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永匣ー次こそは、君を殺さず愛したい  作者: 来襲さん


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8/18

8話

バイトは、思っていたほど大変ではなかった。


僕の担当は、飲み物を作ることだった。


客によって好みが変わるため、飲み物に入れるミルクだけでも複数種類あることを知った。


注文を受けて、僕が飲み物を作る。


同じことの繰り返しだった。


「あのお客様は毎日いらっしゃるからね、覚えておいてね」


僕に仕事を教えてくれる佐藤さん。


彼女はやけに世話を焼きたがる。


「はい」


僕には客の違いがよく分からなかった。


昨日来た人も、今日来た人も、よく覚えていない。


ただ、僕は誰かを待っていた。


入り口のドアが開くたびに、誰かを探していた。


僕がバイトに慣れた頃にも、


毎月の新作が発表される頃にも、


夜の訪れが少し遅くなった頃にも、


来なかった。


そのうち忘れかけていた頃に、やってきたんだ。


僕はミルクピッチャーを洗いながら、顔を上げた。


ガラス戸が開き、まっすぐ注文口へ向かう制服の女の子。


髪型が少し違うけれど、すぐに分かった。


僕がカスミソウを見つけたあの日、窓際で勉強をしていた子だ。


「キャラメルラテで…あ、ホットでお願いします」


キョロキョロと席を見渡していた。


今日は来客が多く、席にも余裕がなかった。


視線を落とし、ミルクをピッチャーに注ぎ、温める。


温度計を差し込む。


白いミルクの中で、針がゆっくりと動く。


音はほとんどなく、湯気だけが上がる。


キャラメルシロップを入れ、静かにかき混ぜた。


甘い匂いがした。


「キャラメルラテでお待ちのお客様」


僕は彼女を呼ぶ。


ちょうど良いタイミングで、あの日座っていた窓際の席が空いた。


「ありがとうございます」


カップのふちに残った泡が気になった。


外をたくさん歩いたのだろう。


彼女の鼻や頬、耳は真っ赤だった。

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