すたー襖庭そのは
「日向坂梅子です。いつも姉がお世話になってます。白ヶ池まり様。」
日向坂??
まりにはその名に聞き覚えがあった。
「日向坂って確か?」
「そうですよ。お姉様。私今は日向坂ももかです。」
それはももかの本当の母の名前であった。えりの力添えによりももかは本当の母である日向坂花江公爵夫人と再会できた。
今は日向坂家で一緒に暮らしている。
「じゃあ梅子さんがももかをお姉様と呼んでいたのって。」
ももかと梅子はエスではなく血の繋がった姉妹なのである。
梅子は浅草少女歌劇団の大ふあん。海組の主演男役の一和響に恋している。ももかは最初は梅子の付き添いで観に行ったが今ではすっかり虜になっている。
「えりさんみたいな方がこんなにもいらっしゃるのですね。」
ももかは男役にも勿論娘役にも興味を示している。
「お姉様、こちらの方。」
ももかが見せたのは少女歌劇団が発行している雑誌である。
そこに掲載されていたのは星組主演娘役のゆりなの記事だ。
「ゆりなさん、素敵ですよね。次の御披露目公演は必ず観に行こうと思ってますの。」
まりは記事に目を通す。
「ももか、この雑誌借りてもいいかしら?」
まりは美伶と麻友をももか達のテーブルへ呼ぶ。
その頃えりとゆきは少女画報の出版社に向かっていた。
出版社では浅草少女歌劇団の星組主演男役の襖庭そのはの特集のための写真撮影が行われていた。胸元にレースが使われた白いブラウスに黒いスーツといった英国紳士のような姿のそのははカメラの前に立ち満面の笑みを見せる。
撮影が終わると担当の編集者が待機していた。
「襖庭さん、貴女に会いたいという人がいらっしゃってます。」
「誰だい?」
「探偵の小宮えりさんという方ですが。」
「こないだの人身売買の斡旋業者を捕まえた彼女か。通してくれ。」
えりの活躍は新聞にも掲載されそのはも噂を耳にしていた。
そのはは撮影を終え応接室へと案内される。そこにはスーツ姿のえりと丸襟ワンピースのゆきが待っていた。
「初めまして。襖庭そのはさん。お忙しい中お時間頂きありがとうございます。」
えりは名刺を渡す。
「えりさん。お噂は耳にしております。」
名刺を渡されるとそのはは席に座る。
「本題に入りましょう。そのはさん、こちらに見覚えはございますか?」
えりはゆりなに送られてきた予告状を見せる。
「はい、これは劇団に送られてきた物ですね。私も相談されました。」
今流行りのタイプライターで打たれた文字で書かれている。
「どなたか心当たりはありませんか?」
「タイプライターは歌劇団の編集部も使いますが花城を恨んでいる者はいないと思います。」
劇団の内部の犯行ではないのか。
「えりさん、花城は女学生時代原作紅はこべのふあんだったんです。」
御披露目が紅はこべに決まったときは大変喜んでいたという。劇団内では中止もしくは演目を変えようって話もしたがゆりなは首を縦に振らなかった。
「マルグリットを演じるのはずっと夢だって花城は言ってました。だからなんとしてでも公演を成功させたいんです。えりさん、何としてでも犯人を見つけて下さい。」
「勿論です。僕にできることは全力でお手伝いします。」




