↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の化身となりました  作者: レモングラス
26/35

25話

ゆっくりと瞼を開ければ穏やかに流れる雲が映った。頬を撫でる風は温かい。

身体を起こせばそこはこの世界に来てからはいつも夢見ているあの花畑だった。


「起きた?」

「リューン様…。」


振り返るとリューン様がこちらに向かってゆっくりと歩いてきていた。

そして私の隣に座ると私の頭に手を置く。私は抵抗もせずにその手を受け入れてそっと彼女の膝の上に頭を倒した。

優しく撫でてくれる手つきにうっとりする。


「ごめんリューン様。」

「あら、どうして謝るの?」

「だって私、しくじったんじゃないの?」

「いいえ、よくやってくれたわ。イグナシオはもうすっかり元気よ。あなたもその目で見たんじゃないの?」

「あぁ…そういえば…。かっこよかったなぁ。」


ぼんやりとその姿を頭に蘇らせる。真っ赤な炎の鬣は本当に格好良かった。

昔ハマってたゲームの使い魔であるモンスターにも炎の鬣を持つ馬みたいなのがいたけど、まさかリアルにこの目で見ることができるなんてちょっとラッキーだ。

それにあの鬣とは相反する真っ白な美しい翼。あのすごく柔らかそうでフワフワな翼に一度で良いから顔を埋めてみたい。

ヴァイスやシュヴァイツとはまた違った心地よさがありそうだ。

そんなことを考えていたらその意識を読み取っていたらしいリューン様がクスクスと笑っている。


「あなたなら頼めばきっと触らせてくれるわよ?」

「だったら是非ともお願いしたいけど、現実での私がどうなっていることか…。」


私は深い溜息を吐いた。

勝手に城に入って勝手に神聖な契約の場に足を踏み入れて、そして知らなかったとはいえ王様に銃口を向けた。しかも9本。

最後にイグナシオが私を庇ってくれたけど、イグナシオを治したことを差し引いても王様に銃口を向けたことは本当に本当にまずいだろう。

これは現実で目覚めたときに牢屋に転がされていたとしても文句は言えない。まぁ、私にも使命があるので抜け出しますがねその時は。


「まぁ、今は難しいことは考えないでここで力をたくわえなさい。かなり消耗していたから。」

「うん、ありがとう。」

「お礼を言われるようなことはしてないわ。本当によく頑張ったわね。」

「そんなこと言って私がイグナシオ治してるときに一緒に手伝ってくれてたでしょ?」

「あら、バレてたのね。」


ちょっとおかしいとは思っていた。あれほど繊細で難しいと言われていたのに割とすんなりイグナシオと意識を同調できたことだ。

元々私は器用ではないうえに、新堂の扉にも力を使っていたからあれほど上手くやれるなんておかしいと思っていたのだ。

ふと私の頭を撫でていたリューン様の手が私の左肩に宛がわれる。どうしたのかと思って見上げると悲痛な顔をしたリューン様と目があった。


「ごめんなさい怪我させちゃって。痛かったでしょう?」

「ん、大丈夫。もう痛くないし。」

「ここは夢の中だから痛くないのは当然よ。」

「じゃあ夢から覚めたら痛いの?」

「傷は塞いでおいたけどかなり奥まで刺さってたから少し痛いかもしれないわね。」

「そっか。」


傷が塞がっているというならなんの問題もない。だって私が怪我をしたときに一番嫌なのはお風呂に入って傷口にお湯がかかって痛いことだし。

それにしてもと思い返す。あの私の肩に突き刺さった矢のようなものは一体何だったのだろう。

ヴァイスとシュヴァイツが反応できない速さで私の肩に突き刺さったのだ。それに痺れの効果付きなんてもしかして魔法の一種だったり?

と、そこまで考えて私はそれを放棄した。どうせ目が覚めれば分かると思うし今はのんびりリューン様との時間を満喫したい。

私は日本に居た頃持っていたお気に入りのゲームをバッと出して有意義な夢の時間を過ごした。


そんな素敵な夢の時間にも終わりは必ずやってくる。

まだ夢を見ていたいとリューン様の腰にしがみついてごねていた私だが、リューン様にいってらっしゃいと送り出されて私は重い瞼をそっと開ける。

しかしすぐに日の光による眩しさに目を閉じた。腕をついて身体を起こすとまだ視界がはっきりしていなかったが、だんだん鮮明になってくる。

そこは牢屋じゃなかった。まぁ日の光が入ってきてる時点で牢屋なわけがないんだけど私はホッと胸をなで下ろした。

私が日本で住んでいた家のリビング2つ分はありそうな大きな部屋だ。ベッドなんか私の使っていた4倍くらいデカイし布団の質も全然違う。

そこかしこに高級そうな調度品が並べられた豪華な部屋になんだか落ち着かなくなってきた 。この部屋を日本円で換算したらきっととんでもないに違いない。

確か色んな物を鑑定して値段をはじき出してくれるテレビ番組があったけど、例えばあの番組にあの金の壺を出したら話題物だな…と思ったその時だった。

コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえてくる。誰かが来た!と身を固くしていたけど聞こえてきた声は既に知っている声だった。


「起きているか…?」

「…エルヴィンさん?」


ドア越しに聞こえてきたのはエルヴィンさんの心地よい低い声だった。固くしていた身体が弛緩する。

「どうぞ。」と寝起きの掠れた声で返事をすると、カチャリと部屋のドアが開かれた。

あの緑の広場で会ったときと同じ鎧を纏っていない軍服姿のエルヴィンさんがスッと部屋に入ってくる。

まだ若干ボーッとする頭を必死に支えながらエルヴィンさんがこちらに来るのを待っていたが、彼はなぜか私から少し離れたところで止まっていた。

もしかして彼に嫌われたのかと思い少ししょんぼりしていると遠慮がちに声をかけられる。


「肩ヒモが垂れている…。」

「ぇ…あっ。」


視線を逸らしながらエルヴィンさんが私の肩辺りを指さすので視線で追ってみれば、白いレースの大きめの肩ヒモが直角に垂れていた。

ここで私は自分が白いワンピースのようなものを着ていることに気づく。鎖骨は丸見えだし下手したら胸元だって見えてしまうかもしれないくらい露出が多い。もちろん肩から指先まで私の病的に真っ白な肌は丸出し。スカートの裾は丁度膝上くらいだろうか。

この世界もまだ冬だと思うけど、どうしてこんなに薄着なんだろう。でも不思議と寒くなかった。

私は肩ヒモを直してベッドの上の毛布を引っ張って上から羽織った。


「もう大丈夫です。」

「あ、あぁ。」


歯切れ悪くエルヴィンさんが返事をする。みっともないところを見せてしまって本当に申し訳ない。

エルヴィンさんは手近にあった椅子を引っ張ってベッドのすぐ横に座ってくれる。私もベッドの上に広げていた足を下ろしてベッドに座る形になった。


「寝ぐせひどいぞ。」

「あぁ、ありがとうございます。」


エルヴィンさんの大きな手が私の髪を優しくすいていく。撫でるのとはまた違うけど気持ちいいことに変わりはなく、じわじわと睡魔が襲ってくる。

しかしここで寝てしまうわけにはいかない。今の私の現状を聞いておかないと今後の方針を決められなくてそれは困ってしまう。

重くなる瞼を必死に支えているとまた部屋の扉がノックされた。

この間初めて感想を頂きまして嬉しかったです。

はい、それだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。