第七話 脱出
ちっ、ここまでか。どうやら情報がすでに回っているようだな。脱ぎながらスキルを使い魔法を唱える。
「コンフュージョン!」
同士討ちを始める騎士たち。ローブを着なおし、今後の行動を考えていると前方に一騎こちらの様子を伺っていた騎士がいた。彼はこちらには来ずにそのまま北へ。まずい、騎士団を呼ばれたな。難は逃れたがこのまま森に向かうのは難しそうだ。こうなったら作戦を変更するしかない。
「北東にある騎士の洞窟に向かう」
「しかしあの洞窟は、いやお前に任せよう」
この場から走って洞窟に向かう。ふうふう、リアルだったら途中で力尽きて殺されていたな。冒険者で良かったぜ。追いつかれる前に何とか洞窟前までたどり着いた。そして騎馬隊の地面を蹴る音が聞こえてくる。
「いたぞ!」
「洞窟に逃げるぞ」
俺達二人は騎士の洞窟へと入っていく。
「はっはっは、間抜けな奴らだ。入り口が一つしかない洞窟に入っていくなんて」
「必死だったんだろうな」
「しかもここは騎士がよく訓練に使う洞窟だ。奴らはもう詰みだな」
洞窟の内部は暗い。このゲームには付近を照らすことができる発光石という便利な明かりアイテムがある。彼女が発光石を準備しようとするが手で押さえて止める。光を漏らしていたらすぐに居場所がばれてしまうからだ。
「しかしこの暗闇の中どうするんだ」
「任せてくれ」
ゲームはやりつくしている、もちろんこの洞窟の地形は把握済み。眼をつむっていても移動可能だ。そのまま彼女の手を取り歩き出した。
「この洞窟は知り尽くしている、しっかり手を握っていてくれ」
「う、うん」
彼女がギュッと俺の手を握る力を強める。騎士の洞窟は地下四階層、かなり広いためすぐに見つけるのは難しいがここにいてはいつかは発見されてしまうだろう。一気に進み地下四階の洞窟の奥地にまで到達。ここはいくつか小部屋があり時間稼ぎにはちょうどいい。遠くから声が聞こえる、先ほどの騎士達が合流して洞窟の捜索に協力しだしたころかな。こちらが動くのはもう少し洞窟奥に引き込んでから、見つかる寸前まで粘る。
「各部屋を調べるぞ」
しばらくして騎士たちの声が近くに聞こえだす。明かりが洞窟内を走る。俺の部屋から彼らが照らす明かりが見えた、そろそろだな。
「エスケープ!」
原作にはないダンジョンや建物から脱出できる魔法。二人は洞窟から脱出し入り口に移動した。彼らはその存在を知らないからまだ洞窟内をうろついていると考えているだろう。油断していた見張りを倒し、馬達を解き放ってやった。これだけだと心もとないな、もう少し時間稼ぎが必要か。
「エアブレイク!」
洞窟入り口上部に数発風の魔法をぶつけて落石を発生させ、トドメにメタルゲイザーを入り口に発射、こうして入り口の封鎖に成功。これで洞窟内にいる騎士に狙われる心配はなくなった。急いで北にある大森林に向かう。
「見えてきた!」
そのまま森に入っていく。これで一安心だな。
「まさか生き残ることができるとは」
安堵するミリア。しかしまだまだ安心はできない。この国にいる限り騎士団が執拗に追いかけてくるだろう。今後は国から出て隣国に逃げよう。森林内を移動し寝泊まりを繰り返しながら北の関所へ向かう。関所のある街が見えてきたが、どうにも騒がしい。
「出国禁止だって!?」
「そんな横暴な」
どうやら騎士団が先回りして国から出られないよう封鎖をしたようだ。参ったな、そこまでするか。予定では一旦彼女を一人置いて俺一人で街を通過、隣国の街まで移動した後、街にワープする魔法、テレポートを使ってここに戻り彼女と合流後隣国の街にワープ、という手を考えていた。超便利な魔法ではあるがテレポートは一度行ったことがある場所にしか移動できない。この魔法も原作にはないからうまくいくと考えていたが甘かったか。この方法はあきらめ他のやり方を探す。関所はもう一つあるが同じ状況だろう。ここから北西側に洞窟があったな……そうだ、その手があったか!
「私が死ねば済む話だ、無理なようならお前は私から離れろ」
「死ぬ? そうだよ、それが一番良い手じゃないか!」
「それはどういう」
同時に良い手を二つ思いつく。ふむ、この案なら逃げきれるかもしれない。俺達はまた森に身を潜め準備をしながら北西の洞窟に向かう。すでに洞窟付近にも騎士団の手が回っている。呼びに行く必要がないから逆に都合がいい。洞窟入り口付近で不用意に見つかり軽く交戦、ミリアが肩に傷を負い血を出しながら洞窟内に逃げ込む形に。追ってくる騎士団、逃げる俺達。
「こっちだ!」
別れ道を左側に進む。後ろに騎士団の気配、追いつかれそうな距離まで来ている。
「どっちにいった!?」
「隊長、右側に」
「身を隠すための布切れにあの女の血か、それが右奥にまで続いている」
「それでは」
「魔物に殺されたな」
この洞窟にはかなり強い魔物が住んでいる。近づかなければ手を出してこないのでそういった意味では安全な魔物。そして魔物のテリトリー内に彼女の血痕が残っていた。ミリアは魔物に殺されたと判断したわけだ。もちろん死んでいないけどね。わざと交戦して怪我したふりをし血糊を撒いただけ。魔物が強いってのもまたいい、簡単には確認ができないからな。俺達は洞窟の奥に到着。念のため左側を調べることもするだろう、このままでは見つかる。
「これからどうする?」
「その壁に張り付いてくれ」
明かりをつけて彼女を壁側に誘導、彼女は壁に背を合わせる。そこへ近づいていく俺。彼女の吐息が俺の顔に当たるほどの距離。
「ちょっ、こんなところで……それにそういうものは将来を」
彼女は目をつむる。
「エスケープ!」
ここで魔法を発動、洞窟の入り口まで移動した。しかし先ほどの入り口とは違う場所。この洞窟は北側と南側に入り口がありつなげようとしたが失敗した洞窟。魔法は入り口が多数ある場合は近い方の入り口を選ぶ性質がある。南の洞窟奥地に北の入り口に近い場所があってこちらに移動してきたということ。ただ、かなり狭い範囲だったから彼女を壁に押し付けてぎゅうぎゅう詰めで魔法を唱えたわけだ。ミリアは眼をつむっている、声をかけここから移動する。




