貴族の世界
ももかはえりに手を取られ舞踏会の会場である広間へとやって来た。
「ようこそいらっしゃいました。」
ドア係のボーイが扉を開けてくれる。
(素晴らしいまるで絵本のような世界だわ。)
ももかの目の前に広がるのは見たこともないきらびやかな世界だった。
天井にはシャンデリア、初めてみるお菓子やワイン、ドレス姿の貴婦人や令嬢達。オーケストラが奏でる美しい音色。
(お姉様はきっとウィーンでこんな世界を毎日のように味わっていたのね。羨ましいわ。)
そう思ってももかはまりに目をやる。
男性と話している。兄の友人だろうか。
「ももか」
まりに呼ばれ傍へ行く。
「こちら、ご紹介致しますわ。わたくしの可愛い妹ももかですわ。」
目の前にいる見知らぬ男性を前にして戸惑うももか。
「あの、お姉様。」
「わたくしの婚約者の麻実さん。」
まりには婚約者がいたのだ。
「香咲ももかと申します。お目にかかれて光栄ですわ。」
ももかはまりのお屋敷でレッスンした通りドレスを摘まんでお辞儀をする。
「お嬢さんこちらこそお会いできて嬉しいです。」
麻実はももかの手をとり甲に口づける。
顔を赤く染めるももか。手の甲といえども婚約者のいる前で他の女性に口づけというのはももかには信じられなかった。
「ちょっと麻実さん、ももか困っているわ。」
「これは失礼。」
麻実はももかの手を離す。
「あの、お姉様。」
「ごめんなさい。驚かせてしまったわね。西洋では上流階級の方々はあのようにして挨拶を交わすのよ。」
「そうだったのですね。」
「でも今から慣れておいた方がいいわ。だって貴女もいずれはこちら側で生きていくのですもの。」
そうである。ももかは貴族である自分の母を探すためにこの舞踏会に出席したのだから。
その時オーケストラの穏やかな演奏が激しくなる。紳士淑女達は手をとりホールへ出ると踊り出す。
「ダンスの時間だわ。」
まりは麻実と共に踊り出す。
「ももかちゃん」
えりがやってきた。
「僕と踊ってくれますか?」
「はい」
ももかもえりの手をとり踊り出す。
きらびやかな広間、オーケストラが奏でる音楽、華やかなドレスに素敵な王子様とダンス。貴族の世界はなんて華やかなのだろう。
母親が見つかればこんなこと毎日のように味わえると思うと胸が弾んだ。
次のダンスはえりは別の女性に誘われ踊っていた。ももかは壁の花になっていた。
「可愛らしいお嬢さんね。」
隣にいた貴婦人が声をかけてきた。淡い水色の白い花模様のドレスの貴婦人が。
「可愛らしい方、宜しければわたくしのお話相手になってくださるかしら?」
「はい。」
ももかは貴婦人に連れられ広間を後にする。




