偽まりの正体
「彼女もこれと同じ物を購入しなかったか?」
えりはももかから借りた写真をお福に見せる。
お福は写真を手に取りまりの偽物の少女の姿を見る。
「ええ、彼女はこの店によく男性といらっしゃいますよ。この髪につけている簪もうちで購入したものです。同伴した男性の方が彼女に買ってました。」
「男性というのはこの写真の人か?」
写真の男性は若く洋装姿だ。年は20代前半くらいだ。
「いえ、もっと中年の方かと。和服を着ていて、その方羽織が良い方でしてね。確か貿易商の社長をしてるとおっしゃってました。」
お福は店内に他の客がいないのを確認するとえりの耳元で囁く。
「ここだけの話、この地域の郭に贔屓の娘がいるそうで。」
「そうか、そういうことか。ありがとう。」
えりは花の髪飾りを買うと鈴と一緒に店を出た
2人はその後浅草寺へと入る。
「これ、今日のお礼。」
えりは鈴の髪に先ほど購入した花の髪飾りを翳す。
「可愛い。似合ってるよ。」
「ありがとうございます。あの、お店で分かったことありましたか?」
「ああ、君のおかげだ。これからまたもう1件捜査に行く。」
「私も一緒に行っては駄目ですか?私も何かできることがあれば協力したいのです。」
「すまないが君のような若い乙女が行くようなところではない。今日は帰りなさい。」
えりは去り際に鈴の自宅の住所と電話番号を聞き出す。協力してほしいことがあったら連絡すると。
日は沈み街に明かりがつきはじめた頃、えりは浅草にある花街へと向かう。この辺りは遊郭は1件しかない。
赤門をくぐり、店を1件1件見てまわる。写真に写っているまりとそっくりの少女はいないか。
「あの、すみません。」
えりは店の前で客引きをしている男衆に尋ねる。
「この店にこの娘はいないか?」
えりは男衆に写真を見せる。
「ああ、この娘ならうちにいるよ。客を取るようになって1年だけどもう部屋持ちだよ。」
部屋持ちというのは自分の部屋を持つ階級の高い遊女のことを言う。
大抵遊女は張り店と言って店頭に並び客に選んでもらうのだが部屋持ちは自分の部屋で客を待つのだ。
「じゃあ彼女いいか?」
「ご指名かい?兄さんお目が高いね。」
えりは写真の彼女が待つ部屋に案内される。
部屋にはきょうそくにもたれ掛かる派手な着物姿の遊女がいた。
透き通るような白い肌、黒い髪、凛とした紅い唇。まりそっくりだった。
「本日はお目にかかれて光栄でございます。あちきは露凪と申します。」
「こちらこそ。今日は君に聞きたいことがあって来た。」
えりは露凪に写真を見せる。
「この写真は君だろう?」
「へい、これはあちきでありんす。」




