淑女達の失踪
「それで奥様がいなくなったのはいつ頃ですか?」
「2週間前です。」
ここはえりの探偵事務所。今は華族であり資産家の荻島公爵がえりの元に相談に来ている。彼の妻が行方不明なたのだ。
「奥様はその日どちらへお出掛けでしたか?」
「マダムリーズのブティックに行くと。パリに行ったお土産をかつての同僚達に渡したいと。」
妻の名前はリリカといい、ロシアから亡命してきた貴族の令嬢である。マダムリーズというパリから来た貴婦人のブティックで結婚前には働いていたという。
「奥様のお写真はありますか?」
「はい、こちらです。」
荻島公爵はリリカの写真を見せる。
ブラウンの髪に縦ロール、水色のドレスを着た貴婦人だ。
「こちら預かりしても宜しいでしょうか?捜査に役立てたいので。」
「構いませんよ。では私はこれで。」
えりは事務所の鈴を鳴らす。
「失礼致します。所長。」
やって来たのはメイドの秋だ。日比谷に引っ越してきてから雇ったのだ。
「お客様がお帰りになられる。お見送りを頼む。」
「かしこまりました。」
秋は荻島伯爵を玄関までお見送りする。
「ただいま。」
伯爵と入れ替わるようにゆきが帰ってくる。
「えりちゃん、今の方は?」
「依頼主だ。リリカって貴婦人の捜索だがなにか知らないか?」
「リリカ?その名前今日篠山さんと行った喫茶店のカフェガールも言ってたわ。」
ゆきは一話完結の読みきりを来月の少女画報に載せる打ち合わせを銀座の喫茶店でしていた。
来客を告げるドアのベルが鳴る。入店してきたのは梅子である。
「あっゆきさん。」
梅子はゆきに気づくとゆき達と同じテーブルに座る。
「いらっしゃいませ、梅子ちゃん。」
「ごきげんよう、花さん。」
花とは喫茶店のカフェガールだ。花は今年女学校を卒業し、実家の喫茶店で働いている。半袖にピンクの丸襟ワンピースに白いフリルのエプロンをつけ、髪には水色のカチューシャをつけている。これもマダムリーズの店で作ってもらったものである。
ちなみに梅子にマダムリーズの店を教えたのも花である。
「花さん、今日は妙さんは?」
妙というのは喫茶店で働いている女優志望の女性だ。「月子」という芸名で活動している。映画のオーディションに最終選考まで残ったが、合格した女優が突然失踪。急遽代役としてオファーが来た。撮影のため暫くは店を休んでいる。
「梅子ちゃん、失踪といえば、リリカお姉様とも音信不通なのよ。お店にも来なくなっちゃって。」
リリカお姉様と言っても本当の姉ではない。梅子とえりかのような関係である。
「あら、梅子ちゃんは今日はお姉様は一緒じゃないの?」
「それがお姉様も暫く学校にいらしてないのよ。」




