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痛い愛

 「どうだね?アリスの様子は?」

 医院長室の大きな椅子に座り、目の前に山積みにされた書類に印をポンポンと押しながら、医院長は言う。

「はい。転移は成功でした。最近は病室の前を通ると、笑い声が聞こえてくるのですよ。」

 嬉しそうに答えるドジソン。アリスのその後の経過報告の為、医院長室に呼ばれていた。

「そうか・・・。それは非常にいい事だ。この調子で、彼女の中の意識達を外に出し、他の者との接触に慣れて行けば、通常の人間に対しても難なく接する事が出来る様になるかもしれんな。」

 医院長はドジソンの顔をチラチラと見ながら、書類に印を押し続けて言った。

「そうですね。そして沢山の物に興味を示してくれる様になれば、更にいいですね。」

 ドジソンは退院をして行くアリスの姿を想像しながら、ニコニコと言う。

「まぁまだこの治療は始めたばかりだ。肝心なのは、これからだよ。」

「はいっ。分かっていますとも!」

 任せて下さい、と言わんばかりに、ドジソンは大きく自分の胸を叩いた。

「それで?ドジソン君。次の体は、もう出来たのかね?」

「あっ・・・はい。後は病室に運んで、またアリス君に意識を移して貰うだけです。」

「そうか、それは素晴らしい。君は本当に優秀だね、仕事も早いし。それならば、早くその体をアリスの所へ持って行ってあげなさい。」

 そう言うと、押し続けていた手を止め、横に置いてあったコーヒーをすすった。

「あの・・・医院長先生・・・。」

「ん?何だね?何か問題でも?」

 ドジソンは少し言いにくそうに、頭を掻きながら言う。

「いえ・・・実は、あの人形を病室まで運ぶのに、一人ではとても大変で・・・。よろしければ手伝って貰えないかと・・・。」

 その言葉を聞くと、医院長は飲んでいたコーヒーを机に置き、セカセカとまた印を押し始める。

「なっ・・・何を言っているのだ。見て分からんのかね?この通り、私はとても忙しいのだよ!」

「は・・・はぁ・・・。そのようですね・・・。」

 やはり手伝う気はさらさら無いのか、と思いながら、ドジソンは医院長に一礼をして、部屋を後にした。

「はぁ・・・。またあの重たい人形を、一人で運ぶのか・・・。せめて看護婦の人にでも手伝って貰えればいいのだが・・・。この計画は私と医院長だけの秘密の計画だからなぁ・・・。」

 トボトボと肩を落としながら、ドジソンは人形の置いてある製作室へと向かった。

 

 病室では、相変わらずアリスはうさぎに意地悪ばかりをしていた。

「さぁ、早くしなさい。」

 今度のアリスの命令は、うさぎに四つん場になれとの事。それで鎖を引いて、病室内を散歩しようとしていたのだ。

「これでいい?アリス。」

 うさぎも相変わらず、ニコニコと笑いながらアリスの命令に従う。

「ええ、それでいいわ。さぁ、いらっしゃい。」

 アリスが鎖を引くと、それに合わせてうさぎは四つん場のまま歩きだす。

「ふふふ。ほら、もっと早く歩いて!」

 グイグイと鎖を引っ張るアリス。うさぎはズルズルと引きずられながら歩いた。と、そんな中、トントンとドアをノックする音が聞こえる。

「誰よ?人が楽しく遊んでいる時に・・・。」

 不機嫌そうな顔をしながら、手に持っていた鎖を離すと、ドアの方へと向かった。ガチャッとアリスがドアを開けると、そこにはニコニコと微笑みながら立つドジソンの姿が。

「やぁ、アリス君。よかった、君がドアを開けてくれて。あっ、そのままドアが閉まらない様に、抑えていてくれないかい?」

 アリスは言われるがまま、ドアを抑えた。 

「何か用?先生。」

「いやね、新しい体が出来上がったから、持って来たのだよ。ほら、君の新しい友達の・・・。」

 そう言いながら、ドジソンはまたも重そうにカートを病室の中へと運びこむ。それを見たうさぎは、ドジソンの元に駆け寄り、一緒にカートを押した。

「手伝います。」

「あぁ・・・ありがとう。助かるよ。」

 二人で病室に運び込むと、次はその上に乗っていた大きな箱を、せーの、でカートから下ろす。ドンッと言う音と共に、勢いで箱のフタが少し開いた。

「おっと・・・危ない危ない・・・。」

 ドジソンはそっとフタを開けて、中身が壊れたりはしていないかを確認した。

「うん。大丈夫だな。」

 フタの開いた箱の中を、アリスとうさぎは覗き込んだ。アリスはまたも首を傾げる。 

「また・・・耳?」

 箱の中に入っていた次なる人形は、ピエロの様な黒い服を着て、首には鈴をぶら下げている。そして頭からはまたもひょっこりと、猫の様な耳が二つ。お尻からは、長いシッポの様な物が飛び出していた。

