19話
次の更新は少し遅れます。
バルドさんに見送られて私たちはギルドへと向かった。まぁすぐ向かいにあるんですけどね、ギルド。
ギルドの中は数人の冒険者さんがいた。固まってご飯を食べてる辺りきっとチームなんだろう。
私とグースさんは受付へと向かった。受付には可愛らしい20代前半くらいの女の人がいて私たちに気づくと素敵なスマイルをくれる。
「ようこそギルドへ!本日はどういったご用ですか?」
「あぁ、この子のギルドカードを発行してもらいに来たんだ。」
「かしこまりました。ではこちらの用紙にお名前と使用武器を書いてください。」
お姉さんに紙とボールペンを渡されたので私は早速書き始めた。
名前は「レナ」。この世界では上流階級の人しか苗字が無いらしいので書かない。武器は「短剣」と。
書き終わって顔を上げると受付のお姉さんが驚いたような顔をして私の書いた紙を見ている。なんだなんだ。
「歳の割には随分と整った綺麗な字を書くんですね~。私より綺麗かも…。」
「はぁ…ありがとうございます。」
「では、カードを作成してきますので少々お待ちください。」
お姉さんは紙を持ってパタパタと奥へ消えていく。私はグースさんを見上げて聞いた。
「グースさんは私が何歳に見えますか?」
「ん?そうだなぁ…。」
「正直に答えてください。」
「14歳くらいか?」
「…。」
どうせそんなことだろうとは思っていたけど、実際に言葉にして言われると心にグサリと突き刺さる。
そもそもこの世界の人たちはみんな発育が良すぎるんだ。男性はみんな高身長でガッシリしてるし女性もこれまた高身長の人が多くてボンキュボンだ。
さっきの受付のお姉さんだって優に160cmはあったし胸だってたぶん…C以上かな?
そんな人たちの間に挟まっている153cmの私はチビ扱いだ。日本じゃ平均よりちょっと低いくらいで周りもそれくらいの女子ばっかだったのになぁ。
「あれ、ハズレてたのか?」
「ハズレです。」
「そっか。じゃあレナちゃんてホントは何歳なんだよ。」
「言ってもいいですけど、驚きませんか?」
「そんなたかが年齢聞いただけで驚くかよ。で、何歳なんだ?」
「つい数日前に18歳になりました。」
「マジかよ!?!?!?」
めちゃくちゃ驚いているグースさん。ふと視線を感じて振り返ると食事中の冒険者さんたちも驚愕の目でこちらを見ていた。
そんなに私の見た目は子供っぽいのか。冒険者さんたちは私の視線にハッと気づくと申し訳なさそうに視線を逸らす。
ハァと溜息をつきかけたときにある物が私の視界に入った。ピアノだ。
私はグースさんの服の裾をクイクイッと引っ張って尋ねる。
「グースさん。アレ、ピアノですよね?」
「そうだけど、あのピアノがどうかしたのか?」
「弾きたい…。」
「レナちゃんはピアノが弾けんのか!?」
驚くグースさんを横に私の視線はすっかりピアノに釘付けだった。
日本に居た頃は毎日毎日飽きずにピアノを弾いていた。自分で作った曲も有名なアーティストが歌っていた曲もクラシックもたくさん。
ピアノを弾いて自分の世界に籠もるのが大好きだった。特に弾き語りが好きだけど歌にはあまり自身がないからよく清花に歌わせていた。
清花はとんでもなく歌が上手い。そんな清花と一緒に歌っていた私もみんなから上手い上手いと褒められてたけど所詮清花の足元に及びそうで及ばない程度だ。
そんな風に私がピアノに目を輝かせていると受付から話を聞いていたのか、カードを作成に行った人とは別のお姉さんが笑顔で話しかけてくる。
「どうぞご自由に弾いてください。誰も弾きませんけど調整だけはちゃんとしてあるので問題はないはずですよ。」
「ほ、ホントですか!?」
「はい。久しぶりに誰かの生演奏が聴けるなんて今日は素敵な1日になりそうです。」
そこまで期待してもらっても困る。私が頭をブンブン振っているとどこからかパチパチと拍手が。
食事中だった冒険者さんたちが私に期待の眼差しで拍手を送っていたのだ。さっきまで私に対して気まずそうにしていたのはどこへやら。
誰かに注目されているというこの状況はとんでもなく恥ずかしかったけど、私は深呼吸をしてピアノへ向かい合った。
つい勢いでお願いしてしまったので弾く曲が決まってなかった。
私はグルリとギルド内を見回す。どうやらここでは食事を頼むこともできるようで、まるでファミレスを連想させる。
ファミレスのような飲食店でかかっている曲と言えばジャズか。
~♪
私の指が鍵盤の上を踊るように走っていく。曲は「カレハ」というジャス曲だ。
ジャズをピアノで弾くのははっきり言って難しい。テンポを正確に取らなくてはいけない他にも高度な技術を必要とする。
最初のうちは中々自分の思うようにいかず、ピアノ教室の先生に「無理です。」と言ったこともあった。
それでも先生は「将来あたしとバーに飲みに行くんでしょ!?その時にあなたのピアノが!!ジャズピアノが聞きたいのおおおお!!」と私のお尻を叩き、1年以上に及ぶ特訓が続いた。
お陰様でジャズを楽しくピアノで弾くことができるようになったけれど、先生とバーに飲みに行く約束は叶えられそうにない。
そもそもそんな約束した覚えがないんだけどね。だぶん先生が勝手に言ってた だけだろう。
あの人にはそろそろ良い彼氏さん見つけて結婚して欲しいな。
~♪
曲の最後にリタルダント、そしてフェルマータ。鍵盤からゆっくりと指を引き離して顔を上げる。
するとパチパチパチと後ろから拍手が聞こえてきた。振り返ればギルド内にいた人全員が(ほんの数人だけど)興奮したような顔で手を叩いている。
私はピアノ発表会の時のように椅子からおりてお辞儀をした。
その後は少し大変だった。冒険者さんたちがワラワラと私の前に集まって「すごい!」「素敵!」と連呼してくれた。
そしてしまいにゃ「アンコール!アンコール!」と両手を叩く始末。ノリノリだな!おい!!
