パーティーの招待客
「何だって?!襖庭そのはを婚約披露のパーティーに招待したいだと?!」
ももかから話を聞いたえりは大声をあげる。
ももかはのぞみや男性の話を聞いて思いついたのだ。崖からの飛び降りは幽霊の仕業、だったらその崖にのぞみを近づけなきゃいい。そのためにはのぞみを思い悩ませないこと。そこでももかが考えたのはそのはを婚約披露のパーティーに呼び思いきって想いを打ち明けてしまおうということだ。
「あのね、ももかちゃん。君の言いたいことは分かる。だけど婚約披露の場で他の人に想いを告げるなんてなったら騒ぎになるだろう。それに婚約披露のパーティーは今夜だ。」
それもそうだ。そのはに招待状を出しても今日中には届かない。それに告白したところでそのはがのぞみを受け入れるとも限らないのだ。
「彼女ならわたくしが招待しましたわ。」
そこにやって来たのは中原公爵夫人であった。つまりのぞみの母親だ。
中原家は舞台や活動写真で使う衣装をつくる委託会社を所持している。浅草少女歌劇団とも契約しているのだ。
「のぞみがそのはさんのふあんでお祝いの席には必ず招待しているのよ。」
(それなら好都合だわ。)
「ねえ、えりさん私いいこと思いついたわ!!
」
中原夫人が部屋を後にするとももかが声をあげる。
「いい事ってなんだ?」
ももがえりの耳元で囁く。
夕方のぞみは自室の姿見の前に立つ。女中に婚約披露のドレスを着せてもらっている。
髪を結ってもらい白百合の髪飾りをつけてもらう。
「お嬢様、できましたよ。」
しかしのぞみは浮かない顔をしている。
ドアのノックと共に入ってきたのは中原夫人だ。
「お母様」
「のぞみ綺麗よ。婚約おめでとう。」
のぞみは表情一つ変えず無言のままだ。
「のぞみ、なぜそんな顔をするの?花嫁になる娘がそんな顔をしてはけません。」
「お母様、本当に結婚しなければいけないの?」
「当たり前じゃない。相手は財閥の御曹司ですよ。これ以上に素晴らしい縁談はないわ。お客様もお待ちだわ。行きましょう。」
母に諭され仕方なくのぞみは広間へと向かう。
その頃玄関先では招待客が着々と姿を表す。馬車からは着飾った紳士淑女達が降りてくる。
玄関の前で止まった馬車からは燕尾服の紳士が降りてくる。
「ようこそいらっしゃいました。ムッシュ。」
紳士は黙ってポケットから名刺を取り出し執事に渡す。
名刺には「襖庭そのは」と書かれていた。
「これは失礼致しました。マドモワゼル。」
「こんな格好だからね。構わないよ。」
そのははメイドに案内されるまま広間へと向かう。
次の馬車からはタキシードの紳士にエスコートされ青いイブニングドレスの淑女が降りてきた。
「社長、本当に着いてきて宜しかったですか?」
「構わないよ。君だって新作の取材したいだろう。ゆきちゃん。」




