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10話
この間殺した女は、さすがにニュースになっていた。
温度計が凶器だとは誰も思わないだろう。
ここ最近、以前より視線を感じることが増えた。
「ねえ、めっちゃかっこよくない?」
「クールでいいよね」
客だけでなくスタッフの視線も、どこか変わった気がした。
フルネームを尋ねる人、ストレートに連絡先を聞いてくる人もいたけれど、僕はそれに答えなかった。
「最近、久世くん目当てのお客さんが増えたね」
店長がカップを拭きながら店を見渡し、呟く。
「…新作が出たからですよ」
「自覚がないのか」
そう言って店長は柔らかく笑った。
今月の新作は桜のラテ。まだ雪は残っているというのに、カフェはすっかり春色に染まっていた。
窓の外の日差しに、春の訪れを感じる。
「もうすぐ春だな」
少しの沈黙のあと、僕は呟いた。
「桜って、やっぱり主役ですよね」
僕は注文されたばかりの桜ラテを作りながら、考える。
「……桜にカスミソウは、合うかな」
店長が少しだけ、手を止めた。
「合うだろうなあ」
そして僕を見て、笑った。




