赤い簪
えりは赤い簪の少女の元へと向かっていく。
「なあ、君。」
「私でしょうか?」
「ああ、その簪素敵だね。似合ってるよ。」
少女はえりに真っ直ぐ見つめられ頬を赤く染める。
「ちょっと貴方、彼女困ってるじゃない。女の子口説きたいなら他をあたって下さる?」
少女の友人は止めるが少女はえりを見つめ硬直している。
「私に何かご用でしょうか?」
「その簪どこで買ったんだい?」
「確か浅草の新装開店した呉服屋さんだったかしら?宜しければ明日一緒に行きます?」
「ちょっと鈴、何約束してるのよ?駄目よ。殿方とご同行なんて。」
この簪の少女は鈴というらしい。
「いいじゃない。だって素敵な美青年ですもの。」
「じゃあ決まりだね。それから僕はこういうものだ。」
えりは鈴に名刺を渡す。
「小宮えりさんってことは女性?!」
「ああ、そうだよ。探偵をしている。宜しくね。」
えりは鈴の手を握る。
「えりちゃん、お話は済んだ?」
後ろからゆきが話しかけてくる。傍らにはももかもいた。
「ああ、済んだ。行こうか。」
えりはゆきとももかの肩に手を添え逃げるように店を後にした。
夕方、事務所に帰宅してからというものゆきがご機嫌ななめだ。
「ゆきちゃん、機嫌直してくれよ。」
えりはソファーに座って不貞腐れてるゆきの隣に腰かける。
「私がいながら他の女の子口説きに行くなんてどうかしてるわ。」
女学生最後の春、彩花の事件が解決したとき、長年の片想いが実り今に至る。
「あのね、ゆきちゃんこれも捜査の一環だ。」
えりはゆきにももかが持ってきた簪を見せる。
「これ見て。」
写真の少女と鈴がつけてる簪が同じ物なのだ。
「じゃあえりちゃんは今日喫茶店にいた鈴って少女があのもう1人のまりさんだって言うの?」
「いや、彼女は違う。まりさんとは似ていない。」
えりは鈴にその簪が売っている呉服屋に連れて行ってもらえることになった。
呉服屋に行けば何か分かるかも知れないという。
「それで明日はゆきちゃんにはももかちゃんの通う女学校に行ってほしい。事件の当日の状況を知りたいんだ。」
「明日はえりちゃんとは別行動なのね。」
ゆきは少し寂しそうな表情をする。
「ゆきちゃん、そんな顔しないで。」
えりはゆきの手を引き自分の膝の上に座らせる。
「ちょっと何するのよ?!」
「そんな顔しないでくれ。僕まで悲しくなるだろう。」
優しくゆきの髪を撫でる。
翌日えりは浅草駅で鈴と待ち合わせをしていた。
「えり様」
袴姿の鈴がやってきた。黄色い生地に毬の入った振り袖を着ている。下は緑色の女袴だ。
「えり様、待ちました?」
「僕も今来たところだよ。」
突然の様付けにえりは若干戸惑いはしたがあまり気にはとめないことにした。
「鈴ちゃん、行こうか。」
えりは鈴の肩を抱き歩き出す。
えりとゆきに若干雲行きが。




