第6話:絆創膏と、夜の独占欲
「……じっとしてろ」
高級マンションのリビング。
蓮さんはソファーに腰掛け、右腕の傷の手当てをしていた。シャツの袖をまくり上げ、慣れた手つきでガーゼを当てていく。
「す、すみません、蓮さん。私のために、そんな大きな怪我を……」
私は申し訳なさから小さくなりながら、救急箱を抱えたまま彼の前に立った。
敵対組織の襲撃を退けたものの、彼の右腕には生々しい擦り傷と切り傷が残っていた。
「気にするな。ただのカスリ傷だ」
蓮さんはぶっきらぼうにそう言って消毒液を塗る。
その表情は相変わらず険しいけれど、どこか優しさが混ざっている気がした。
私は手元にあったキャラクターものの絆創膏をそっと取り出した。涼風組の屋敷にあった、ちょっと可愛らしいものだ。
「……これ、使ってください」
「……は? なんだ、その子供騙しは」
蓮さんは呆れたように眉を寄せたが、私は構わず彼の傷口の横に貼っていく。
強面の若頭の腕に、可愛らしい犬の絵柄の絆創膏。あまりのギャップに、私は思わずクスクスと笑ってしまった。
「笑うな」
「ごめんなさい。でも、少しでも早く治りますようにって思って」
彼はため息をつきながらも、絆創膏が貼られた腕をじっと見つめた。
そして、その手が伸びてきて、私の顎をそっと持ち上げた。至近距離で見つめられる鋭い瞳に、息が止まりそうになる。
「……お嬢」
「はい……」
「今日のは、本当に焦った。もしお前に何かあったら、俺は何をするか分からねぇ」
彼の声は、少しだけ掠れていた。
極道の若頭として、常に命のやり取りをしてきた彼が、私の存在をこれほどまでに大切にしてくれている。その事実が、胸を締め付けるほど嬉しかった。
「私は大丈夫です。蓮さんが守ってくれたから」
「……あぁ、俺が守る。お前が俺の傍にいる限りは、絶対にだ」
蓮さんはそう言うと、私の額にそっと自分の額を預けた。
タバコと甘い香水の匂いが混ざり合う、小さなリビングの特別な空間。
「……これからは、寝室じゃなくて、俺の隣で寝ろ。その方が安心だ」
「えっ……でも……」
「文句は聞かねぇ」
彼はそう言って、いつものように強引に、けれどとても優しく私を抱き寄せた。
二人の距離が完全に縮まった夜、私は心の中で、彼の隣にいることを強く誓った。
第6話・完
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