えりと鈴のランデブー
ここは上野にある女学校。
袴の少女達が袖を振りながら今日も登校してきます。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
3年生の石原鈴も他の生徒と同様に。彼女が他と違うのはお気に入りの赤い簪を髪にかざしてることだ。
「ごきげんよう鈴さん。」
「ごきげんよう妙子ちゃん。」
妙子ちゃんは鈴と小学校からの幼なじみ。昨日は学校帰りに日々谷の喫茶店まで新作のお菓子を食べに行った。
「鈴さんなんだか嬉しそうね。」
「ええ、だって今日は」
「本当に行くの?」
「勿論よ。」
昨日鈴は妙子と日比谷の喫茶店に行ったとき鈴はグレイのスーツ姿の美青年に簪が素敵だと声をかけられた。
今日はその青年とその簪を買った呉服屋に行くことになった。
「鈴さん、私心配だわ。」
「あら何が?だってえり様は女よ。」
その青年の名は小宮えり。男装はしているが女だ。探偵をしているそうで呉服屋も捜査の一環らしい。
(えり様って。これは何を言っても聞かないわね。)
鈴は以前少女歌劇の男役に恋をしたことがあった。それ以来彼女のことをプリンス様、白薔薇の君様などと言って呼んでいた。今回も同じであろうと妙子は思った。
その日の放課後。鈴は待ち合わせの浅草駅へと急ぎ足で向かった。
掃除で遅くなり待ち合わせ時間に遅れそうであった。
「えり様いらしてるかしら?」
鈴は辺りを見回しえりの姿を探す。
「えり様?!」
グレイのスーツで帽子を被り煙草を吸っている人物を見かけた。他の男性とは違い華奢な体つきから明らかに女だと分かる。
「えり様」
えりは名前を呼ばれるて帽子を取る。
「やあ、鈴ちゃん。」
「遅くなってすみません。待ちました?」
「いや、僕も今来たところだよ。」
えりは加えていた煙草吸殻を地面に置くと足で踏み火を消す。消火されたのを確認するとそのまま駅のゴミ箱へと捨てる。
「鈴ちゃん、行こうか。」
えりは鈴の肩を抱き歩き出す。えりの手が触れてると思うと胸の鼓動がなりやまない鈴。
呉服屋は駅からさほどかからない。駅の目の前にある雷門を通り越した賑わう商店街の一角にあった。
「松本屋」といい、女学生達には人気の店だ。
鈴は袴はここで仕立ててもらってる。
「いらっしゃいませ。」
えりと鈴が店に入ると着物姿の女性販売員が出迎えてくれる。
「こんにちは。お福さん」
「鈴ちゃん、いらっしゃい。」
鈴は店員と顔見知りのようだ。
一方えりは髪飾りが売られてる場所を見る。
鈴が付けている簪と同じ物が並べられている。赤だけでなく、ピンク、白、水色、オレンジと様々な色が置いてある。
「あの、すみません。」
えりはお福と呼ばれた販売員に尋ねる。
「こちらの簪ですが。」
「はい、こちらは人気の商品でございます。」
「彼女もこれと同じ物を買いに来なかったか?」
えりはももかから預かった写真をお福に見せる。