「猫だよ。君の言っていたチェシャ猫。どうだい?」

 ニコニコと言うドジソンに、アリスは溜息を吐きながら言った。

「はぁ・・・だからシッポ付きなのね・・・。別に、こう言うのって必要ないんじゃない?」

「いやぁ~。少しでも君のイメージ通りって思うと、どうしても付けてしまうのだよ。あっ!うさぎ君は、どうだい?」

 はははっ、と笑いながら、ドジソンはうさぎに聞いた。うさぎは目をキラキラとさせながら、チェシャ猫を見つめている。

「あっはい。いや・・・僕もこうやってアリスの所へ来たのかって・・・何か感動して・・・。」

 うさぎの言葉に、ドジソンはとても嬉しそうだ。

「そうか、そうかい。そうだね、君は目を覚ます前の様子は、分からなかったからね。」

 二人して楽しそうに話す姿を見て、アリスはムッとした顔をする。

「先生!もう運び終えたのなら、早く出て行って。この人形の中に移せないわ。」

 ムスッとした顔で言うアリスを見て、ドジソンはハッとした顔をして言った。

「ああ!そうだったね。移す時は席を外した方がよかったのだったね。じゃあ私はこれで失礼するよ。また何か困った事等があったら、何時でも言って来なさい。」

 そうしてドジソンは病室の外へと出て行った。うさぎは相変わらずニコニコと笑いながら、ドジソンを見送る。そんなうさぎに、アリスはうむも言わずに思い切りうさぎの頬をバシッ、と叩いた。

「あうっ!」

 うさぎは痛そうに、叩かれた頬に手を当てる。うさぎの頬は少し赤くなってしまっていた。

「私以外の人と、楽しそうにしないで!」

 アリスはうさぎに怒鳴りつけると、うさぎは耳を下に垂らしながら謝った。

「ごっ・・・ごめん・・・アリス・・・。僕、そんなつもりじゃなかったんだ・・・。」

 今にも泣き出しそうな顔をしているうさぎ。そんなうさぎを見て、アリスは叩いた頬にそっと手を添えた。

「ごめんなさいね。痛かったでしょう?でも、貴方が悪いのよ。ドジソン先生と、あんな楽しそうに話すから・・・。」

 うさぎはプルプルと首を横に振りながら、大粒の涙を溢れさせた。

「泣かないで。もうぶったりしないから。その変わり、貴方も私以外の人と仲良くしてはダメよ。」

 優しく言うアリスに、うさぎは泣きながらコクコク、と何度も頷いた。

「ふふ、いい子ね。さぁ、涙を拭いて。新しいお友達を起してあげなくちゃ。」

 ニコリと笑いながら言うアリスに、うさぎも涙を拭きながら、ニコリと笑った。


 アリスはうさぎの時と同様に、箱に入れられた猫の耳を持つ人形の額に、そっと手をかざした。そして心の中で呼びかけると同時に、又もアリスの体からは淡い光が。うさぎはその様子をじっと静かに見つめている。

