映像はこれまた異質だった。


???「あなた、、本当に榎宮愷、です、か?」

パート「あぁ、だって俺、さっきの榎宮愷とはまた別の人格だからな。」

???「くっそ。たち悪すぎるだろ。」


榎宮愷らしきものが、誰かを失格にさせている映像。誰かが消滅したと同時に映像は切り替わる。


才原祐一「榎宮愷。」

榎宮愷「ん?おお、才原か。どうかしたのか?」

才原祐一「先輩にお願いがあるんですけど?」

榎宮愷「?どうした。急に改まって。」


この続きを観ようとしたとき、突如ブチッ!という音が木崎印の中で響く。映し出された映像は切断されていた。

パート「どうやら、時間切れのみたいだな。一度に解析できる量には限りがあるらしい。」

パートの言葉を聞きながら、段々と現実に引き戻されていく。現実へと帰ってくる前に一言「頼んだ」という言葉が最後に聞こえたような気がした。


木崎印「はっ!!」

榎宮愷「だ、大丈夫?」

木崎印の右手に握られていた缶ジュースは床に叩きつけられ、中身が溢れ出していた。

木崎印「あぁ、大丈夫だ。それとお前、人格がもう一つ、いや二つくらいあるのか?」

榎宮愷「!?」

パートやカイリの存在を測れるアナリストの種性に思わず感心し、息を呑む。

榎宮愷「どこまで、調べられた?」

木崎印「そこまで深くは調べられなかった。武召喚をしたら、もう少し詳細な情報が分かるんだろうが。今は無理だな。とりあえず、わかった情報はお前にくれてやる。」

木崎印の左手がまた榎宮の額に触れる。額に触れた瞬間に、榎宮の脳内に情報が送り込まれた。

木崎印「んじゃ、俺帰るわ。」

空き缶となった缶ジュースを拾い上げ、木崎は姿を消した。彼が向かった先はある人物のもとだった。


何十年、何百年前に建てられ、腐朽が進行した木造の家へ足を運ぶ。木造の家にたどり着き、扉を叩いてみる。反応はない。だから、何十度か叩き続ける。しばらくの格闘の末、返事が示された。扉越しに音声が流れる。


伍代翔地「しつこいですね!!何度目ですか!さっさと帰って下さい!!」

呆れと爆音を含んだ怒号が木崎印の鼓膜を刺激する。

木崎印「頼む。お前の力が必要なんだ。」

伍代翔地「僕はあなたの力は必要ありません。第一、あなたは信用できない。いや、、もう誰も信用できない。」

木崎には誰も信用できないという言葉に重みと哀しみが入り交じっているように聞こえた。その言葉に木崎もそうなった過程は違えど、その結果に至るのは共感できた。

木崎印「俺にはお前が必要だ。だから何度でも訪ねてきてやる。第五次幸奪戦争の参加者で一度は監視者を味方につけた男、伍代翔地(ごだいしょうじ)。」


最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。初の投稿作品ですので、まだ粗削りで不出来なところもあるでしょうが温かい目でこれからこの作品を見守って頂ければ幸いです。作品を読む際に【ハッピーエンドとはどういうものなのか】このことを念頭に置きながら読んで頂ければ、より一層深くまでこの作品を楽しめると思います。これからもこの作品を皆さまに楽しんでいただけるよう、精進して参ります。

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