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第41話 別働隊

Genesis。


地下。


牢獄。


拘束を解かれたサザメは、久しぶりに自分の足で立っていた。


その首にはアキラが取り付けた黒い首輪。


そして、その前には。


アキラ。


キリカ。


クナト。


「――以上が作戦の内容だ」


アキラが説明を終える。


「…………」


サザメは黙ったまま聞いていた。


やがて。


「ふぅん……」


首を傾げる。


そして。


薄く笑った。


「いいよ」


「…………」


「私が案内してあげる」


「……本当か?」


アキラが尋ねる。


「うん」


サザメはあっさりと頷いた。


そして。


思い出したように。


「あ」


「…………?」


「それに私、あそこに入る裏道を知ってるよ」


「…………」


三人の表情が変わる。


「裏道だと?」


クナトが不審そうに尋ねた。


「そうだよ」


サザメが答える。


「ママからは、あそこには行くなって言われてたんだけどね」


「…………」


「どうしても、あなたたちのお仲間……」


少し考える。


「カイくんだっけ?」


「…………」


「カイくんに聞きたいことがあって」


サザメは自分の首元にある黒い首輪を指でなぞる。


「ママの言いつけを破って、会いに行ったの」


「…………」


アキラが目を細める。


「でも」


サザメが続ける。


「正面からは入れなくてさ」


「…………」


「だから、ナナっちに相談したんだ」


「ナナっち?」


アキラが僅かに眉をひそめる。


「ナナキだよ」


「……誰なんだ、そいつは」


「うーん……何でも屋さん?」


サザメは首を傾げる。


「よく知らないけど、なんか色々作ってくれるんだ!」


そして、思い出したように付け加える。


「あ、ナナキもナンバーズの一人だよ!」


「……ナンバーズの……何でも屋……?」


「…………?」


その言葉に。


アキラの脳裏へ。


第七物流センターでの出来事が蘇る。


Genesisの通信を遮断した。


あの妨害装置。


「どうかしたの……?」


サザメが心配そうに顔を覗き込む。


「いや……なんでもない」


アキラが答える。


「それで?」


「うん……」


サザメが再び話し始める。


「第一収容所は、ナナキが作ったんだって」


「…………」


「だから、裏口の場所を教えてくれて、認証キーも作ってくれたの」


「…………」


アキラがサザメを見つめる。


そして。


深くため息を吐いた。


「……その話、初耳だぞ」


「聞かれなかったからね?」


悪びれる様子もなく。


サザメが答えた。


「…………」


アキラのこめかみが、僅かに動く。


「お前な……」


「嘘はついてないよ?」


「…………」


アキラは、目の前に浮かぶホログラムへ視線を移した。


そこには、サザメの心拍。


呼吸。


体温。


脳活動。


その他、複数のバイタルデータがリアルタイムで表示されている。


黒い首輪を介して取得された情報。


「…………」


数値に不自然な変化はない。


少なくとも。


今の言葉に虚偽を示す反応は見られなかった。


「……嘘は言ってないようだな」


アキラが呟く。


「アキラがそう言うなら、間違いないのだろう」


キリカが答える。


「…………」


クナトはサザメを睨んだまま低い声で言った。


「俺はまだ、この女のことを信じてねぇ」


「…………」


「だが――」


アキラを見る。


「アキラのことは信じてる」


「…………」


アキラが僅かに目を見開いた。


キリカが口を開く。


「ーー決定だな」


「ああ」


アキラが頷く。


そして。


サザメを見る。


「俺たちは裏道から第一収容所の中に潜入しーーカイを奪還する」


キリカ。


クナト。


二人が頷いた。


「…………」


サザメは何も言わずに、薄く笑っていた。


*


中央都市。


第六ゲート。


「…………」


巨大な門が開かれ。


その下を大勢の人間が行き交っている。


中央都市へ向かう者。


都市から出ていく者。


車両。


荷物。


商人。


様々な人間が。


絶え間なくゲートを通過していた。


挿絵(By みてみん)


その入口。


中央都市へ入るための通路。


両端には。


細長い機械が設置されている。


認証装置。


通過する人間のブレインアーツへ接続し。


内部に記録された認証キーを読み取る。


――ピッ。


一人通過。


――ピッ。


また一人通過。


だが、認証キーを持たない者が通れば。


警報が鳴る。


そして。


周囲に配置された政府兵が即座に対象を拘束する。


「…………」


その人混みの中に、Genesisのメンバーが紛れ込んでいた。全員、小綺麗な正装で身を包んでいる。


第四番隊。


隊長――クナト。


その部下数名。


第二番隊。


隊長――キリカ。


その部下数名。


そしてーーレン。


さらに。


アキラ。


その隣には金髪の少女。


サザメ。


「…………」


誰も。


互いを見ない。


必要以上に固まらない。


一般人に紛れ。


一定の距離を保ちながら、ゲートへ近づいていく。


その時。


全員のブレインアーツへ、アキラから通信が入った。


『全員』


「…………」


『お前らのブレインアーツには、解析した認証キーをインストールしてある』


『だから慌てるな』


「…………」


『そのままゲートを抜けろ』


キリカ。


クナト。


レン。


各隊員。


誰も返事はせず、小さく頷いた。


「…………」


アキラが横を見る。


名切サザメ。


その手首には金属製の手錠。


そして、もう一方。


アキラの手首にも同じ手錠。


一本の鎖が、二人を繋いでいた。


「…………」


アキラがサザメの手を引く。


サザメは何も言わない。


ただ、アキラについていく。


一歩。


また。


一歩。


ゲートが近づく。


「…………」


アキラが僅かに息を呑んだ。


目の前。


一人の男が。


認証装置の間を通る。


――ピッ。


通過。


次。


女。


――ピッ。


通過。


そして、アキラの番。


「…………」


一歩。


踏み出す。


認証装置の間へ。


「…………」


――ピッ。


「…………!」


直後。


アキラの視界。


ブレインアーツ上に。


小さな文字が表示された。


《SUCCESS》


「…………」


認証成功。


アキラはそのまま歩く。


隣。


サザメもゲートを通過した。


――ピッ。


《SUCCESS》


「…………」


問題ない。


二人が中央都市側へ抜ける。


「……ふぅ」


アキラが。


小さく息を吐いた。


「緊張した?」


横からサザメが尋ねる。


「黙って歩け」


「はーい」


「…………」


その後ろ。


クナト。


――ピッ。


《SUCCESS》


第四番隊。


一人。


また一人。


――ピッ。


――ピッ。


問題なく通過していく。


続いてキリカ。


――ピッ。


《SUCCESS》


第二番隊。


そして。


「…………」


レンが。


認証装置の前へ立つ。


ほんの一瞬、足が止まりかける。


「…………」


そのまま。


踏み出した。


――ピッ。


《SUCCESS》


「…………」


レンが静かに息を吐く。


誰一人として政府兵に止められることなく、全員が通過した。


「…………」


アキラが。


振り返らずに歩き出す。


クナトたち。


キリカたち。


レン。


その全員が人混みに紛れながら後へ続く。


アキラの隣には、手錠で繋がれたサザメ。


「…………」


目指す場所は。


一つ。


政府第一収容所。

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