表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永匣ー次こそは、君を殺さず愛したい  作者: 来襲さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/10

6話

「プレゼント用のお花をお探しですか?」


一瞬、言葉に詰まった。


渡す相手など、もちろんいない。


それでもなぜか否定する気にはなれず、むしろそれがいいと思った。


「はい。そうなんです。もうすぐ、記念日で」


答えると、店員は笑った。


「きっと、喜ばれますよ」


…そうか、花を贈ると喜ばれるのか。


店員の腕の中にあるカスミソウの花束は、少し寂しく感じた。


主役が必要だと思った。


「今日は見るだけにします」


「またいらしてくださいね、お待ちしております」


僕は軽く頭を下げた。


「また来ます」


小さな鈴の音を鳴らし、店を後にする。


雪が静かに降っていた。


今日は冷える。近くにチェーン店のカフェがあったな。


雪は静かなのに、周りはうるさい。


雪を踏む足音、車の排気音、人の話し声、笑い声。


道の端には踏み固められて黒くなった雪が積もっている。


今年は雪の量が多いみたいだ。


上着のコートに手を入れたまま、ガラス張りの店を見上げた。


ーーアルバイト募集


そう書かれた紙が、店の入り口に貼られている。


カフェの中は暖かそうで、白い湯気がガラスの向こうにぼやけて見えた。


いずれ、花を買う予定だ。


その時に自由に使えるお金があった方が良いと思った。


ドアを押し開けると、コーヒーの良い匂いがした。


「いらっしゃいませ」


店員が顔を上げる。同世代くらいの女の子だった。


少し間を置いてから言った。


「あの、バイト募集していますか」


「あ、はい。まだ募集していますよ」


女の子は少し嬉しそうに笑った。


「今、店長お呼びしますね」


僕は頷き、店内を見渡す。


数人の客が静かに座っていた。


ひとりで本を読んでいる人、スマートフォンを見つめている人。


友人と雑談をしている人。


しばらくして、奥から男性が出てきた。


「君がバイト希望の子?」


「はい」


「…いつから入れる?」


僕は少し考えてから答えた。


「いつでも大丈夫です」


店長は軽く頷き、近くの席の椅子を引いた。


「じゃあ、簡単に面接しようか」


僕は静かに椅子に座った。


カウンターの奥で、コーヒーの香りが広がる。


とても心地よいと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