細道へ
俺は松尾と百代と三人で大通りの傍に立ち、小道を見つめる。
この先が自分の深層心理の世界だと思うと、踏み込むのは少し怖い。
「何が魂の重しになっているのか分からないけど、
まず、君自身と向き合い、心を軽くしてみてはどうだ?」
その答えが、俺の内面世界であるこの小道にあるのでは――と理事長は言った。
気が重いとかの“重い”が、そのまま魂の重みに関係するのか?
「本当に迷って困ったら、俺を呼んで! 駆けつけるから」
松尾は明るくそう言ってくれる。
「なら、松尾と一緒に入ったらだめなの?」
少し気弱な言葉が出てしまう。
松尾は眉を寄せ、困った顔をする。
「そうすると、単なる近道になってしまうから」
俺は大きく深呼吸をして、覚悟を決める。
そして二人に向き直る。
「じゃ、行ってみるね」
俺は手を上げ、あえて笑顔を作る。
「行ってらっしゃい。先にアパートで待ってるわ」
百代はニヤリとした笑みを浮かべ、そう返してくる。
「気をつけて!」
松尾はいつものように穏やかに笑い、送り出してくれた。
森に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
さっきまで聞こえていたはずの車の音が、嘘みたいに消えている。
ピッ、ピッ、ピッ――
静寂の中で、その規則正しい電子音だけが、やけに鮮明に響く。
これは……俺の心臓のリズム。
そう思うと、不思議と少しだけ心強かった。
ゆっくりと振り返る。
松尾も百代も、いない。
大通りの気配すらなく、そこにはただ森が広がっているだけだった。
……行くしかない、か。
小さく息を吐き、視線を前に戻す。
道はある。
俺の立っている場所から、V字に二手に分かれている。
どちらに行けばいいのか。
――いや、“どちらを選ぶのか”か。
右の道は、明るい。
けれど、やけに細く曲がっており、奥が見えない。
左の道は、少し暗い。
木々の影が重なって、奥へ行くほど視界が沈んでいく。
その奥から、かすかに人の声が聞こえる。
誰かが、何かを話している?
いや……笑っているのか? 泣いている?
その声に引き寄せられるように、そちらへ足を進めた。




