乙女の嫉妬
「ゆきちゃん?!」
ゆきが振り返るとえりの姿があった。隣には麻友もいる。
「ゆきちゃん、こんなところでどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないわよ。だってえりちゃん女の人と出かけるって言うから心配で。」
ゆきは甘えたがりな子供のようにえりに抱き付く。
「ゆきちゃん、彼女は依頼人だって前にも話しただろう。」
「だけどこの方えりちゃんの昔の恋人じゃない。」
「まあ、貴女どこでそれを?!」
その発言を聞いて一番驚いているのは麻友だった。
「篠山さんから聞きました。」
篠山あさ美。ゆきの小説を掲載している少女雑誌の編集部員でありゆきの担当だ。ゆきやえりと同じ桜咲女学校の卒業生でありえりとは同級生だった。
「そうだったのね。でも安心してね。わたくしはもう夫がおりますの。」
そう言って麻友は左手の薬指を見せる。指にはダイアモンドの指輪がはめられていた。
「それよりもわたくしそちらのドレスのお嬢さんのが心配だわ。」
麻友が目をやったのはまりだ。まりは先ほどから落ち込んでいたのか何度もため息をついている。
「はぁ。」
「まりさんしっかり。」
美伶が心配そうに声をかける。
「ゆきさんはいいわ。でもわたくしはまだ。」
まりは妹のももかが他の少女と歌劇団の舞台を観に来てるのを知って追ってきたのだ。しかし彼女の姿はまだ見つけていない。
「こちらの方が重症だわ。えりさん、わたくしは彼女達に着いていくから出版社の方はゆきさんと行ってもらえるかしら?」
「勿論ですよ。えりちゃん行こう。」
ゆきはえりの腕を取り去っていく。
その場に残ったのは麻友とまりと美伶だ。
「それで貴女の妹探しましょうか?」
「それなら喫茶店行きましょう。駅前の」
喫茶店とは先ほどまりが美伶と入ったところだ。劇場と近く歌劇団の団員やふあんが出入りするのだ。ふあん達の社交場でもある。
店内に入って席に着いた3人だがももからしき姿が見当たらない。その時
「ももかお姉様。早く。」
「そんなに急かさないで。梅子。」
まりは妹の名前を聞いて入り口の方を見る。袴姿の女学生らしき少女が2人来店してきた。1人は桃色の上衣に桃色のリボンをしている見覚えのある少女。ももかだ。もう1人は肩くらいの長さの黒髪で髪には赤いカチューシャをしている。袴は緑色の上衣に下衣はももかと同じ水色の女袴だ。
まりは二人がテーブルに案内されていくのを目で追う。
「まりさん、気になるんでしょ?」
「だったら直接ももかさんに聞いてみたらどうかしら?」
正直裏切られかもしれない不安はあった。しかし美伶と麻友に後押しされ恐る恐るももかの元へ向かう。
「ももか。」
すたあの話に花を咲かせているももかに声をかける。
「お姉様。お姉様も海組の舞台観に来てらしたのですね。」
「違うわよ。その娘誰?説明してもらおうかしら?」
「お姉様はまだ会ったことなかったですね。私の妹の梅子です。」
「日向坂梅子です。姉がいつもお世話になってます。」




