第五話 敵襲
翌日、ギルドに行くと依頼掲示板の前に多くの冒険者達が集まっていた。掲示板には緊急の文字、赤い紙の依頼紙が張られていた。
「魔物が大量発生か」
「報酬うっま、狩らない手はないな」
序盤のみ発生する期間限定のサブストーリー魔物大量発生。サブなので無視してもいいが非常においしいイベントなのでもちろん狩る。注意すべき点は大量に出現するということ。本来なら一人向けではない。狙いはロックイーター、物理が効きにくいアーマービートルの上位種の魔物、見た目が似ている色違いの敵。奴らは通常群れで出現することはなく一匹ずつ戦うことになるからそこまでおいしい相手ではない。しかしこのイベントなら複数のロックイーターと戦うことができる。そう、強くなるためにこのイベントを待っていた。依頼を受け狩場に向かう。人気のない魔物だから予想通り俺一人、こいつは狩りたい放題だな。もちろん勢い勇んで囲まれで死亡は避けたい、はやる気持ちを押さえ慎重に魔物を捜索する。
「グルゥッ」
いた、ロックイーター四体。かなりの体力で、アーマービートルを倒した時のように範囲化した魔法だけでは倒し切ることはできない。そこで合体魔法、スペルフュージョンの出番。このスキルは好きな魔法を結合し放つことができる大技。ルールがあり、単体と範囲は合体できない。今回合体させる魔法は多くの敵に炎を放射するフレイムバーンと地面を貫いて尖鋭な金属がいくつも湧き出すメタルゲイザー。
「スペルフージョン!」
スキルを使うと前方左右に光の玉が二つ出現。左右の玉に手をかざし二つの魔法を唱える。溶け合うように魔法が融合し敵に向かって発射される。
「フレイムゲイザー!」
炎を帯びた金属が地中から飛び出し敵を貫きながら燃やし尽くす。
「アグルァーー!!」
魔物たちは断末魔をあげながら絶命、一気に倒して大量の経験値を入手した。この調子で狩り続けるとしよう。こうして三日間戦闘し続けレベルが21まで上がりたくさんのスキルを覚え、魔物を倒したことによる報酬でお金もかなり稼いだ。大量発生は終了しおいしかったイベントは終わり、赤い紙がなくなりいつものギルドに戻る。次はメインストーリー、朝からギルドに居座る。
「盗賊共が暗躍しているらしい」
「気を付けなくてはな」
いよいよ来たか、メインストーリー盗賊の活性化。盗賊たちの狙いはミリア、このイベント発生の数日後に彼女は潜伏先の家で殺されてしまう。裏で糸を引いているのはやはり騎士団、彼女は彼らに見つかり殺されたというわけだ。今の彼女は呪いのため弱い、盗賊でも簡単に殺すことが可能。通常は他のイベント進行後に彼女が殺されるイベントが発生する。イベントを進めなくても数日経過するとイベントが発生してしまう。ランダム性がありいつ襲われるかはわからないが確実に発生する。そうはさせない、待ち伏せて彼女の死を止めてみせる。これから対人戦の準備を整えて彼女を見張ることにする。追加で頭、足、腕の黒金のシリーズ装備を買い揃え、水分と食料を購入して彼女が住んでいる家へと向かう。あまり近いと見つかってしまう。避けたいのはストーリーが変わってしまうこと。もしここで直接護衛してしまうと、盗賊はやめもっと強大な力で叩いてくるのは目に見えている。こうなると厄介だ。そして絶望的なことに現状で騎士団は彼女の居場所をすでに知っていて囲まれ監視されている。ゲームではこのイベント後、明らかに張っていると思われる騎士や冒険者を目撃することができる。
(だが彼女を救う方法はゼロではない)
騎士団は盗賊を使い彼女を亡き者にしようと企む。ここに一瞬の油断が生まれ逃げ出すチャンスが発生する。すぐに逃げてはいけない、決行日までは警戒を強めているだろう、掴まり殺される。どちらにせよ逃げることにはなるが油断してもらうということが大事。逃走プランはすでに俺の頭の中に入っている。もし助けるとしたらどう動くかとゲーム内で逃走経路を作っていた、まさか役に立つ日が来るとは世の中わからないものだ。このために鍛え準備してきた、きっと助けてみせるさ。
