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第43話 兄弟

中央都市。


第六ゲートを抜けた先。


「…………」


クナト。


キリカ。


レン。


アキラ。


サザメ。


そして。


Genesis第二番隊、第四番隊の精鋭たち。


彼らは一定の距離を保ちながら、人混みに紛れて街を歩いていた。


「…………」


見上げるほど高い建物。


壁面を流れる巨大なホログラム。


空中には立体広告が浮かび。


整備された道路を、無数の車両が音もなく走っていく。


衣服。


宝飾品。


飲食店。


娯楽施設。


彼らの知っている世界とは、あまりにも違う。


「…………」


団員たちは。


平静を装いながらも、

その光景に目を奪われていた。


「これは……」


第四番隊副隊長。


ガザ。


歩道を歩きながら、思わず言葉を漏らす。


「すごいな……」


「…………」


その声に、


前を歩いていたクナトが僅かに振り返った。


「ガザ、お前もか……あまりあちこち見るな」


クナトが。


呆れたように言う。


「目立つだろ……」


「そうは言ってもよ、隊長……」


ガザが。


再び巨大な建物を見上げかける。


「こんな場所、今まで――」


「ガザ」


「……了解だ、隊長」


渋々、ガザが前を向く。


その少し後ろを歩くレンもまた、

周囲を見ていた。


「…………」


綺麗だった。


何もかもが整っている。


道にゴミ一つ落ちていない。


人々の服も。


建物も。


店も。


Genesisとはまるで違う。


ここが。


同じ世界だとは思えないほどに。


「…………」


だが。


レンはすぐに前へ視線を戻した。


今は観光に来たわけではない。


--カイ。


その名前を。


心の中で呟く。


「…………」


先頭を歩いていたアキラが。


突然。


足を止めた。


その隣。


サザメも止まる。


同時に。


Genesisのメンバーの固有回線へ。


アキラの声が届いた。


『ここだ』


「…………」


『――この商業オフィスに入るぞ』


目の前。


ガラス張りの巨大な建物。


一階部分には店舗が並び。


その奥には上層階のオフィスへ向かう人々の姿が見える。


「…………」


アキラがサザメの手を引いた。


二人は手錠で繋がれたまま、


人の流れに紛れて建物へ入る。


「…………」


その後を。


クナト。


キリカ。


レン。


ガザ。


各隊の隊員たちが、

時間をずらしながら続いた。



商業オフィス。


内部。


「…………」


人々の足音。


会話。


ホログラム広告の音声。


その中を、アキラとサザメが歩いていく。


次第に。


人の数が減っていく。


店舗区画を抜け。


オフィス区画へ。


さらに。


その奥。


「…………」


一枚の扉。


《Staff Only》


そう表示されていた。


「ここ」


サザメが小さく呟く。


「…………」


周囲を確認する。


人はいない。


サザメが扉の横にある認証装置へ手をかざした。


――ピッ。


「…………」


一瞬の沈黙。


そして。


――シュン。


扉が開いた。


「…………」


サザメが振り返る。


小さく手招きした。


「…………」


アキラ。


クナト。


キリカ。


レン。


ガザ。


そして。


各隊の隊員たち。


一人ずつ。


素早く扉の向こうへ入っていく。


最後の一人が通過する。


――シュン。


扉が閉じた。


「…………」


そこから先は、表側とはまるで違っていた。


装飾も。


広告も。


ホログラムもない。


無機質な通路。


白い壁。


灰色の床。


最低限の照明。


「こっち」


サザメが先頭を歩く。


「…………」


一行が、その後を追う。


やがて。


通路の突き当たり。


そこに。


大きな金属製の扉があった。


巨大な貨物用エレベーター。


「…………」


サザメが。


操作盤へ手を伸ばす。


――ピッ。


扉が開いた。


「入って」


「…………」


アキラが先に入る。


続いて。


レン。


キリカ。


クナト。


ガザ。


隊員たち。


全員が乗り込んだ。


サザメが。


人数を確認する。


「全員いる?」


「ああ」


アキラが答える。


「じゃあ、閉めるよ」


――シュン。


扉が閉じた。


「…………」


密閉された箱の中。


誰も喋らない。


サザメだけが。


操作盤の前に立っていた。


「…………?」


レンが。


その手元を見る。


サザメの指が、階層ボタンを不規則な順番で押していく。


「……何をしてる?」


クナトが尋ねる。


「......開けてるの」


「…………?」


そして。


最後のボタンを押した。


