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永匣ー次こそは、君を殺さず愛したい  作者: 来襲さん


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3/10

3話

名前も知らない彼女の死は、日を追うごとに消化されていき、やがて誰も口にすることはなくなった。


最初の数日は、噂が流れた。


「自殺だったらしいよ」


「いじめが原因で」


「複雑な家庭だったんだって」


でも、それもすぐに消えた。


彼女の死から3週間が経ち、いつものつまらない日々が戻ってきた。


席がひとつ空いたままでも、誰も気にしなくなる。


笑い声は変わらない。授業も変わらない。


全部、元通りになった。


まるで最初から何事もなかったようだ。


僕だけが時々、思い出す。


花に囲まれた彼女。


全てが奪われていく、全てから解放されていくあの瞬間。


色が抜けていく様子。


あれから、何も起きていない。


少しだけ退屈だった。


もう一度「見たい」と思った。


あの時の気持ちをもう一度味わいたくなった。


学校の帰り道、夕陽が眩しい日だった。


僕は導かれるように、普段は利用しない歩道橋へと向かっていた。


前に女の子が歩いていた。


隣の高校の制服を着た赤毛の小柄な子だった。


周りには誰もいない。歩道橋の階段を登っていく。


鼓動が速くなる。


階段も中盤の終わり頃、僕は歩く速度を上げる。


急いでいるフリをする。


鼓動が速くなる。


彼女との距離が縮まる。


あと、数段。


鼓動が速くなる。


肩に触れた。偶然を装った。


彼女の身体は、少し揺れた。


「えっ…」


か細く、短い声。


そのまま足を踏み外した。

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