「よっと」
騎士団の眼を避けて森を移動し大木に登り家が一望できる場所へ。枝や葉が俺の体を隠してくれているからみつかることはないだろう。こうして盗賊達がやってくるのを待つ。三日後の深夜、家に近づく複数の黒い影を発見。盗賊だ、現れたな。かじっていた干し肉を口に放り込み、音を立てないよう慎重に彼らの後を追う、全部で10人か。彼らは家に着くとそれぞれ別れ配置につく。彼女がいる場所は恐らく二階の寝室。家の内部はゲームをした時に見て回れるので覚えている。三人の盗賊が二階に上ろうとしている。俺もまじるか、二人が昇った後三人目の後ろに素早く移動する。魔法で眠らせるのだがそのままだと絶対に当たるわけではないため失敗する可能性がある。そこでスキル命中上昇を使う。これで高確率で眠るようになる。
(スリープ)
「ぐぅ」
すぐに着ている物を奪い後を追って二階のテラスに。扉の横に張り付く俺達三人。一人の盗賊が扉の前へ。
「突っ込むぞ!」
大きな声が合図、配置についた盗賊たちが一気に中へ入っていく。テラス組も扉を突き破り侵入。しかしミリアが剣を構えて待ち構えていた。
「来たか」
悲壮感のある声、かまわず突っ込む盗賊。
「くっ!」
相手が剣士だというのに防御もせずにがむしゃらに突っ込んでいく。ダメージ1というのを知っている動きだな。一人がナイフをはじかれたが斬られながら強引に近づき抱きついて動きを止める。後続の盗賊が彼女の首元にナイフを突き刺そうとする。
「死ねっ!」
「スリープ」
「すやぁ」
「なっ!?」
もう一人もすぐ寝かせて三人の制圧に成功。驚き固まっているミリア。
(しっ、静かに)
フードを上げ口を巻いた布を取る。
(リオ! こんなところで何をしている)
(眠れなくて散歩していたらミリアさんの家に向かう奴らを見つけまして。おっと今は説明している場合ではない、盗賊達を片付けましょう、俺に考えがあります。PTを組みましょう、それから補助をするので居間まで移動してください。)
(わかった)
PTになることで彼女に魔法を撃っても仲間と認識し当たらなくなる。道具袋からアイテムを取り出し渡す。PT宝石、握り拳のようなデザインの小さな宝石。これをもっているだけでPTを組むことができる、最大五人まで。扉を開け階段を下りる、途中鉢合わせた盗賊一人を眠らせる。
「逃した! 居間にいったぞ!」
俺が声を出し盗賊達を集める。ミリアを居間の奥で待機させ、俺は近くに隠れる。そして奴らが続々とこちらに集結していく。
「いたぞ、殺せ!」
一人が攻撃、三人が彼女に接近していく。ここだな。
「全体化スリープ!」
一気に三人が眠る、起きている盗賊はすぐさま杖で頭を殴り物理で眠らせる。最後に入って来た盗賊を命中上昇スリープで眠らせ制圧完了。
「ありがとう、正直死を覚悟していたよ」
「よかった、あなたを助けたかったんだ」
おっと本音が出てしまった。原作でもリメイクでも死ぬ彼女を助けられたのはとてもうれしい。ストーリーでは自室で殺されている。すでに変化が出てきている。これならば彼女を助け出し人類滅亡のバッドエンドも回避できるかも?
「リオは逃げろ、これ以上巻き込めない」
彼女が簡潔に自分に起きたことを話す。もちろんこのまま彼女を助けていくつもりだ。
「顔を見られたかも、あなたのそばにいた方が安全だ」
「……しかたがないか」
布で覆ってフードもかぶっていたからまずばれてはいないが彼女のそばにいるためにこの言葉で説得。まだこれから、いや、始まったばかりだ。彼女が死ぬまでは騎士団も力を緩めることはないだろう。必ず彼女と共に生き延びてみせる。