――ピッ。


「…………」


直後。


点灯していた階層ボタンが。


一斉に消えた。


「…………!」


――ゴウン。


エレベーターが。


動き始める。


下。


「…………」


さらに。


下。


「……地下か」


キリカが呟く。


表示されていた階数が。


消える。


「…………」


現在位置すら。


分からない。


ただ。


エレベーターは。


下へ。


下へ。


ひたすら降りていく。


「…………」


レンが僅かに拳を握った。


カイが近づいている。


そんな気がした。


やがて。


――ゴウン。


小さな振動。


エレベーターが停止した。


「…………」


全員の表情が一瞬で変わる。


先ほどまでの一般人を装った顔ではない。


Genesisの戦闘員。


その顔へ。


「着いたよ」


サザメが言った。


――シュン。


扉が開く。


「…………」


その先、真っ白な廊下。


「…………」


長い。


どこまでも。


どこまでも。


永遠に続いているようにすら見える。


扉もない。


窓もない。


ただ。


白い廊下だけが。


一直線に続いている。


「…………」


サザメが。


その奥を指差した。


「ここをずっと真っ直ぐ行ったところ」


「…………」


そして。


振り返る。


「そこに――」


僅かに笑う。


「カイくんがいるよ」


レンの目が僅かに見開かれた。


「カイ……」


小さく。


その名前が漏れる。


「行くぞ」


キリカが言った。


「ああ」


クナトが答える。


「…………」


一行が。


白い廊下へ足を踏み入れる。


先頭をアキラと手錠で繋がれたサザメが歩く。


その後ろに、一行が続く。


――コツ。


――コツ。


――コツ。


無数の足音が白い廊下に響く。


「…………」


進む。


ただ。


真っ直ぐ。


「…………」


その時だった。


アキラが。


足を止めた。


「…………?」


サザメも。


止まる。


「どうした?」


キリカが尋ねる。


「…………」


アキラは答えない。


その視線は。


前方。


誰もいないはずの廊下へ。


向けられていた。


「…………」


直後。


声がした。


「――本当に来るとはな」


「…………!」


全員が。


一斉に身構えた。


クナトの手が刀へ伸びる。


キリカも腰へ手を伸ばす。


隊員たちが即座に戦闘態勢へ入った。


「誰だ!」


ガザが叫ぶ。


「…………」


誰もいない。


だが。


次の瞬間。


――ジジッ。


目の前の空間が。


歪んだ。


「…………!」


景色が揺らぐ。


白い壁がノイズのように乱れる。


そして、そこから二つの人影がゆっくりと浮かび上がった。


「…………」


一人。


長い黒髪。


細身の男。


その隣。


強く癖のついた。


緑色の髪。


「だから言ったでしょ」


緑髪の男が。


軽い口調で言った。


「絶対、この道を通るって」


「…………」


サザメの表情が僅かに変わった。


「……ナナキ」


「やぁ、サザメ」


ナナキと呼ばれた男が不敵に微笑む。


「やはり生きていたんだね」


「…………」


サザメはナナキを見つめる。


「なんで……」


「…………」


「なんで、ここにいるの……?」


「それは」


ナナキが、首を傾げた。


「こっちのセリフだと思うんだけど」


「…………」


「まあ、いいや」


軽く肩をすくめる。


「その質問に強いて答えるのであれば――」


ナナキがサザメを見る。


「君にこのルートと認証情報をあげたのは、僕だよ?」


「…………」


サザメの瞳が揺れた。


その会話の最中。


「…………」


一人だけ。


別の場所を見ている男がいた。


クナト。


「…………」


その顔が。


酷く強張っていた。


視線の先。


ナナキではない。


その隣。


長い黒髪の男。


「…………」


クナトの手が。


刀の柄を。


強く握る。


「なぜ……」


掠れた声。


「…………」


キリカがクナトを見る。


強敵を前にしても、表情を崩さない男。


そのクナトが、明らかに動揺していた。


「なぜ……」


長い黒髪の男が。


ゆっくりとクナトを見る。


髪の隙間、赤く光る瞳。


「お前が……」


クナトがその名を口にした。


「そこにいる――クキナ」


男は何も答えない。


ただ、冷たい目でクナトを見つめている。


やがて、その口がゆっくりと開いた。


「それはこちらの台詞だ」


一歩。


前へ出る。


「なぜお前が、そこにいる」


「…………」


長い黒髪の間から。


赤い瞳が。


鋭く光った。


「――愚弟」

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