水色のドレスの貴婦人
淡い水色のドレスの貴婦人に連れられももかは庭園へと向かう。
「あの、どちらへ行かれるのですか?」
「中庭ですわ。このホテルの庭は薔薇の庭園で夜は月灯りに照らされそれは幻想的なのですのよ。」
清楚な淡い水色に白い花模様の上品な貴婦人。
きっとももかの母親もこんな人なのだろう。
2人はテラスに腰かける。
「貴女はどちらの令嬢?」
「あの、私は。」
ももかは返答に戸惑った。自分は今まで孤児として育ってきた。それに母親は貴族だがまだ見つかってはいない。
「私、本当のお母様を探しに来たんです。」
「本当のお母様?」
ももかは全て打ち明けた。育ての母が事故死して孤児になったが本当の母が華族であること、今着てるドレスと桃の花の髪飾りは母が自分に残してくれたもの、そしてこのドレスで舞踏会に出席すれば本当の母が気づいてくれると思ったこと。
もしかしたら何か母の手掛かりが掴めるかもしれないと思ったのだ。
「やっぱり貴女が私の娘なのね。ももか。」
ももか、初対面なのに自分の名前を知っていた。やはり彼女が自分の母親で間違いないのだろうか。
「お母様。」
二人は手を握り合い再開を喜び合う。
「そうだ、お母様。」
ももかは母に手紙を見せようと思った。しかドレスの胸元からは手紙がなくなっている。ダンスの途中どこかで落としたのだろうか?
「どうなさったの?ももか」
「お母様が私に書いてくれた手紙読んでもらおうと思って。」
「まあ、嬉しいわ。でも今はこうして会えたのだから良いじゃかいかしら。」
その通りだ。今は再会できたことを喜ぼう。
「ももかちゃん。」
えりが迎えに来た。
「えり様。」
「どうしたんだそんなに嬉しそうにして。」
「ご紹介します。私の母です。」
えりはももかの母に会釈する。
「良かった。ももかちゃん。」
えりはももかを抱きしめる。
翌日ももかは寄宿舎に退舎届を提出した。これからは母と暮らすのだ。
ももかはえりの事務所を訪れる。いつもの袴ではなくピンクの丸襟ブラウスに黒いフリルのジャンパースカートという洋装で。
「すっかり見違えたよ。君もこれで華族のお嬢様だ。」
ももかは新しい家族と共に天津のフランス疎開に移り住むことになった。父が大陸でフランス人と新しい事業を始めると聞いた。
「それで今お姉様とフランス語を特訓しているの。」
「そうか、幸せになるんだよ。」
「ねえ、ももかちゃん、お父様はフランスでどんなお仕事をされるの?」
「確かホテルを経営すると。私にも手伝ってほしいと。」
「そう。良かったね。」
ももかは車を待たせてると言って挨拶を済ませると去って行った。一緒にいた時間は短いが別れはさみしい。
しかしえりが哀愁に浸ってる間、ゆきは深刻そうな顔をしていた。
一方ももかが車に乗り込むと両親が待っていてくれた。
「ももか挨拶はできた?」
「はい、お母様。」
「あなた、用は済んだから戻りましょう。」
助手席に座っている父に声をかける。
「そうだな。蓉子。」
ももかは母の名前を聞き悪寒を覚えた。




