えりかの行方
「それがお姉様もここ暫く学校にいらしてないのよ。」
「お姉様ってももかちゃんが?」
「違います。えりかお姉様です。」
梅子には「お姉様」と呼ぶ人が二人いる。1人はももか。血の繋がりがある本当のお姉様である。そしてもう一人はえりか、彼女とは血の繋がりはない。同じ女学校で友達以上に親しくしている上級生だ。下級生は親しい上級生を「お姉様」と呼んでいる。
「その、えりかお姉様が女学校に来ていないの?」
「そうなんです。」
梅子が最後にえりかと会ったのはマダムリーズの店に行った時だ。翌日から学校には来ていない。心配になって家を訪れたら帰ってきてないという。両親も心配になって捜索している最中だ。
「えりかお姉様の家は門限が厳しいから夜通し遊び歩いてるなんてことはしないと思うわ。きっとマダムリーズの店で捕まって売り飛ばされてしまったのよ。」
梅子の実の姉ももかもかつて公爵家に騙され海外の娼館に売り飛ばされそうになったことがある。その時も取引先が海外の斡旋業者だった。
「ちょっと、梅子ちゃん!!」
カウンターから話を聞いていた花がホールに現れる。
「今の発言はちょっと酷いんじゃないかしら?マダムが人身売買の仲間だなんて!!」
「私だって信じたくないわよ。でもえりかお姉様はマダムの店に行っていなくなったのよ。」
「リリカお姉様はマダムの店で働いていたのよ。なのにマダムがお姉様を売り飛ばすわけないでしょ?!」
「じゃあえりかお姉様はどこに行ったって言うのですか?!」
「知らないわよ!!」
ゆきは梅子と花の喧嘩を見兼ね店を出た。
翌日えりとゆきは梅子に案内してもらい、マダムリーズの店へと向かった。
「気づかなかったな。同じ日比谷にこんな店があったとは。」
「えりちゃん、何か分かる?」
「とりあえず入ってみるか。」
「あの、」
入り口で梅子がえりの腕を引く。梅子はどこか怯えている。
「どうしたんだ?」
「やっぱり行くのですか?マダムがもしかしたら人身売買に関わっているかもしれませんよ。」
「梅子ちゃん、マダムが人身売買の組織の仲間かもしれない。でも違うかもしれない。どちらにしろ調べないと分からないことだろう。調べて違うって分かれば安心できる。さあ、行こう。」
梅子はえりに促され店内へと入る。
来客を告げるベルが店内に鳴り響く。
「いらっしゃいませ。」
お咲が対応する。
「やあ、こちらはマダムリーズのブティックだね?」
「はい、そうです。」
「マダムはいるか?」
お咲は一礼して奥にいるリーズを呼ぶ。
「お待たせ致しました。」
奥から紺のクリノリンのドレスに長いブロンド髪の貴婦人がやって来た。
「貴女がマダムリーズですね?」
「はい、わたくしがリーズですわ。」
「僕はこういう者です。」
えりは名刺を渡す。
「貴女にお聞きしたいことがあります。2週間前に雛河えりかさんはこちらにいらっしゃいませんでしたか?」