結局私は冒険者さんたちや受付のお姉さんの気が済むまでピアノを演奏した。
まぁ、私自身も楽しかったので良しとしようか。
やっと発行されたカードを受け取って私はギルドを出た。
良い演奏を聴かせてくれたお礼と言って冒険者さんたちがくれた物を抱えてグースさんと帰路につく。
ほとんどがお菓子みたいな食べるものなんだけど、1つだけ不思議なものがあった。
それは中に薄緑色の液体が詰め込まれているビンだった。まさかソーダな訳ないよね?
「グースさん、これなんですか?」
「ん?あーそれは魔力を高める薬だな。魔獣から取れる魔石を加工して液状にしたものだ。」
「う、うげぇ…。」
「それ結構貴重で中々手に入らない代物だぜ。あの冒険者たちはかなり腕の立つ連中なんだろうな。」
私は眉を顰めながらビンを揺らす。中の液体は少しドロッとしていて正直に言うと気持ち悪い以外の何でもない。
隣でグースさんが「せっかくだから飲んどけ。損はないはずだ。」とか言ってるけど損とか得とか以前の問題がある。
「グースさん。私は魔法使えませんよ…。」
「最初はみんなそうだって。練習すれば初級の魔法ならすぐに…。」
「そうじゃなくて、私のいた世界にはそもそも魔法なんて存在してなかったんです。」
私はヒソヒソとグースさんに耳打ちをする。するとグースさんはまたもや驚愕の表情で私を見た。
まぁ魔法が発達しているこの世界の人からすれば魔法のない世界なんて想像できないだろう。
周りの人たちを気にしながら今度はグースさんが私に耳打ちをする。
「それじゃあレナちゃんの居た世界はどんな世界だったんだ?。」
「私の世界では魔法じゃなくて科学が発達していました。それに魔獣なんて生き物もいません。」
「魔獣が…いない世界…?」
信じられないという顔でポツリとグースさんは呟く。
私がこの世界で色んな事に驚いたのと同じようにグースさんも私の世界を目の当たりにすればきっと驚くだろう。
自分の世界の当たり前がよその世界だとありえないこと、だなんていうのはファンタジーじゃよくある話の1つだけど。
その後グースさんと雑談しつつ歩いているとふと町の門付近が騒がしいことに気づく。
どうやら騎士団の皆様が王都へと帰るらしい。せっかくなので私も見送りに混じることにした。
「おー相変わらず人がたくさん居るなぁ。」
「これじゃあ馬の頭しか見えませんねぇ。」
門付近には町の住民がたくさん見送りに来ていて背の小さな私ではエルヴインさんが乗っていた葦毛の馬の頭しか見えない。
うーんと背伸びをしてもあまり状況は変わらないので私はグースさんにもういいという意思を伝えようと彼を見上げる。
すると彼は何を思ったのか右手で私を座らせるように抱え上げた。慌てて彼の首にしがみつく。
「わわっ!ちょ、グースさん!!」
「なんだ?てっきり騎士団がよく見えないからなんとかしてほしいのかと。」
「その逆ですよ。もう帰りましょうって伝えたかったんです。」
「そうだったのか。まぁ、せっかくだし騎士団様を見とけよ。」
周りの視線が少し痛いのでホントは降ろしてほしいけど、エルヴィンさんの姿はとりあえず見ておきたい。
視線が随分と高くなったためエルヴィンさんはすぐに見つけられた。太陽に照らされてキラキラ光る銀髪に目を奪われる。
エルヴィンさんは町の人たちにお土産らしき物をもらいながら素敵な笑顔で挨拶をしていた。
もちろんエルヴィンさんだけじゃなくて他の騎士の人も顔の兜は外して町の人と会話を交わしている。
一目でこの町の人たちとエルヴィンさんたち騎士団の仲が良いのが分かった。そういうのってなんだかほっこりして好きだ。
「…!」
その様子を微笑ましく眺めているとエルヴィンさんがこっちを見ていた。
ふと時が止まったかのように私たちはお互いだけを見つめあう。
変に心臓が早く脈打つ。どうしよう、めっちゃ緊張するのはなんでなんだ。
なんだかそれが怖くなって、とりあえず私はエルヴィンさんに笑いかけた。
「…。」
すると向こうも微笑み返してくれた。気づけば心臓の脈は元通りになっている。
私はそのまま町を出て行くエルヴィンさん一行を見送り続けた。どうか、彼らが死にませんように。
いずれ恋愛じゃなくて割と直ぐに恋愛入りそうな気がする…。
プチキャラ紹介
・雨宮律子
玲那が通っていたピアノ教室の先生。その腕は確かだが個性が強過ぎる変人のため、結局ピアノ教室は玲那しか通っていない状態。男運がない。




