39話・俺の子のようなものですが何か?
「おまえら着いて来たのか? 今日は駄目だって言ったろう」
「「「「「アーサーっ」」」」」
けん制しておいた方がいいかと近寄っていくと、五つ子達が絶妙なタイミングで群がってきた。腕から剥がしてもくっ付いてくる、粘着質の問題児王女をねめつける。
「アーサー。この人誰なの?」
「なんでアーサーにくっついてるの?」
「アーサーから離れて。ずーずーしい」
「香水臭いわ。お風呂入ってないのかしら?」
「やだ。不潔~」
突然五つ子達からの先制パンチを受けて、たじたじとなった王女はようやく腕を外してくれた。それでも五つ子達相手に負けじと睨みつける。
「あなた達こそ誰なの? ベクトル伯爵令嬢に似ているみたいだけど……?」
その言葉に、五つ子達はにんまりと笑った。これは相手を敵と認証した時に見せる黒い笑みだ。何か企んでるのは確かだ。何を考えてる? おまえ達。
怪しく思っていると、十本の腕が左右から伸びてきた。まさかまたか。袖、引っ張るなよ。また外れるわ。
「「「「「パパっ」」」」」
ぎょっとした俺に、こいつらが呼びかけてきたのは普段から呼んでいる言葉だった。つい、にんまりと口角が上がってしまった。こいつらの事は赤ちゃんの頃から見てきている。俺の気持ちは父親のようなものだ。
父性愛ってのが芽生えているのかも知れない。大きくなっても俺の中のこいつらは二歳児から止まっているような気がする。
初めて「ぱぱ」と呼びかけてくれた時の嬉しさがこみ上げてきて────ああ、だめだ。もう泣ける。
「アーサー、あなた子供がいたの? ベクトル嬢とはまだ正式に婚姻していないわよね?」
この問題児は俺がリズと許婚同士であることを知っていたようだ。それなのに纏わりついてきて厄介なことこの上ない。このまま誤解させておこうと思ったのに、アイツがご丁寧にもばらしてしまった。
「姉上、この子達はリズの妹たちだよ。アーサーの子供じゃない」
「まあ、そうだったの? 可愛い子たちねぇ」
不機嫌そうになっていたパメラ王女は機嫌を直した。俺をしつこいぐらいに見つめて来たので視線から逃れる為にも、王女殿下が持ち込んだカナッペを、再び運び出すことにした。




