103話・ラメル殿下の恋のお相手
「さあ、姉上。俺と一緒に帰りましょう」
「ラメルさま。宮殿の方に顔を出さないと……」
「そんなの。姉上の方が先決だ。それに見合いなんて乗り気にならない。俺には心に決めた人がいるからな」
それまで影のように大人しく付き従っていたジャンが口を挟むが、ラメルは切って捨てた。もしかしてカミーレの姉妹の誰かとお見合い? と、アーサーを窺うと、それらしい話を聞いたな。と、頷く。
「心に決めた女性? ラメルもそんな年になったのだな?」
ロリアンが感慨深く言うと、気を良くしたらしいラメルがこの者です。と、ある絵姿を胸元から取り出して見せた。
「この女性なんですよ。我が国に新しく入ってきた商人のお店で張り出していたポスターの女性です。当主にこの者に会わせて欲しいと頼むとなぜか渋られて……」
「そりぁそうですよ。その女性はきっと想像画で、実際には存在しないに違いありませんから」
「そんなことない。このような目の輝きをした女性が存在してないはずがない。当主だって存在はしていると言っていたじゃないか」
ロリアンが絵に魅入っている間に、ラメルとジャンが言い合いをしていた。ロリアンが「会うのは無理だろうなぁ」と、いってその絵姿をわたしとアーサーに差し出してきた。
「見ても良いの?」
「ああ。この女性はきみらのよく知る人物じゃないかな?」
「え────?」
ロリアンの発言を聞いてラメルやジャンがこちらを期待を込めた目で見てくる。幾ら捜しても行き当たらなかったらしく困っているらしい。そのような女性に心当たりなんて──と、思いながら見た絵には、確かにわたしとアーサーの良く知る者が描かれていた。
「カミーレ?!」
女装したカミーレの絵姿だ。ナナホシ商会の報告塔となっていたはずだからこのポスターもその一つのようだ。それをどこかで手に入れたらしいラメル殿下は、そのポスターをわたし達の手から毟り取った。
「勝手に見るな」
勝手に見るなってあなたのお姉さんから許可もらったのだけど? 面白くない気分になるとロリアンが済まないと謝ってくれた。
「ラメル。そんな態度はいけないと思うぞ。このふたりはこのポスターの女性に心当たりがあるのに」
「本当か? おまえらこの女性を知っているのか?」
ラメル殿下がロリアンからわたし達がカミーレの知り合いと知ると目の色を変えた。
「教えてくれ。この人は今、どこにいる?」
わたしはアーサーと顔を見合わせた。カミーレは今、謹慎を申し付けられている。今回のことで王太子の資格は取り消され、聡明で知られる側室の産んだ兄である第一王子が王太子となることが決まったとアーサーから聞かされてはいた。
カミーレはどうなるか。今後はまだ決まっていない。陛下が悩まれているようだ。溺愛している王妃が産んだ唯一の王子であるだけに、カミーレが生まれて相当、喜んだとも聞く。王妃の子が次代の王になるのは決まっているようなものだったのに、カミーレの行動がそれを潰してしまった。陛下の嘆きは相当なものらしい。
ラメル殿下は必死に頼み込んできた。
「頼む。この通りだ。一度だけで良い。会わせてくれ」
「そうは言われてもな……」
「ねぇ、アーサー。アザリアさまにご相談してみたらどう?」
「気は進まないけどな」
アーサーはため息付きつつ、アザリアさまと連絡を取る為に伝書鳩の用意を始めた。すぐに返事は来た。カミーレとの面会を許可してくれるらしい。




