7話
軽く面接も終わり、その場で採用を伝えられた。
「来週から、よろしくお願いします」
「こちらこそ、期待しているよ」
何か飲んでいくか聞かれ、僕はホットココアをお願いした。
苦いものは苦手だ。
カフェラテさえ苦く思える。
入れたての熱いココアが喉を通る。
甘かった。少し、舌に残る甘さだった。
昼過ぎの店内は静かだった。
数人の客が、それぞれの時間を過ごしている。
マグカップ片手にパソコンで作業をしている女性。
あっちの壁際のテーブルは、商談中なのだろうか。
スーツの男性と若い夫婦。
勉強中であろう学生も数人。
窓際の席に、1人で座っている女の子がいた。
休みの日なのに、制服を着ているから目立っていた。
ノートを開いて、何かを書いている。
ときどき止まって、外を見る。
ときどき肩くらいの長さの髪を耳にかける。
テーブルの上のスマートフォンは、触らなかった。
僕はそれを見ていた。
彼女はひとりだった。
しばらくして、女の子はノートを閉じた。
立ち上がり、カウンターへ向かう。
「ごちそうさまでした」
店員が軽く笑って
「またお待ちしております」
と言う。
女の子は店を出た。
僕は彼女の音が聞こえなくなるまで、カップを持ったまま動かなかった。
カップの湯気が少し、弱くなっていた。
少し、ぬるくなっていた。




