40話・リズは優しすぎる
「ねぇ、誰か──。降りられないの。助けてぇっ」
木の上からパメラ王女が助けを求めていた。子供たちと木登りをしていた王女は木の天辺まで登りつめて、下りられないと救いを求めていた。おかしな話だ。叔母上から聞く限りでは、彼女は木登りや高いところに上るのが大好きで、一旦登るとなかなか降りてこないので叔母上や側妃らをハラハラさせているらしいのに。
一緒に遊んでいた事情を知らない子供を心配させてどうする? 馬鹿馬鹿しい。何を企んでいるのやら? ああいう奴は適当にあしらっておくのに限る。
「放っておけ。姫さんは一人で登ったんだ。降りることも出来るだろう」
王女は先ほどから「カエルを見た」「蛇を見た」と、言ってはキャーキャー騒いで、カミーレや俺に抱きついてきた。それが喜色悪いのなんの。
俺にはリズがいるのだ。あまりベタベタ触れて欲しくないんだが。
まあ、しばらく放っておけば一人で降りてくるだろう。そう思うのにカミーレは半分とはいえ、血を分けた姉弟の仲のせいか優しく語り掛けていた。あんな姉を持つと苦労するよなぁ。
「姉上。飛び降りて。僕が受け止めるから」
「嫌よ。カミーレ。怖い~」
「大丈夫。必ず受け止めるよ。信じて」
「やだやだ。そんなの無理。お願い、助けて……アーサー」
「俺では無理だ。近付けば枝が折れて下手すれば二人で真っ逆さまだ。ごめん被る」
なんで俺に助けを求める? せっかくカミーレが助けるって言ってるのに。面倒な。
「お願いよぉ。助けてぇ~」
王女は弱々しく見せている。本当は降りるのなんか楽勝だろう? 軽蔑した目を向ければリズがお人よしにも声をあげた。
「じゃあ、わたしが行く」
「えっ。リズ、危ないよ」
「止せ。お前が行く必要はない」
リズは優しすぎる。アイツはおまえに助けられるようなヤツじゃない。何か企んでいるような女だ。カミーレと二人で止めようとしたのにリズは横に首を振った。