「さぁ・・・起きなさい・・・チェシャ猫・・・。」

 アリスの呼びかけと共に、ゆっくりとチェシャ猫の目は開く。目を開けたチェシャ猫の瞳は美しい金色に輝いており、パチパチと何度も瞬きをする。

「ここは・・・外か?」

 不思議そうに周りを見渡すと、アリスを見るやいなや、突然飛びきりの笑顔でアリスに抱きついた。

「アリス!アリスなんだね!やっと会えた!」

 突然の事に驚いたアリスは、思わずチェシャ猫を振り払った。

「ちょっと!いきなり何をするの!」

 そんなアリスにはお構いなしに、チェシャ猫はまたもアリスに抱きつく。

「だって嬉しいんだもん!こうして直接アリスに会えたのが!ハハハッ。」

 そんなチェシャ猫を見て、うさぎはチェシャ猫からアリスを引っ張り離した。

「アリスが嫌がっているじゃないか!止めろ!」

 するとチェシャ猫は先程の態度とは一転して、冷たくうさぎに言い放つ。

「五月蠅いな・・・お前には関係無いだろ。俺とアリスの感動の対面を、邪魔するなよ。」

「で・・・でも・・・。」

 困った顔をするうさぎに対し、険しい顔をするチェシャ猫。しばらくはそんな両者の睨み合いにも似た時間が続くが、アリスの言

葉にその時間を終える。

「いい加減にしなさい!二人とも!新しく迎えた友達よ!誰にとっても。仲良く出来ないのなら、ここから出て行きなさい!」

 二人はアリスが言うなら、と言った感じで、お互いに睨み合いを止めた。

「チェッ!アリスが言うなら・・・仕方ないな。」

「ごめんね・・・アリス・・・。僕ちゃんと仲良くするから・・・。」

 二人の言葉にアリスはニッコリと笑い言う。 

「それならいいわ。さぁ!新しくお友達を迎えた、お祝いをしましょう!」

 そう言うと、アリスはいそいそと病室の隅に追いやっていたテーブルと椅子を部屋の真ん中に運んで来ると、ティーセットの用意をした。

「美味しい紅茶で乾杯でもしましょう。ドジソン先生から頂いた紅茶が、まだ残っていたから。」

 ニコニコと機嫌良さそうに支度をするアリスに、うさぎはその手伝いをする。チェシャ猫は運ばれた椅子にドカリと座り、目の前に紅茶が差し出されるのを嬉しそうに待っていた。

「君も手伝いなよ。」

 不満そうにうさぎが言うが、チェシャ猫はそれを無視するかの様にアリスに話しかける。

「ねぇアリス!紅茶だけじゃ味気ないよ。何かお菓子でも無いの?」

「そうね・・・それもそうね。確かクッキーがあったはずよ。それも出しましょう。」

 アリスはいそいそとタンスの引き出しからクッキーの入った缶を取り出し、それもテーブルへと置く。

「アハハ!ウマそうだ!」

 はしゃぐチェシャ猫を見て、うさぎは更に不満そうな顔をした。

「さぁ、うさぎもこっちへいらっしゃい。」

 しかしアリスにそう呼ばれると、今度は嬉しそうな顔をしてアリスの元へと行く。うさぎも椅子に座ろうとすると、アリスではなくチェシャ猫がうさぎを突き飛ばした。

「お前は椅子に座るな。」

 強い口調で言うチェシャ猫に対し、うさぎも又強い口調で言う。

「どうしてだよ?アリスの命令でも無いのに・・・君の言う事なんか聞けないよ!」

 そうしてまた二人の喧嘩が始まってしまうのだった。

「お前、首輪を付けてるだろ。って事はアリスのペットだ!なら俺のペットでもあるから、俺の言う事もちゃんと聞けよ。」

「違う!僕はアリスの友達だよ!アリスが喜ぶ為にこうしてるんだ!お前の言う事を聞く義務は僕には無いよ!」

「うさぎの癖に偉そうな事言うなぁ。ムカつくよ。お前はアリスの友達じゃなくて、おもちゃなんだよ!」

「違うよ!僕はアリスの友達だよ!後から来た癖に・・・君だって偉そうな事言うなよ。」

 そんな二人の言い争いを見て、うんざりとした顔をしたアリスは、テーブルに用意をしてあった紅茶やクッキー事テーブルを引っ繰り返した。

「五月蠅い!五月蠅いわよ!せっかく私がお祝いをしようと用意をしたのに・・・。それを無視して二人でお話をして・・・。もういいわ!」

 そう言い放つと、アリスはベッドの中へと潜り込んでしまった。

「ア・・・アリス・・・。」

 申し訳なさそうにアリスの元へ行こうとするうさぎをチェシャ猫は突き飛ばし、ベッドの中のアリスへと飛び付く。

「ごめん!ごめんよアリス!アリスを無視してたとかじゃないんだ!うさぎの奴が俺達二人の時間を邪魔しようとしたから、追い払っていただけなんだよ。」

 猫撫で声で言いながら、ゴロゴロとアリスに擦り寄る。そんなチェシャ猫を、うさぎは恨めしそうな顔で見つめていた。

「もういいわ・・・。」

 アリスがそう言うと、チェシャ猫は嬉しそうに抱き付いた。

「アハハッ!ありがとうアリス!大好きだよ!」

 ゴロゴロと喉を鳴らしながら抱き付くチェシャ猫に、アリスは子供でもあやすかの様に、頭を撫でる。そんな光景に、うさぎは耳を垂らして寂しそうに俯いていた。チェシャ猫はアリスに抱き付いたまま提案をする。

