手紙
ゆきは多江子に歌劇画報を見せる。
「この記事は読んだことありますわ。私のこと書いてくれたんだね。」
多江子はゆりなが入団してからも応援していた。公演も観に行ってるし雑誌も買っている。公演の度にはお花を送ったり手紙のやりとりもしている。
「多江子さん、」
えりが口を開く。
「最後にゆりなさんとお会いしたのはいつですか?」
「実際に会ったのなんてもう女学生の時が最後だわ。今は手紙のやりとりだけ。」
「差し支えなければお手紙見せてもらっても宜しいですか?」
「分かりました。」
多江子は応接間を出ると自分の部屋から手紙を持ってくる。
数枚の封筒だった。どれも花柄、桃色、レースなど娘役らしく可愛いものだ。
「では拝見致します。」
えりは封筒を開き便箋を取り出す。
「多江子さんへ
いつも舞台観劇してくれてありがとう。
実は次の公演から私は主演娘役として舞台に立ちます。御披露目の演目は女学校のときに好きだった紅はこべよ。懐かしいわ。演劇発表会で多江子さんが演じたパーシー。あの時の剣さばき今でも忘れられないわ。
多江子さん覚えてる?女学校の時演劇発表の後貴女が私に言ってくれたこと。
鞠花ちゃんのマルグリットが見たかった。私て多江子さんの夢が叶います。是非観に来て下さい。
大正11年5月2日 花城ゆりな(大城鞠花)」
大城鞠花はゆりなの本名である。この手紙はゆりなが多江子宛に書いた一番新しい手紙だ。他の手紙も観劇やお花のお礼、稽古場の笑い話など当たり障りのないものばかりだった。
夜行(あの予告状のことは話してないようだ。)
「ありがとうございます。では多江子さん、こちらのことはご存知ありませんか?」
えりが出したのは予告状だ。
「何ですか?これ」
「気になるなるならどうぞお読みになって構いませんよ。」
予告状に目を通す多江子。彼女の顔色はみるみる青ざめていく。
「大丈夫ですか?」
「えりさん、でしたっけ?毬花ちゃんを助けて!!このままじゃ毬花ちゃんが真剣で突き刺されてしまうわ。」
「分かりました。勿論彼女は助けます。」
夕方、えりとゆきは城ヶ崎家の屋敷を後にした。
「なあ、ゆきちゃん。先に帰っててくれないか?」
帰り道突然えりが切り出す。
「どうしたの?」
「僕はちょっと寄りたいところがあるんだ。」
えりはゆきと別れると浅草行きの列車に乗る。
彼女が向かうのは浅草少女歌劇団の稽古場である。
劇団は劇場と稽古場が隣接した場所にある。
稽古場の入り口でそのはとの面会をお願いした。本来は面会は予約がある者としかできないがえりが名刺を見せ、調査の一環だと言ったら通してくれた。
「お待たせしました。」
そのははスーツ姿でえりの前に現れた。
「そのはさん、実は予告状のことでご相談があります。」
「もしかして犯人分かったのですか?」
「はい、確実に捕らえるためにどうしても協力して頂きたいことがあります。ゆりなさんが危険です。」




