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神の化身となりました  作者: レモングラス
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12話

急遽遭遇した騎士団VS魔獣の戦闘にちょっと介入した後、私達は最初の目的通りザヴェードの森を抜けることにした。


『すまん。ちょっと降りてくれないか?』

「あ、うん。」


森を抜ける直前、シュヴァイツから降りて欲しいと言われたので素直に降りる。

すると視界から2人の姿が消えた。パッと光ったと思ったら消えたのだ。

もしやと思い視線を下に移動させてみると、かなり小さくなってしまった2人が私を見上げていた。

可愛い。もう一度言う。可 愛 い 。


『町であの大きさだと目立っちゃうから、私達の時だけと戦う時以外はこの姿でいるわね。』


なるほど。確かにでっかい狼2匹連れて町なんか入ったらむしろ追い返されそうだ。

2人には上着のポッケに入って貰うことにした。シュヴァイツがポッケに入ろうとした途端に『なんだコレ。』と声を上げる。

そういえばスマホをポケットに入れっぱなしだった。どうせ電源も付かないので町に入ったら捨てることにしよう。

ヴァイス側には財布が入っていたようで結局2匹は私の肩に乗ってもらうことにした。もうペットという位置づけでいいだろう。

森から出ると遠くに町の入り口が見えた。ファーレンの中心には一番大きな町である王都がある。

私がこれから向かう町はその王都より少し離れた位置にある小さな町ザヴェード。

森から町に続く道をわたっしは~げーんきー♪と鼻歌を歌 いながら歩いていく。20分くらい歩いて私は足を止めた。

町の入り口辺りに誰かがいた。荷車を引っ張っている男の人と女の人だ。しかもイケメンに美女。歳は20代後半くらいだろうか。

あの人達が町に入ったら私も入ろうと思い、様子を見ているとふと女の人がこちらを振り向いた。

女の人が私に気づいて目を大きく見開いている。すぐに男の人も私に気づいて口をあんぐりと開けていた。

なんだなんだと思っているとものすごい速さで女の人がこっちに走ってきた。一瞬で目の前に走ってきて私は思わず仰け反った。


「ちょっとあなた!!なんでザヴェードの森の方向から!?!?」

「え、あの、ちょっと…」

「と、ととととにかく、ちょっとこっち来なさい!!!!」

「え、ああああぁぁ待って!待ってください!!」


そのまま女の人にガシッと腕を捕まれて町の入り口まで引きずられていく。この人すごい力なんですけど!