「ねぇアリス!あの医者にでも頼んで、新しいお菓子を用意して貰おうよ。それで改めてお祝いをしようよ!」

「そうね・・・床に落ちたクッキー何て、流石に食べれないものね・・・。うさぎ、ドジソン先生の所へ行って、貰って来てくれる?」

 うさぎは嬉しそうにコクリと頷くと、病室を出てドジソンの診察室へと向かった。病室を出るうさぎを見て、チェシャ猫はニンマリと笑う。

「ねぇアリス・・・これで邪魔者は居ないし・・・二人でたっぷり遊ぼうよ。」

「遊ぶって、何をして?何か面白い遊びでもあるの?」

 少し素っ気なく言うアリスに対し、チェシャ猫は更にニンマリと笑い、今度は力一杯にアリスへと抱き付いた。

「こうしてるだけで、楽しいじゃあん?」

「ちょっと!痛っ・・・痛いわよ!」

 思い切り力強く抱き付くチェシャ猫に、アリスの顔は苦痛に歪む。

「チェシャ!痛いって言っているでしょ?そんなに強くする事ないでしょ!」

 そんなアリスとは裏腹に、チェシャ猫は更に強くアリスを抱きしめる。

「だって、思い切りアリスを抱きしめたいんだ。もっともっと、アリスに触れて、アリスの感触を味わいたいんだ。」

 苦痛に歪むアリスの顔に、歪んだ笑みを浮かべたチェシャ猫の顔。必死にチェシャ猫を振り払おうとするアリスだったが、その力は余りにも強く、ビクともしない。

「ねぇアリス・・・うさぎ何て要らないよ。必要無いよ。あんな奴捨てて、俺達二人だけで過ごそうよ。」

甘い声でアリスの耳元で囁く様に言うチェシャ猫。そんなチェシャ猫に、アリスはカッとなり、強く叫んだ。

「うさぎは私の初めての友達よ!後から来た貴方が、勝手な事言わないで!偉そうに私に命令しないで!」

 アリスの怒鳴り声と共に、病室のドアが勢いよく開く音がした。

「アリス?どうしたの?」

 うさぎの姿を見て、一瞬力が抜けたチェシャ猫の腕を、アリスは一気に振り払った。

「何でもないわ。それより、お菓子は貰って来てくれたの?」

 不機嫌そうに言うアリスに、これ以上聞けば怒られてしまうかもしれない、と思ったうさぎは、何も言わずにニコリと笑い、両手に持つチョコレートの入った缶を差し出した。

「まぁ!チョコレートね!美味しそう!早速頂きましょう。」

 うさぎの差し出したチョコを見て、アリスは嬉しそうに笑った。それを見たうさぎはアリスの機嫌が良くなったとホッ肩を落として言った。

「あぁ・・・それでね、アリス。実は、ドジソン先生が診察室まで来て欲しいって言ってたよ。」

 うさぎのその言葉に、アリスは又も不機嫌な顔になる。

「嫌よ!今からこのチョコレートを頂くのよ。」

 そんなアリスに、うさぎは恐る恐る更に言う。

「あ・・・でも・・・。今すぐ来てほしいって言っていたから・・・。大事な話とか・・・。」

 はぁ・・・と少し溜息を吐いてから、アリスはチョコの入った缶をうさぎの手に戻した。

「分かったわ・・・。行けばいいんでしょ、行くわよ。」

 その言葉を聞いたうさぎは、又もホッと肩を撫で下ろす。

「私が戻って来るまで、これはまだ食べちゃダメよ!あっ・・・そうね・・・うさぎは一つだけなら食べてもいいわ。お使いに行って来たご褒美。でもチェシャはダメ!いいわね?」

