試着室の罠
「貴女がマダムリーズですね?」
リーズは目の前の青年に尋ねられる。
「はい、そうです。申し訳ありませんが、わたくしの店には紳士服は置いてありませんの。」
「いや、僕はお客ではない。こういう者です。」
青年は名刺を差し出す。
「小宮えり 小宮探偵事務所」
名刺にはそう書かれていた。
「探偵さん?」
「はい、そしてこちらは僕の秘書です。」
えりはゆきを紹介すると2人は席を勧められる。
「マダム、本日は突然お邪魔して申し訳ありません。貴女にお聞きしたいことがあります。」
えりは梅子を見て頷く。梅子は鞄から写真を取り出す。
「マダム、こちらのご令嬢はお店に来たことはありますか?」
写真に写っているのは梅子のお姉様えりかである。リーズは写真を手に取り近くで見る。
「ええ、2週間ほど前いらっしゃいましたわ。そちらの梅子様と。」
リーズはお咲を呼ぶと緑色に丸襟のついたワンピースを持ってきてもらう。
「このワンピースを買っていかれましたわ。」
「マダム」
今度は梅子が尋ねる。
「えりかお姉様はあの後カチューシャを忘れて取りに戻った1人で戻ったのですが。」
「分かりませんわ。」
はぐらかされてるのだろうか?
「ええ、いらっしゃいましたわ。」
洋服を整理しているサリーが答える。
えりかが帰った後リーズは顧客からの電話を受け邸宅まで配達に出ていた。えりかが来たときはサリーが対応したという。
「カチューシャは試着室にありました。」
「マダム、試着室を調べさせてもらっても宜しいですか?」
「わたくしは疑われてるのかしら?」
「いえ、貴女が無実と信じているから協力をお願いしています。お願いします。」
「えりさん、もしも試着室の床が落とし穴になっていたら。」
梅子は心配している。梅子の愛読している少女雑誌の怪談特集に掲載されていた話なのだ。ちなみに床の地下空間に落ちた少女は海外の売春宿に売り飛ばされたのだ。
「梅子ちゃん、私もその話は読んだけどあれは作り話よ。」
ゆきが慰める。
「そのような話はパリにいた頃もオルレアンのブティックでそのような噂がありましたわ。わたくしも犯人扱いは気が進まないのでどうぞ心行くまで調べて下さい。」
リーズの許可が降りえりはまず試着室を調べる。床を叩いてみるが空洞があるような感じはない。鏡も壁に取り付けられている。
壁にも怪しい点はない。
バックヤードも怪しい点はなく、行方不明になった少女達の姿はなかった。
「マダム、特に怪しい点はありませんでした。梅子ちゃん、君も安心していいよ。マダムは無実だ。」
「良かったわ。これでわたくしの容疑はめでたく晴れたのね。」
しかしまだ事件は解決していない。えりかはどこへ行ったのか?えりかだけでない。
「マダム、ここで以前リリカというロシア人の少女が働いていませんでしたか?」
えりは荻島公爵から預かった写真を見せる。
「ええ、いたわ。今は公爵様と結婚して辞めてしまったけど旅行に行く度お土産を持ってあ遊びに来てくださいますわ。確かこの前も。そうだわ、2週間前だったわ。」
彼女も行方不明で夫から捜索以来を受けている。そう言おうとした時だった。
「すみません。」
来客を告げるベルと共に1人のロシア人紳士がやってきた。




