婚約披露パーティー
別荘の広間ではのぞみの婚約披露パーティーが行われた。きらびやかなシャンデリアにオーケストラの生演奏、燕尾服やドレスの紳士淑女の招待客。皆のぞみの婚約を祝福するために集められた。
のぞみは控え室で白のドレスに着替えている。しかしのぞみの表情は暗い。
「のぞみ、どうなさったの?」
母である中原夫人は心配そうに声をかける。
「お母様、本当に結婚しなければいけないかしら?」
「何言ってるの?相手は財閥の御曹司よ。それにえりさんだっておっしゃっていたじゃない。」
えりは昼間岬から飛び降りた少女が通っていた女学校に事情聴取に行った。彼女は大好きなお姉様が卒業と同時に結婚することになり、失恋の痛みで身投げしたのだ。人身売買や誘拐など事件性は何もない。
「だけどももかさんは銅像の少女の霊が仲間を呼んでいると。」
「のぞみ、そんなのは迷信だわ。貴女はもうすぐ財閥夫人になるのよ。いつまでも子供のようなことを言っていてはいけないわ。」
のぞみは母に諭される。
「失礼致します。」
ノックと共にのぞみの婚約者が入ってきた。朝霧財閥の長男重信だ。今は帝都大学で経営学を学んでいる。来年の3月卒業と同時に席を入れる予定だ。
「重信さん、娘を宜しくお願いします。」
中原夫人は重信に挨拶をすませると先に部屋を後にする。
「のぞみさん、僕達も参りましょう。」
重信に差し出された手を取るのぞみ。表情はまだ浮かない。重信は美青年だがどこか視線が冷たい。眼鏡のせいだろうか。初対面のときものぞみは彼に対してあまりいい印象はない。そもそものぞみはそのはにしか興味がないのだから。
その頃婚約披露のパーティー会場である大広間では招待客が集まってきている。ももかもまりや梅子、そしてえりとともに会場にいた。
「あの白ヶ池まりさんですか?」
招待客の1人が赤いドレスに薔薇のコサージュをつけたまりに話しかけてきた。知り合いだろうか?
「貴女も招待されていたのですね。バレエ公演拝見しましたよ。」
「まあ、光栄ですわ。」
「今度の公演はいつですか?」
「それが今は公演はお休みしてますの。学業に専念したいものですから。」
ウィーンに留学していたのもあるかまりはすっかり場馴れしている。
「お姉様」
黄色いドレスの梅子がももかに話しかける。
「お姉様はえりさんと踊るの?そのためにドレス新調なさったのでしょ?」
ももかのドレスは淡いピンクだ。えりに見せたくて新調したのだ。しかし
「梅子、そうしたいのは山々だけどどうかしら?」
ももかはえりの方に目をやる。
えりは女性の招待客に囲まれている。彼女と踊るには競争相手が多そうだ。その時
オーケストラの演奏が鳴り響き、広間の扉が開かれる。
扉の前には新郎新婦が立っていた。




