多江子と鞠花
「スカーレットピンパーネルの正体は君だね、城ヶ崎多江子さん、旧姓大崎多江子さん。」
騎士は被っていた帽子と鬘を外す。
「貴女は探偵のえりさん?」
ゆりなが問う。騎士の正体はえりだった。
えりは多江子の家を訪れた後劇場へと向かいそのはと会った。
「そのはさん、お忙しい中申し訳ありません。」
「今日はどうされたんです?」
「実は犯人が分かりました。犯人は真剣でゆりなさんを刺すつもりです。確実に犯人を捕まえるために協力して頂けませんか?」
「協力って何すればいいのですか?」
「僕を舞台に上げて下さい。扮装して近づいて犯人を仕留めます。」
そのはは最初は素人を舞台に出すことは躊躇った。しかしえりが剣術を習っていたことを話すとゆりなの役者生命には変えられないと思ったことで上に相談し特例としてえりが舞台上に上がることが許された。
ちなみにこの事を知っていたのはそのはとプロデューサー、そして劇団の理事長だけだ。
「さあ、多江子さん、もう観念して下さいね。」
えりは多江子の被る帽子を外す。
「多江子さん?!」
ゆりなは女学校時代の友と再会を果たした。
「鞠花ちゃん。」
「多江子さん。」
ゆりなが多江子に近づこうとしたとき
「ゆりなさん」
えりが制止す。
「彼女に近づくのは危険ですよ。」
「でも、ねえ多江子さんどうしてこんなことしたの?」
「そうだ。君達は親友だったのだろう。」 「親友?親友だったのよ。」
「だった?」
多江子の一言でゆりなの表情が暗くなる。
時は遡ること6年前。
多江子とゆりなもとい鞠花は千葉の女学校の4年生であった。
女学校では毎年演劇発表会が行われている。
多江子達の組はフランスの小説「紅はこべ」を演じた。少女雑誌でも紹介されたこともあり、またその年に宝塚少女歌劇団が上演したことにより生徒達からは好評を得た。
「楽しかったわね。演劇発表会。」
発表会のあった日そんなことを言いながら多江子と鞠花は手を繋ぎながら帰宅する。
「三井さんのマルグリット美しくてえれがんとだったわ。さすがは財閥のご令嬢ね。」
「そうね、素敵だけど鞠花ちゃんのマルグリットも見てみたかったわ。」
「私の?」
配役はオーディションを行い投票で決めた。鞠花もマルグリットのオーディションに参加した。しかしたったの一票差で敗北してしまったのだ。
「じゃあ多江子さんがパーシーをやってくださる?」
「いつ?宝塚少女歌劇団に入団した時に?」
多江子は冗談ぽく笑う。
「ええ、実は。」
宝塚少女歌劇団の発足により、日本各地に少女歌劇団が誕生していた。
「それで浅草にも今年できたのよ。お父様が女学校を卒業したら受験していいって言って下さって。浅草ならそんなに遠くないからいいだろうってねえ、多江子さん一緒に受けましょう。バレエのお教室紹介するなら。」
多江子は鞠花の手を握りお願いする。
多江子は無言で首を縦に振る。
「嬉しいわ。約束よ。」
2人はその場で指切りをした。
「しかしわたくしは受験はできませんでしたの。」
多江子はその日のうちに両親に相談した。鞠花と浅草の少女歌劇団を受けたいと。しかし許可は降りなかった。それどころか父は自分の会社の部下を婚約者として連れてきて女学校の卒業を待たずに結婚させてしまった。
「多江子さん、私もう気にしてないわ。だからこんなこと」
「貴女が良くてもわたくしは良くないわ!!貴女の姿を劇場や雑誌で見るたびに悲しくなった。なんで貴女だけ?私じゃないのって。」
「それで御披露目の演目を知った時に我慢が解かれたってわけか。」
「そうよ。うわーん!!」
多江子はその場に倒れ込み泣き崩れる。




