43.三歳の麗子と愛実の出会い
(三歳の麗子と愛実の出会い)
「天気のいい五月の朝だったかな……」
麗子の話は、三歳のあの日の出来事に戻っていた。
「引っ越してきて、一か月くらい経った時で、いつものようにさっちゃんを抱えて、道に御座を曳いて、ピアノの音がしないかと思って、目をつぶって、座っていたのよー」
「なにしてるのー? 大きなお人形ね……」
その声で、目を開けて見ると、私と同じくらいの女の子が立っていたの……
「私のお友達、さっちゃんていうのよ……」
さっちゃんは、お母さんが作ってくれた大きな縫いぐるみなんだけど、着せ替えもできて、何時も傍に置いて友達のように遊んでいたわ。さっちゃんの服もお母さんが作ってくれたのよ。
「大きくて、可愛いわー、私も座ってもいい……?」
「もちろんよっ! いらっしゃませ……!」
何処の子か知らなかったけど、さっちゃんが可愛いって言ってくれたことが嬉しかったのよね。
「私にも抱かせて……?」
「いいわよー! さっちゃん、私のお友達よ、仲良くしてね……」
「さっちゃん、わたし、アミ、よろしくねー」
アミは、さっちゃんを抱きしめて言ったのよ……
「あれー、この子パンツ履いている……」
さっちゃんは、Tシャツとオーバーオールのズボンをはいていて、そのズボンの隙間からパンツが見えたのね。
「もちろんよー! 靴もあるわよー!」
私は、小さな靴をいつも持ち歩いているバスケットの中から出して見せたわ。
「可愛いー!さっちゃんに履かせてもいい……?」
「いいわよー!じゃー、お出かけしましょうー」
「どこ行きたいかなー?」
「やっぱり、デパートよ!」
「それじゃー、着替えしないとね……」
「着替え、あるの?」
「もちろんよー!」
私は、またバスケットの中から、フレアーな赤いスカートと、白いブラウスを出したの。
「わたし、着替えさせたい……」
アミが、さっちゃんの着替えをしているのを見ていて気が付いたの……
「今日は、ピアノの音が聞こえてこないね……」
私はさっちゃんに話しかけるように言ったのね……
「ピアノ、好きなの……?」
「そうなの! ここで聴いていると、とっても楽しそうなのよ……、誰が弾いているのかな?」
「じゃー、綺麗なお洋服にも着替えたから、今日は音楽会に出かけましょう!」
「嬉しいー、素敵、素敵……」
私は喜んで拍手をしたわ……
それでアミは、さっちゃんを私に渡すと、一人立ち上がって……
「出かけましょうー?」
「どこ行くの……?」
「もちろん、音楽会よ! 三人で音楽会を開きましょう!」
アミはそう言って、手を差し出して、私に立つように促したわ。
私は分からないまま、アミの手を取ったの……
そしたら、アミは私の手を取ったまま急に駆け出して、連れていかれたのが隣の家だったのよ。
それも、靴を履く暇もなく裸足でよ……
それで、何時も聴いていたピアノがアミの演奏だということが分かったのよ。
それから、アミの家のピアノの前で、もう一度訊いたのよ……
「ピアノ、好きなの?」
私は、もじもじしながら言ったのよ。
「うん、でも弾いたことないから……」
「それなら、わたしが教えてあげるっ!」と言って、今まで続いているのよね……




