歌劇団への予告状
新シリーズ始まります。
少女歌劇団が舞台です。
えりは花江の計らいで事務所を日比谷に移した。かつてはアパートの一室を自宅兼事務所にしていた。しかし娘のももかを売春斡旋業者から助けたことで日比谷にある一軒家を提供してくれた。
1階がえりの事務所とゆきの書斎になっており2階では寝食をしている。
えりが事務所で資料の整理をしているとインターフォンが鳴る。いつもならゆきが応対してるがゆきは今日は出版社に出向いている。
えりはドアの元へ行き来客の姿を確かめる。
「お久しぶりでございます。えりさん」
桜模様の訪問着を着た物腰の柔らかな貴婦人が立っていた。
「君は麻友ちゃん?!」
来客はかつてえりが女学校時代に親しくしていた1つ下の麻友であった。
麻友は宮家に嫁いだ。社交界にも顔が知られている。日比谷に男装の探偵がいることも噂で耳にしていた。
先日の高宮家の少女売買の事件の記事を夫が新聞で読んでいてそこに写真に写っていたのがえりだった。
新聞には男装の探偵えりが見事事件解決し少女達を救ったと書かれている。
「えりさんのお噂を聞いて今日は来ました。」
「まあ、立ち話も何だからあがってくれ。」
えりは麻友を事務所へと通す。
「さあ、どうぞ。それにしても何年ぶりだ?君と会うのは。」
「実は今日相談したいことがあるのです。」
「相談?」
えりに席を勧められると麻友は手提げ鞄から封筒を取り出す。
「えりさん、こちらを解決してほしいのです。」
白い封筒に椿の花びらが貼られている。まるで小説紅はこべのようだ。差出人の名前は書かれていない。封は開けられている。
「中見てもいいか?」
「ええ。」
えりは便箋を開く。
「浅草少女歌劇団様
ごきげんよう。
来週の月曜日ついに新作紅はこべの初日ですね。ひろいんのマルグリット役の花城ゆりなさんきっと美しい姿で現れるでしょう。その時は彼女の役者生命を頂きに参ります。私の華麗な剣さばきと共に。
素晴らしいショーになると思うと今から楽しみです。
怪盗 スカーレットピンパーネル」
この手紙が3日前に劇団に送られてきた。麻友は主演娘役花城ゆりなのふあんで後援会も立ち上げている。ゆりなが不安になって麻友に相談してきたのだ。
「公演にちなんだ名前を名乗るとは犯人はこの演目によほど執着があるのか?」
Scarlet Pimpernel は紅はこべを英語にしたものだ。
「分からないわ。次の紅はこべはゆりなちゃんの主演娘役御披露目公演なの。だから何としてでも阻止したいわ。」
「話は分かった。今度ゆりなさんに会わせてほしい。話も聞きたいからな。」
「ええ、是非劇場に今度行きましょう。」
翌週えりの家の前に高級車が止まった。中から出てきたのは麻友であった。2人は麻友の家の車で劇場へと向かおうとしている。
「お待たせ。えりさん。」
「今日はよろしくね。僕の姫君。」




