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第八話 ある恋の物語

洞窟入り口から人目を避けるように森に入る。


「休憩しよう」


道具袋から地図を取り出す。俺達がいた国はディプロン、円状に広がる国。今いる国はギリガ、領土は横にしたひょうたんのように広がっている。ここから北にある国が自由の国ジョモ、その上が魔族が支配する国となる。魔族と人間は昔は争っていたが今は手を取り合い戦うことなく平和に暮らしている。目的地は自由の国の首都であるアクユラ。今後の予定は魔族が人間に牙を向けた原因とされる山賊による魔王の子供達の殺害を阻止すること。まだまだ距離があるがそのメインストーリーはゲーム中盤の話だから時間はたっぷりある。ミリアの件を片付けた後は戦力の強化かな、一緒に戦う仲間も集めながら移動しよう。地図をしまい干し肉を取り出しかじる。


「水を汲んできた」

「ありがとう」


ミリアが木のコップに水を注いでくれる。硬いパンを袋から取り出し水でふやかし食べる。暗くなってきたから今日はここで寝泊まりすることに。すっかりサバイバル生活に慣れてきたな。しかも追われていたからテントはもちろん火すら使えなかった。キャンプすらしたことないのに今では積もった木の葉のベッドで安眠できる、人間覚悟を決めれば何でもできるものだ。朝起きて早朝から行動、森の中を移動し街の近くまで来た。この街ではメインストーリーが起きる。ミリアの話と同じで勝手に進行していく。内容は賊となった元貴族の男が不幸な結婚を迫られている貴族の女性をさらうという内容だ。放っておいてもイベントは進むが貴族の女性に用がある、ということで今回も直接介入する。さてと、ミリアを連れていきたいが呪いの剣を装備していて顔を知っている人がいるかもしれないからね、悪いが森にいてもらう。


「行ってくる」

「気を付けて」


街に入っていく。騎士団の気配はないな、よかった。宿を取りギルドへ。


「おい、聞いたか」

「義賊のレジオが貴族のイスターをさらうって話か」


ギルド内はその話で持ち切り。丁度イベントが始まっていたか。レジオは元貴族で義賊として街で活躍している。彼には悲しい過去がある。昔お人よしの親が騙され二人は殺され家を取り潰すことになってしまった。冒険者としての力はあったのだが悪い意味で顔が売れ普通に働くことができなかったレジオは賊に身を落とす。主な狙いは悪人達。あこぎに稼ぐ商人や貴族から奪いその元の持ち主に返すなど街の住人からの人気は高い。彼にはこだわりがあり盗みの前に必ず予告状を送るのだそう。時間まで指定するというからかなりの自信があるのだろう。


「イスターは災難ばかりだな」

「悪徳貴族のあの男と結婚かと思えば義賊とはいえ盗賊に狙われるとは」


イスターは貴族の娘。彼女の結婚相手がそれはそれは酷い人物で、どんなものでも力で手に入れてきたという悪徳貴族の男。イスターの親も断っていたのだが男の力に逆らうことができずしぶしぶ結婚を許すことに。彼はレジオの親をはめた張本人。実は二人は逢引きをしており彼女をさらって二人一緒に逃げようということを話し合っていた。彼女の親はレジオの正体を知っていて二人が一緒になることを願っている。今回は大仕事、これを機に盗賊の仕事を辞めるのではと噂されている。


「その前に一仕事するんだっけ」

「一仕事どころか今日は四つ盗みに入るって話だ」

「頑張るねぇ」


すでに二つの盗みをして、残りは夜と深夜に仕事をするとか。時間はそろそろ夕方、お仕事の時間だな。こちらも準備をしておこう。替えの服が必要だな。


「くそっ、ドジッた」


街から出て山間部を足を引きずりながら逃げるレジオ。体には数本矢が刺さり脚や背中を斬られ大怪我をしている。ポーションが尽き回復もできない。


「見つけたぞ!」


もはや走って逃げることはできない。この後さらし者になるくらいならいっそ。彼は全てを諦め崖からその身を投げ出す。


「飛び降りたぞ!」


下には魔物、待ち構えていたかのように口を開け飛び込んできたレジオを丸のみにする。


「魔物に食われちまったか。思えば哀れな奴だったな」


追ってきていた街の衛兵たちは手を合わせるとこの場から去っていった。


(俺の命はここまでか)


彼はメインストーリー上で死んでしまう。貴族の女性は悲しみの中一人で逃げ出し自由の国に行き一人生きていくというお話だ。知ってしまっているからな、放っておくことはできなかった。


「な、何で魔物の腹の中に人間が!?」

「これはPT宝石だ。落とさないよう持ってくれ」


ポーションを多数振りかけるも限界だったのだろう、彼は気絶してしまう。そしてエスケープで魔物の腹の中から脱出。安全な場所まで移動する。参ったな、レジオに行ってもらおうと思っていたが起きそうにない。ええい、乗り掛かった舟だ、俺がやろう。ミリアがいる森へ行く。


「彼は?」

「義賊のレジオ、彼を頼む」

「リオはどうする?」

「彼の代わりに女の子をさらってくる」

「おいおい?」


ミリアに説明しレジオを預け彼の服を借りて街に戻る。今は深夜、すでに予告した時刻は過ぎている。そしてすでにレジオは魔物に食われ死んだという情報が流れていた。好都合だ、俺はレジオではない、敵が少ない方がいい。彼女が住んでいる城へ向かう。その情報が流れているせいか護衛はほとんどいなかったから簡単に侵入できてしまった。彼女の部屋は知っている、警戒しながら部屋へ向かう。


「う、ううっ……」


泣き声が聞こえる、イスターか。彼女の耳にも悲報が届いたんだな、彼が死んだんだ、それは悲しいだろう。そこへ悪徳貴族の男が入って来た。


「アイツは死んだんだ、諦めて俺のものになれ!」


彼女を押し倒し乱暴しようとする男。放っておいても振り払って逃げていくが、ここは俺の出番だ。彼女の部屋の扉を豪快に蹴破る。こちらを見る二人、そこには血を流し大けがを負ったレジオが立っていた。


「ひ、ひっぃ~、化けて出たか、許してくれ、この通りだ!」


男はバックジャンプ土下座をかます。話しかけようとするとまた後ろに飛ぶ。これを繰り返して行くうちに飛んだ際に男は窓から飛び出していった。おいおい、しっかりセリフを考えておいたのに。まあいいか。


「あなたは?」


彼女はレジオではないことに感づいたようだ。顔を隠していたんだがわかる人にはわかるんだな。


「彼はまだ生きている」

「本当に!?」


再度泣き出す彼女、今度は嬉し涙。その後は彼女を連れ屋敷から出ていく。後にこの姿を何人かに見られレジオが彼女を連れて行ってしまったと悲しむ者もいたとか。彼女を連れ街を出てそのままミリアの元へ。


「イスター!」

「レジオ!」


抱き合う二人。数々の不幸に見舞われたが彼らは結ばれることができた。しばらく二人きりにしてあげようとミリアを連れその場を離れる。

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