ももかの初恋
「お嬢様方、えり様をお連れ致しました。」
女中がえりを連れてやってきた。
えりは黒のタキシードで現れた。
「まりお嬢様、いかがてしょうか?」
「上出来ですわ。ねえ、ももか、ももか?」
ももかは何も言わず顔を真っ赤にしつタキシード姿のえり一点を見つめている。
「ももか、どうなさったの?」
「あっごめんなさいお姉様。私えりさんに会ったとか胸が」
「ちょっとももか」
まりはももかの耳元で囁く。
「まさかえりさんに恋でもしてしまったの?」
ももかは頷く。
「駄目よ。えりさんにはゆきさんがいるのだから。」
そんなことは分かっている。だけどえりの姿を見てからももかは胸の鼓動が抑えられない。それどころかどんどん速くなっていく。
「大丈夫か?ももかちゃん。」
「はい。」
えりに尋ねられ返答する声も裏返ってしまう。
「今日は宜しくね。僕のプリンセス。」
そう言ってえりはももかの手を取り甲に口付ける。
ももかは会場に向かう馬車の中ずっと胸の鼓動が鳴りやまずにいた。いや、さっきよりも大きくなっている。えりと二人きりなのだから。
会場である帝国ホテルに向かう馬車は2台。もう一台にはまりが兄と乗っている。父が勤める音大で学んでいる兄がまりのエスコート役を務めてるのだ。
馬車が止まると扉が開き御者が顔を出す。
「えり様、ももか様到着しました。」
「さあ、行こうか。」
えりはももかに手を差し出す。その手を取るももか。
えりに支えられながら馬車を降りる。
(えり様)
えりの手が触れたときももかの心臓の鼓動は最高潮に達していた。その時
「きゃっ!!」
ももかは足を踏み外してしまう。
「ももかちゃん」
えりがももかを抱き止める。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます。」
えりはももかをのドレスの汚れを払ってくれた。見目麗しいだけでなく優しくて勇敢なえり。ももかは自分自身が怖いくらいえりに惹かれていく。
後ろの馬車からはまりが兄に手を取られながら降りてくる。
ももかはえりの腕を取りホテル内へと入る。ホテルには日本人だけでなく西洋から来た宿泊客もいる。
元々このホテルは明治時代西洋諸国の要人達をお出迎えするために建てられたホテルである。
ももかは辺りを見渡す。
「どうしたんだい?ももかちゃん?初めて見るものばかりで驚いてるのかい?」
それもある。しかしももかには別の理由もあった。
「私のお母様この場場所に来てるかなって思いまして。」
「そうか。今日の君が来ているのは母の形見のドレスだろう。もしこの場所に来ていれば向こうも気付くだろう。」




