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乙女探偵団が通る  作者: 白百合三咲
スピンオフ
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33/67

牛飼いと姫~後編~

 麻友はいたたまれなくなり部室を去る。その日は稽古には出ずそのまま家に帰った。

家の使用人達には早い時間にそれも1人で帰ってくるなど奇妙に思われたが体調が悪いと言ってごまかした。

所詮えりからすれば役作り。そうなんだ自分に向けてくれる微笑みも握ってくれる優しい手も全て演技なのだ。

そう思うと涙が出てきた。      


あれから一週間麻友は本当に体調を崩し学校を休んだ。しかし布団に横たわっていても脳裏に浮かぶのはえりのことだけだった。



 翌週麻友は久々に学校の門をくぐる。しかし向かったのは教室ではなく中庭だった。

桜の木の下にはえりがいた。

「えりさん」

麻友は木の下のえりに声をかける。

「やっと私の姫が来てくれた。待ちくたびれてしまったよ。」

これも芝居だろう。

「すみません。相手役のわたくしがいないと稽古になりませんものね。」 

麻友はどこか寂しげに答える。

「ああ、ひろいんのいない稽古場なんてこりごりだよ。それに君がいないと寂しかった。」

「えりさん、そんな芝居結構です。」

そう言って麻友が去ろうとした。

「待って!!」

えりが呼び止める。

「麻友ちゃん、僕に何か気に障るようなことしたか?もし何かしたなら謝る。」

「わたくし、聞いてしまいましたの。」

麻友は先週の楽屋での出来事を話す。えりが下級生からの「桜の簪の誓い」を断ってるのを聞いてしまったのを。

「えりさんは誰とも親しくなりたいなんて思ってないんですね。」

「麻友ちゃんそれは違うよ。」

「違うって?」 

「私だって自分を慕ってくれる相手はほしいよ。でもそこに形式ばった儀式なんて必要ないと思うんだよね。それにこの物語だって結末読んだだから分かるだろう?」 

えりは麻友に芝居の台本を手渡す。 

琴春と奏は一度は別れるが奏は再び官僚の地位を得て琴春を迎えに戻ってくるのだ。しかしそれは雪の降る季節にだ。

「2人にとっても桜は単なるきっかけに過ぎなかったってことさ。」

「でしたら、これ受け取ってもらえますか?」

麻友はえり宛に書いた恋文を渡す。

「麻友ちゃんが僕のために書いてくれたなら喜んで受けとるよ。君は僕の大事な姫だから。」

えりは手紙を受け取ると麻友の唇を奪う。




 大正11年 

「それで舞台は大成功。主演の二人がエスだなんて知られたときはもう学校中が興奮の嵐だったわ。」 

篠山の話に耳を傾けるゆき。しかしゆきは表情1つ変えない。 

えりが女の子に人気があるのは今に始まったことではないのだ。 

「それでえりちゃんと麻友さんはどうなさったのですか?」  

2人はえりが卒業後次第に疎遠になっていった。

麻友は卒業後宮家の長男と結婚。今となってはお互い過去の人なのだ。 


「ごめん下さい。」

 同時刻えりの新しい事務所に来客があった。美しい着物姿の貴婦人の姿が。

スピンオフはこれで終わりです。また次回から連鎖スタートします。

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