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永匣ー次こそは、君を殺さず愛したい  作者: 来襲さん


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9/10

9話

「新しいミルク温度計、使いやすい?」


「…はい」


新しい温度計は、細くて軽かった。


ミルクに差し込む。


針がゆっくり動いた。


「前使ってたやつどこに行ったんだろうね〜」



あの時は不快だったな。


僕は泥酔していた女を、刺した。


雪も降らず、風もない静かな日だった。


バイト帰りに花屋へ寄り、白いカスミソウを買ったんだ。


痛いと騒ぎ、動き回り、抵抗され。


静かになるまで時間がかかった。


仕事終わりの女のブラウスはだんだん暗く染まり、徐々に静かになり、色を失った。


手のひらに残った温度は、冷たい外気によって冷えていく。


不快だった。


思っていたよりもにおいがあった。


靴の先に、暗い色が広がっていた。


僕はそれを避けるように、一歩下がる。


「知っていますか?カスミソウは、単体でも添え物としても使えるんですよ」


僕は、添え物のカスミソウの方が好きだ。


カスミソウがあるから、主役の花はより引き立つ。


でも、可哀想に。


このカスミソウは、主役にも添え物にもなれなかった。


「あなたに合う花ではないみたいですね」



僕は、温度計をミルクから引き抜いた。


白い湯気がゆっくり立つ。


「さあ、どこへ行ったんでしょうね」

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