ゆりなの親友
えりとゆきが帰宅すると家の前に一台のリムジンが停まっていた。
「奥様、どうぞ」
運転手が後方席の扉を開けると中から麻友が出てきた。
「麻友ちゃん?」
麻友だった。
えりとゆきは事務所に麻友をあげる。
麻友は一冊の雑誌を出す。浅草少女歌劇団が出版されている物だ。中には主演娘役が決まったときのゆりなのいんたびゅーが書かれていた。
ゆりなは女学生時代小説紅はこべのふあんで完読した。作中に登場する女優マルグリットに憧れていた。
「これはさっきそのはさんから聞いた話と一緒だな。」
「それで本題はここからなの。」
ゆりなは女学校の4年生のときに級で紅はこべを上演した。しかしひろいんのマルグリット役は指折りの華族令嬢である少女が演じゆりなは親友のシュザンヌ役だった。その時に主役のパーシーを演じたのがゆりなの親友だったという。
ゆりなは親友から貴女のマルグリットも見たかったと言われ舞台の道を選んだ。
「えりちゃん、紅はこべはゆりなさんの原点ってことなのよね。」
「そうだな。」
「麻友ちゃん、そのゆりなさんの親友って方心辺りあるか?」
あれから1週間後、えりとゆきはとある旧家を訪れることになった。
えりがインターフォンを鳴らす。
「ごめんください。」
「どちら様でしょうか?」
着物姿の女中が中から出てきて対応する。
「私こういう者です。」
えりは名刺を女中に渡す。
「探偵さん?」
「はい。こちらは秘書のゆきです。」
ゆきは女中に会釈する。
「奥様。多江子さんはご在宅でしょうか?」
「はい、おります。どうぞ。こちらへ。」
大崎多江子。それはゆりなの女学校時代の親友であった。彼女がかつてゆりなのマルグリットも見たかったと言った。ゆりなが少女歌劇団に入るきっかけを作ったのだ。
「お待たせ致しました。」
女中が扉を開けてやってきたのは白い丸襟のブラウスに赤いフリルのスカートの女性だ。髪は黒髪を下ろしている。年齢は見た目からしてえりよりも若い。
「貴女が大崎多江子さんですか?」
「はい、といっても大崎は旧姓ですが。」
今は結婚して城ヶ崎多江子になっている。
「突然の訪問失礼致します。私こういう者でして。」
えりは多江子に名刺を見せる。
「探偵さんね、女中から話は聞いたわ。それにしても男役のような凛々しさ。少女歌劇団は受験なさらなかったの?」
「僕が女学生の頃はまだ宝塚すら発足されてませんでしたのに。」
「勿体ないわ。あと少し早く産まれていれば良かったですわね。」
多江子は冗談を言って笑っている。
「ところで本題に入っても構わないか?」
「そうだったわね。それでお話って何かしら?」
「ゆきちゃん。」
ゆきは鞄から雑誌を取り出す。ゆりなのいんたびゅーが載せられている浅草少女歌劇団直販の雑誌である。
「これは歌劇画報ね。私も読んでるわ。」
「ではこの記事もお読みになりましたね?」
ゆきはゆりなの特集が書かれている頁を見せる。




