のぞみの選択
のぞみは白いドレスに白百合の花束を手に持ち招待客の前に姿を現す。拍手で迎えられる中のぞみは1人の燕尾服姿の人物に目を止める。
「そのは様?!」
そのはだ。浅草少女歌劇団の主演男役の襖庭そのは。彼女は招待客の中に想い人の姿を見つけたのだ。
オーケストラの演奏がおわるとのぞみは重信と共に招待客に向けて一礼する。
「本日は私達の婚約披露の場にお集まり頂きありがとうございます。」
重信がお礼の言葉をのべる。しかしのぞみはそのはに視線を向けている。
「のぞみさん、お手を」
オーケストラの音楽が再び奏でられると重信は手を差し出す。婚約披露の場では新郎新婦がダンスを踊るのだ。のぞみは差し出された手を取ろうとする。しかし
「ごめんなさい。私最初に踊る人は決めてありますの。」
のぞみはその人の方に歩いていく。ざわつく会場。しかしのぞみは全く気にしていない。
そのはの前でとまるのぞみ。
「のぞみさん?!」
「そのはさん、私と踊って頂けますか?」
えりとももかを除く会場の招待客は驚いて様子を見ている。
「のぞみ、花嫁はまず最初に花婿と踊るのよ。」
母である中原夫人が諭そうとする。
「中原公爵、これはどういうことですか?!」
夫人だけではない。重信の父である朝霧財閥の会長も狼狽えている。
「会長私にも分かりません。」
のぞみの父中原公爵も右に同じだ。
しかしのぞみは平然とした態度でそのはに手を差し出している。
「のぞみさん、今日は大事な婚約式。新郎様がお待ちですよ。」
そのはは優しくのぞみを諭す。
「そのはさんのことずっと好きでした。貴女への気持ちに蹴りをつけるために踊って頂きたいのです。」
「分かりました。」
そのはのぞみの手を取る。
二人は広間の中心へと向かう。
オーケストラの音色に導かれ軽やかにステップを踏む。
「お嬢様、お上手ですね。」
「これでもバレエは幼い頃から習っておりましたから。」
そのはとのダンスが終わると重信とも踊る。婚約披露のパーティーは無事幕をおろした。
翌朝。
「私がやったって証拠はあるのか?」
「君は僕からのぞみさんを取られたくなくてやった。違いますか?」
「私は彼女のことは何とも思っていない。それに昨日のダンスは彼女にとっては思い出作りみたいなの物だろう。君こそのぞみさんの気持ちが私に向いてるのに嫉妬したんじゃないのか?」
ももかは誰かが争っている声で目を覚ます。隣のベッドを見るとえりはいない。ももかは自分の手を見る。まだ感触が残っている。昨日の婚約披露パーティーでえりと踊ったときの感触が。
「君達落ち着きたまえ。」
えりの声を聞き廊下を出る。そこにはえりの他にそのはと重信がいた。
「今調べてる最中だ。ここで議論しても仕方ないだろう。」
「えりさん、何があったのですか?」
ももかはえりに尋ねる。
「ももかちゃんか。昨晩のぞみさんが遺体で見つかったんだ。」