ズルズルと町の入り口で待機している男の人の元へと連れて行かれた。2人とも私のことを心配そうに見つめてくる。

とりあえず私達の家に来なさいと言われてお邪魔することにした。断ろうと思ったけど2人の表情を見ると断れなかった。

家に入ると飲み物を出された。温かいココアだ。甘い香りが鼻を刺激すると共に身体から力が抜けていく。

その匂いに釣られてかヴァイスとシュヴァイツが私の肩からひょいっと飛び降りてココアの入ったカップを凝視している。

そしてそんなチビ狼2匹を目の前の2人が凝視していた。

ニッコリ笑顔で私は言った。


「わたしの友達です。」

「そ、そうか。可愛らしい友達だな。」


とりあえず害がないことは分かっていただけたようで、女の人がヴァイスとシュヴァイツ用にミルクの入った器を用意してくれた。

2人は恐る恐るながらもミルクに口を付け始める。前に座っている男女2人はその様子を微笑ましそうに見ていた。

私もココアのカップを手にとって口を付けた。甘いココアの味が口の中に広がって思わず頬が緩んでしまう。甘いもの大好きです。


「いきなり連れ込んでごめんね?私はアイナ。こっちは夫のグースよ。」

「いえ、どうせ行く当てもありませんでしたし。それにココアももらっちゃって…。ありがとうございます、アイナさん、グースさん。」

「気にするな。色々と聞きたいことがあるが…とりあえず嬢ちゃんの名前を教えてくれないか?」

「…レナです。」

「そう、レナちゃんっていうの。あなたと同じ可愛らしい名前ね。」


アイナさんの言葉に思わず「そんなことないです!」と返す。誰かにはっきりと可愛いなんて言われたのはホントに久しぶりだ。

「あらあらまぁ照れちゃって。」と笑っているアイナさんの顔を直視できなくて私はココアを啜る。褒められるのには慣れてないんだ。

そこから私はアイナさんとグースさんに自分の状況を嘘を交えて大まかに教えた。

まず私は気づいたらザヴェードの森にいて自分の名前と両親が亡くなっていること以外は記憶が朧気でよく覚えていないという設定。

当てもなくさまよっていたらヴァイスとシュヴァイツに出会って2匹に森の出口まで案内してもらった。

そしてなんだか懐かれたから一緒に行くことにした。と、こう説明した。

きっと日本で元気にしているだろう 両親に勝手に殺してごめんと心の中で謝る。これからも仲良くラブラブ過ごしてね。

私の脚色された境遇を聞いたご夫婦はなんとも痛ましい表情で大変だったね…と同情してくれた。

…心が痛いです。


そのあととても親切なご夫婦はこの世界のことを簡単にだけど分かりやすく教えてくれた。

全ての説明を聞いた感想は、この世界は少し日本に似ているなと思った。

まず言葉や文字はまんま日本と変わりなかった。これはめちゃくちゃありがたい。

お金は日本の単位である「円」が「ドゥール」という言葉に変わっていた。お金も紙幣や小銭じゃなくて金貨や銀貨、銅貨が使われているけど数え方もそこまで難しそうじゃないから大丈夫そうだ。食事はお米が主食らしい。なんというジャパニーズ。

服装に関して言えば今の私の服装でも問題なかったけど、日本よりちょっと質素だ。あまりオシャレ感がない。

ただ町の外に出れば魔獣という危険が潜んでいること、貴族や王族という上流階級の存在 、騎士団や冒険者、そして何より魔法の存在。

日本と違う所はザッとこれくらいだった。

次にこの町のことと騎士団と冒険者のことについて。

この町は近くに魔獣がたくさん出るというザヴェードの森があるため、それを討伐しに騎士団がよく来るんだそうだ。

冒険者は居ないのか聞いたところ、ザヴェードの森にはさっきみたいに上級の魔獣が多くはないが少なくもない頻度で出現するため冒険者はまず来ないらしい。

冒険者が退治できる魔獣は一番最高レベルで中級。もし上級魔獣と戦いたいなら騎士団に入らなくてはいけないとのこと。


「で、嬢ちゃんはこれからどうするつもりだ?」

「冒険者にでもなってお金を稼ごうかなぁ…と。」


今のところはこれ以外に道はなさそうだし。騎士団には…なんか入りたくなかった。

だって騎士団はめっちゃ偉い人と繋がるわけで。上層部のいざこざに巻き込まれたりしたらたまらない。

それに私はまだ経験が足りない。もし中級もある程度問題なく倒せるようになったら今日みたいに騎士団のお助けをすればいいしね。こっそりと。

ちなみに冒険者になって依頼を受けるにはギルドでギルドカードを発行しなければいけないらしいけど、名前と使用武器を伝えればそれだけで登録できるそうだ。

身元の詳細を伝えなくて済むのはぶっちゃけありがたい。それで良いのかとも思うけどね。

私がこれからの計画を立てていると頭に心地よい重みが乗る。見上げればアイナさんが私の頭を撫でていた。


「そんなに急がなくていい。ちゃんと落ち着くまでここに居ていいからね。」

「そうだそうだ。もっとゆっくりしてけよ。」


驚いた。危険な森からひょっこり出てきて身元だって分からない。

そんな人間に対してここまで親切にするものなのかと。更に心が痛んだ。

だって私がしているのは騙しているのと同じだ。この夫婦の親切心を利用しているだけ。

1日でも早く自分の近辺を整えてひとりで暮らしていけるようになろう。私はそう決心した。


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