18話
今回は短め
次の日、私はグースさんと一緒にギルドカードの発行をしてもらいにギルドへと向かった。
自分ひとりで大丈夫だからと言ったけど、初めてだしまだ子供だから大人が居た方がいいと押し切られてしまった。
ついこの間18歳になったばかりだからもう子供と言われる年齢ではないけど、童顔で身体も凹凸が少ないのは自覚している。
だから私は何も言わなかったというか言えなかった。もう少し背も胸も欲しい。切実に。
「そういやレナちゃんは冒険者になったらどんな武器を使うつもりだ?」
「えっ、武器ですか?」
「あぁ。あ、でも女は魔法を使う人の方が多いしなぁ…。」
グースさんが何かブツブツと呟いている隣で私は先送りにしていた問題のことをすっかり忘れていたことに気づいた。
とりあえず武器は持っていることには持っている。だけど前にシュヴァイツに教えて貰ったことが問題だった。
この世界では魔法が著しく発達したがために遠距離武器は使われなくなり、今では武器屋にすら並んでいないことがほとんどであること。
つまり私がギルドカード発行の際に「使用武器は?」「銃です。」なんて言ってしまえば最後、変なやからに目をつけられそうで怖い。
それでも私はリューン様からのプレゼントに頼る他はないんですけどね!
というより気になったのはグースさんの呟きだ。やっぱり女性は魔法系が多いのだろうか。
「まだ決めてないですけど、女性は魔法を使われる方が多いんですか?」
「そうだな。剣や槍だと体力がいるうえに身体に傷がつくのもしょっちゅうだろ?けど魔法は後方での遠距離攻撃とサポートが主だからそういうのはあまりないし、体力はなくても魔力さえあれば誰でも魔法は使えるからな。」
「なるほど…。確かにもし跡の残る傷ができたら男の人ならともかく女の人は嫌がるでしょうね。」
「男なら戦いの勲章だ!!って自慢するヤツが多いだろうけど、女はデリケートだからそうもいかないんだよなぁ。」
さすが奥さんがいるだけあってグースさんは乙女の気持ちが理解できるようだ。素敵な旦那さんじゃないかアイナさん。
結局中々武器が決められなかったので、私はグースさんに実際に武器を見てみたいとお願いした。
グースさんは少しだけ驚いた顔をした後に「かまわないぞ。」と承諾してくれる。時間を取らせてしまって申し訳ない。
武器屋はギルドのすぐ向かいにあった。こういうのが近くにあるとすごく便利だよね。うん。
店に入るとガッシリ筋肉の付いたおっちゃんが「いらっしゃいませええ!!」とパワフルな挨拶をしてくれた。
「よう!グースじゃねーか。ん?そっちのお嬢さんは?」
「あぁ。おはようバルドの旦那。この子はうちの店で短期で仕事を手伝ってもらってる子だよ。近々この町を出ることになったからギルドカードの登録をしようと思ってな。でもその前に武器屋に寄りたいって言うもんだから連れてきたんだ。」
「ほー。嬢ちゃんお名前は?」
「レナです。初めまして。」
「こりゃまた礼儀の良い子だな。女の子の好むようなモンは置いてねぇけど、まぁゆっくりしてけや。」
そう言ってバルドと呼ばれた人は私の頭をわしゃわしゃ撫でていった後、店の奥へと消えていった。
とりあえず店内を順番に見て回る。ほとんどが剣と槍、あとちょっとした小スペースに斧や小さな投げナイフなどが置いてあった。
そんな私の目に止まったのは定番の剣。だけど普通のよりももっと短くて小さい、けどナイフよりは大きい短剣だった。
すぐに私の視線が短剣に注がれているのにグースさんが気づく。
「お、短剣か。確かに普通の片手剣よりかは軽いし扱いやすそうだな。」
「…これにしようかと思います。」
「そうかそうか!じゃあバルドの旦那のとこに持ってくぞ。」
「えっ。持ってくって買うんですか!?」
グースさんは適当に短剣を1本手にとってスタスタとお会計へと一直線。
私はこの世界のお金を持っていない。ということは必然的にグースさんがお金を払わなければいけなくなる。
それだけはいけない!と私はガシッとグースさんの腕を掴んで足を踏ん張るがズルズルと引きずられていく。
神獣との契約で身体能力上がってるんじゃないのか私!!それとも腕力は欲しくないと少しでも願ってしまったがために…!?
「おうおう面白い状況だな。」
「旦那、これ頼むぜ。」
「だめだめダメダメ駄目です!!グースさんにお金を払わせるわけには…!!」
「レナちゃん、こういうのは甘えといた方がいいぜ?それにグースならこれくらい余裕で出せる。」
「そうだそうだ。うちの店は結構繁盛してんだぞ?なんなら後4本は余裕だな。」
ガハハと大口開けてグースさんは豪快に笑っている。
私の必死の抵抗も虚しく、結局短剣はグースさんがお買い上げになってしまった。
私がムスーッと年甲斐もなくむくれている間にバルドさんが手早く短剣を用意してくれる。
けど、私達の目の前に出されたのはグースさんが持って行った短剣とは全く違う短剣だった。
グースさんが持って行ったのは銅一色の恐らくこの世界ではごくごく普通の短剣。しかしバルドさんが取り出した短剣は真っ白な刃に真っ黒な柄でこの店の商品の中ではかなり異色な物だった。その真っ白な刃には不規則に黒く細長い模様が入っており、まるで何かの喪章のよう。私はすっかりその短剣に魅入ってしまった。
「レナちゃん、短剣を買うならこっちの商品はどうだ?」
「おいおい旦那、なんなんだこの短剣?」
「ん?あぁ、これはつい最近手に入った商品でな。刃の部分は魔石で加工されてるから強靱なうえに魔獣にもダメージがよく通る。装飾的に女向け商品なんだが、そもそも女は武器屋にあまり来ねぇからな。」
「なるほど。で、今ここで俺達にこの売り道のない武器を買って貰おうってか?」
「お代は安くしとくぜ。それにほら、レナちゃんもすっかり気に入ったみたいだしな。」
「えっ、あ、いや別にそんなんじゃ…。」
バルドさんの言葉につい反射的にそう返してしまったが私はすっかりこの短剣に釘付けだった。白と黒のコントラストはまるでヴァイスとシュヴァイツを彷彿とさせる。すごく綺麗で美しい。
「じゃあこの短剣をくれ。」
「え、あっいや、あの…確かに素敵だなとは思いましたけどっ!」
「そんなに物欲しそうな目で見つめてたら買ってあげたくなるだろ?」
「俺とグースからこれから頑張るレナちゃんへのプレゼントだ。ありがたく貰ってくれ。」
「…分かりました。ありがとうございます。」
完全に折れた私がそう言うと、2人は嬉しそうにニカッと笑った。
グースさんが取り出したのは銀貨6枚。この6枚にどれくらいの値打ちがあるのか私にはさっぱりだ。
とりあえず銀貨を6枚以上稼いだらグースさんへのプレゼントでも買おうかなと私はひっそりそう決めた。
いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
プチキャラ紹介
・バルド
ザヴェードで武器屋を営んでいる男性。
若い頃は腕の立つ冒険者として名を馳せていたらしい。