 うさぎは嬉しそうに何度もコクコク、と頷くが、チェシャ猫はとても不満そうな顔だ・。

「アリス!何でうさぎはいいのに俺はダメなの?」

「私の言う事を聞かなかった罰よ!いい、私が戻るまで絶対に食べちゃダメだから!うさぎ!見張っていてよ!」

 そう強く言い放つと、バンッと勢いよくドアを閉めて病室を出て行った。

 アリスが病室を後にすると同時に、うさぎは嬉しそうに缶の中のチョコを一つ摘み、それを口の中に放り込もうとする。が、その瞬間に、バシッとうさぎの持つチョコを、チェシャ猫が手で引っ叩いた。その勢いで、一粒のチョコは床へと転げ落ちる。

「何をするんだ!」

 チェシャ猫に怒りながらも、転げ落ちたチョコを拾い、フーフーと息を吹きかけホコリを取り除く。そんなうさぎの姿を見て、チェシャ猫はケタケタと笑っていた。

「自分だけ食べれないからって、嫌な奴だな。」

 ムッとしながら言ううさぎに対し、チェシャ猫は皮肉に笑いながら言う。

「後でアリスと二人で沢山食べるからいいさ。どうせお前は、その一粒しか食べれないんだろ?食べさせて貰えないんだろ?ハハハッ。」

「そっ・・・そんな事ないよ!それより・・・アリスが罰だからって言っていたけど・・・。アリスに何かしたの?」

 うさぎの言葉に、チェシャ猫は冷たい表情に変わる。

「別に・・・。ただアリスと楽しく遊んでいただけだよ。それをお前が邪魔したんだよ。」

 冷徹に放たれる言葉に、うさぎは少し怯えながら聞いた。

「で・・・でも・・・。アリス、怒ってたじゃん。何か怒らせる様な事したんじゃないの?」

「違うよ。遊んでたんだよ。」

 チェシャ猫の顔は、更に冷たく、鋭くなる。

「そうだ・・・。せっかく遊んでいたのに、お前に邪魔されたんだ・・・。ムカつくなぁ~。お前、ムカつくよ。」

 そう言うと、チェシャ猫はうさぎの腕を思い切り引っ張り、ベッドの上へと投げ飛ばした。

「あっ!な・・・何をするんだよ!」

「お前さ、そう言えば・・・男の癖に何で女の服着てるの?変なの。」

「こっ、これは・・・アリスがこっちの方が似合うからって・・・喜ぶから・・・。」

 少し恥ずかしそうに言ううさぎを見て、チェシャ猫は、今度は大笑いをしながら言った。

「ハッ!あはははははっ!そうだよなぁ~!お前女みたいな顔してるから、女の服の方が似合うよなぁ~!あははははははっ!」

 笑い続けるチェシャ猫に、うさぎの顔は更に恥ずかしそうに真っ赤になる。

「はははははっ!あぁ・・・そうだ!お前、本当は女だったりするのか?」

「そんな事・・・。ちゃんと、男の子だよ。」

「本当か?よしっ!なら俺が確かめてやるよ!アハハッ!」

 ニタリと笑うと、チェシャ猫はベッドに横たわっているうさぎの両腕を掴み、身動きが取れない様押さえ付けた。

「なっ!何するんだ!離せ!離せよ!」

 必死にモガクうさぎだったが、その力は余りにも強くビクともしない。チェシャ猫は容赦無くうさぎの着ていた洋服を脱がし始めた。

「なっ・・・!止めろ!止めてよ!」

 半泣き状態で必死に訴えるうさぎだったが、チェシャ猫は聞く耳持たず、と言った感じで洋服を脱がし続ける。

「止めて!お願いだから・・・やめてよ・・・。」

 とうとう泣き出してしまったうさぎ。しかしその頃には、無残に洋服を全て脱がされた後であった。そんなうさぎの姿を見て、チェシャ猫はつまらなさそうに言った。

「なぁ~んだ。本当に男かよ・・・。これで実は女でしたってのだったら、面白かったのにさ。」

 うさぎに興味を無くしたチェシャ猫は、ひっくり返っていたテーブルと椅子を元に戻すと、チョコンと椅子に座り、足をブラブラとさせる。

「あぁ・・・早くアリスが戻って来ないかな?早く二人でまた遊びたいな。」

 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、上機嫌でアリスの帰りを待つのだった。

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