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永匣ー次こそは、君を殺さず愛したい  作者: 来襲さん


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5/10

5話

僕の住む北海道は、気がつけばすっかり銀世界になった。


吐く息が白く、視界の端で雪がゆっくりと降る。



あの時の女の子は、死んだだろうか。


階段の途中で転がるように落ちていった背中を思い出す。


途中で手すりにぶつかる鈍い音、短い悲鳴。


その後訪れた静寂。


車の音。


人の気配。


あの時、振り返るべきだったのかもしれない。


死んだかどうか分からなければ、何も残らない。


足りない。


あの時もそう思った。


落ちていく姿は悪くはなかったけれど、ただそれだけだった。


それ以上は何も感じなかった。


ふと、通りの角に小さな花屋が見えた。


ガラス越しにいくつも並ぶ白い花が、雪のように見えた。


吸い寄せられるように店に入ると、鈴の音が小さく鳴った。


暖かい空気と、甘い花の匂いが混ざる。


「いらっしゃいませ」


奥から女性の店員が顔を出す。


雪のように見えた、小さな白い花の前で足を止める。


「これ、なんていう花ですか」


「カスミソウです。可愛いですよね」


近くで見ると、小さな白い花が集まって、ひとつのかたまりになっていた。


軽くて、柔らかそうだった。


あの時の、花壇に咲いていた花だとすぐに分かった。


「年中あるんですか」


「はい、結構人気なんですよ!単体でも、他のお花と合わせても使えますし」


定番の花束なんですよ、と近くにあった花束を見せてくれた。


「こんな風に、染めることもできるんですよ」


「へえ、可愛いですね」


ふっと、口元が少しだけ緩んだ。


足りなかったものは、これだったんだ。

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